家出少女の来訪 4
ミレーユの母親が俺との共演を拒否する理由を知り、俺たちはミレーユの自宅に向かうこととなった。
ミレーユがお手洗いに行っている時、リンスレットから話しかけられる。
「シロ様。お嬢様のために協力していただき、ありがとうございます」
そう言って頭を下げる。
(こういうところがリンスレットさんの良いところだよな)
そんなことを思いつつ、笑顔で返答する。
「これくらい気にしなくていいよ。俺もミレーユと一緒に仕事をしたかったから」
「なるほど。シロ様はお嬢様と合法的にイチャイチャしたかったんですね」
「そうは言ってねぇ」
(前言撤回。やっぱりこのメイドはダメだ)
本気でそう思った。
高級車に乗り込み、俺たちはミレーユの自宅を目指す。
「そういえば、過去に2回、ミレーユの家に行ったことがあるけど、毎回お母さんに会わないようにって言われたのは――」
「はい。見つかればシロ様を追い出すと思ったからです」
「そうなるよなぁ」
先程の話を聞いたら納得してしまう。
その後は他愛のない話をしながら車に揺られると、ミレーユの自宅である大豪邸にたどり着く。
そして車から降りた俺たちは玄関前で立ち止まる。
(よし!ミレーユのためにも頑張るぞ!)
俺が気合を入れていると、手を震わせているミレーユが見えた。
「大丈夫か?」
「は、はい。その、緊張しちゃって。お母様に逆らうことが初めてだったので」
ミレーユは緊張した面持ちで体を震わせている。
その様子を見た俺は恥ずかしながらも、とある提案をする。
「そ、その――手でも繋ぐか?」
俺は少し頬を染め、ミレーユから目を逸らしながら提案する。
「…………」
しかし一向に返事が返ってこない。
そのため恐る恐るミレーユを見てみると、“ポカ〜ン”としていた。
「あっ!い、今のは忘れてくれ!俺なんかと手を繋いでも不安な気持ちを取り除くことなんかできないよな!」
出しゃばったことをした俺は慌てて取り消そうとするが…
「ぷっ!あははは!」
と、ミレーユが笑い出す。
「あっ!すみません、笑ってしまって。まさかシロ様からそのようなことを言われるとは思ってなかったので。ウチを心配してくれてたんですよね?」
「あ、あぁ。すごく緊張してるみたいだったから」
俺は自分の提案が恥ずかしくなり、顔を逸らしながら応える。
「シロ様のおかげでウチ、元気が出ました!ありがとうございます!」
「そ、そうか。なら良かったよ」
(ふぅ、俺のキモい発言でミレーユに元気が出たなら良かったよ。キモいと思われた甲斐があったぜ)
そんなことを心の中で呟く。
「やっぱり、シロ様はカッコいいです」
「ん?何か言った――っ!」
上手く聞こえなかった俺はミレーユに聞き返そうとするが、なぜか俺の腕にミレーユが抱きついてきたため、発言が途中で切れる。
「ど、どうした!?」
「いえ!シロ様が手を繋いで良いと言ったので、繋いだだけです!」
「これは手を繋ぐじゃなくて、抱きつくって言うんだ!」
「そんなこと気にしなくていいんですよ!」
「いや俺が気にするから!てか、こんなところをお母さんに見られたらどうするつもりなんだよ!」
「その時はピンチですね!」
「元気に応えてる場合か!なら今すぐ離れ――」
などと会話をしている時、玄関の扉が開く。
「ちょっとうるさいんだけど。玄関の前で何をして――っ!」
最悪のタイミングでミレーユに似た綺麗な女性が家の中から現れる。
そして俺たちと目が合う。
(oh…)
俺は運命を呪った。




