家出少女の来訪 3
その後、リンスレットを呼ぶ。
俺がミレーユをお姫様抱っこしているところを見て、リンスレットが指示を出す。
「シロ様。昨日、お嬢様が寝た布団に運んでください」
とのことで、現在、外出中の桜の部屋に、リンスレットと入る。
そしてミレーユを布団の上に寝かせる。
「ここからどうしようか?しばらくすれば起きるかな?」
「いえ、おそらくすぐには起きないと思います」
「そうか。なら――」
「エッチなことやり放題ですね」
「そんなこと微塵も思ってないわ!」
「あ、以前預かってたエッチなゴムを返します。確かポケットに――」
「何故このタイミングで!?しかも、預けた覚えなんかないし!」
そう言うが俺の言葉をガン無視してポケットを漁り、ゴムを取り出す。
「はい。私が温めたゴムです。使う時は私の温もりを感じつつ使ってください」
「なんで今、持ってるんだよ!」
リンスレットにツッコみを入れるが盛大にスルーされる。
「さて、エッチな場所と道具が揃い、襲うことのできる雰囲気ができあがりました」
「いや、全然出来てないから。ここ義妹の部屋だし、気絶している人、襲えないから」
「私が許可します」
「お前はメイドだろうが!許可したらダメだろ!」
「私は賢いので学びました。既成事実を作った方がはやいということを」
「なに言ってんの!?」
相変わらず、ミレーユのメイドなのに、ミレーユを困らせることしかしない。
「と、とにかく!そういうことをするには段階というものがあるの!」
「はぁ。私が良いって言ってるのに。さすが童貞です。そのヘタレ具合に私、感服いたしました」
「バカにしてんのか!」
(疲れる、この人と話すといつも疲れるぞ)
心の中でそんなことを呟く。
すると「うぅ……」っと、ミレーユが目を開ける。
「お、気分はどうだ?」
目を覚ましたミレーユの顔を覗き込むように近づく。
「ふぁっ!そ、そそそうですね!元気です!」
「そうか?顔が赤いけど、熱でも――」
「だ、大丈夫です!こ、これはカッコいいシロ様の顔が目の前にあるからです!熱があるわけではありません!」
「ご、ごめん!」
俺は慌ててミレーユから離れる。
その時「そこで押し倒さず、距離をとるからヘタレなんです」との呟きが背後から聞こえる。
「こほんっ!こ、今回、お母様が断った理由は検討がつきます」
ミレーユが起き上がり、布団の上で姿勢を正して話し始める。
「お母様は若い頃、アメリカで大人気女優として活躍してたんです」
(へぇ、ミレーユのお母さんってすごい人だったんだ。ミレーユが女優として人気なのは、お母さんの血を引いてるからかな?)
そんなことを思いながら話を聞くと、ミレーユの顔が今よりも暗くなる。
「ある日、お母様が日本で仕事をしました。その時、仲が良くなった日本人男性と日本を案内すると言われ、少しお出かけをしました。その時、パパラッチに見つかり、そのことがアメリカで広まりました」
「なるほど。でも、それくらいなら問題ないと思うが」
「普通なら問題ありません。ですが、お母様にとっては大きな問題になりました。何故ならお母様にはアメリカに恋人がいたんです。しかも全米のみんなが知る仲良しカップルとして周知されてました」
「なっ!これじゃあ――」
「はい。お母様にその意図がなくても、全米の人たちはお母様が浮気したと思いました」
俺はミレーユにかける言葉を失う。
「その日から、お母様の人気は地に落ちました。その後、アメリカにいた恋人とは別れ、アメリカでは住みにくくなり、日本に逃げてきました」
「そんなことがあったのか」
「はい。なので男性との距離が近くなる可能性のある仕事は、お母様が断ってきました。あ、共演とかは大丈夫です」
「じゃあ今回の仕事は俺とミレーユの距離が縮まることを危惧して断ったと」
「おそらくですが」
(だから「私と同じようになってほしくないから」と言って断ったんだな)
「ウチには現在、恋人はいませんので、シロ様と、その……熱愛――みたいなことが広まっても問題ありません。ですがお母様はそういったことが発生する可能性のある仕事から、ウチを遠ざけているようです」
「その気持ちもわからなくはないが、やり過ぎだと思うぞ」
「ウチもそう思います。今までは我慢してましたが、シロ様と写真集を撮れないのは我慢できませんでした。なので図々しいとは思いますが、シロ様にお母様を説得するお手伝をしていただきたいです。ダメでしょうか?」
ミレーユが涙目となり、断られないか不安そうにお願いしてくる。
『女の子が泣いてたのよ。ミレーユさんを慰めろとは言わないけど、できる限りサポートしてあげてね』
これは昨日、母さんが言った言葉だ。
その言葉は俺の胸に刻まれており、男としてミレーユのお願いを叶えてあげたいと思った。
(俺が手伝うことで叶えられるかは分からないが、できるだけ頑張ろう)
そう思い、ミレーユを見る。
「さっきも言ったけど、俺はミレーユと一緒に仕事がしたい。だから俺で良ければいくらでも力になるよ」
俺は胸を張って応える。
するとパーっと笑顔になって、俺に抱きついてくる。
「ちょっ!」
俺は倒れないようにミレーユを抱きしめる。
「シロ様!ありがとうございます!」
ミレーユが俺の顔を覗き込むように、笑顔で伝えてくる。
(ホント、ミレーユは笑顔の似合う女の子だよ。だから説得を頑張らないとな)
俺はミレーユの頭に手を置きながら、そんなことを思った。




