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単独写真集の撮影

 香織に癒してもらった数日後、俺は自分だけの写真集を発売するため、とある撮影場所に来ていた。


「社長、お疲れ様です」

「お疲れ。さっそくだが撮影に入る。髪も切ったようだから、コスプレする必要もないな」

「そうですね。髪を切る前は帽子を被る衣装を着る必要がありましたから」

「あぁ。その必要がなくなったからコチラもコスプレ衣装は準備していない。その変わり、私服を用意している。正確にはウチの女性社員が」

「ありがとうございます」


 礼を言って社長との話を終えると、神野さんから衣装担当やメイク担当、カメラマン等々、今日のスタッフを紹介される。


「あれ?今日のスタッフは女性の方ばかりですね」

「わ、わー、ホントですね。こんな偶然ってあるんだー」

「棒読みすぎて怪すぎです」

「うっ、たっ、たまたまです!本来、今日休みだった女性社員が、出勤するはずの男性社員を脅迫して無理やり勤務を交代させたとかありませんから!」

「とりあえず、何かがあったのは理解した」


(なぜこんなことになったかは知らんが、男性社員よ。もっと強く生きた方がいいぞ)


 俺は心の中で呟いた。




「よし、撮影の準備はできた。日向くんの準備ができ次第始めるぞ」


 社長の声かけで俺は衣装担当の方の指示に従う。

 そして衣装担当の方から手渡されたシンプルなTシャツとジャケット、ジーパンを着て撮影現場に向かう。


「じゃあ、日向くんは、あの椅子に座って」


 俺は社長の指示通りに動き、カメラマンの指示を待つ。


「シロ様!まずはカメラ目線で笑顔をください!」


 とのことで笑顔を向ける。


「はうっ!」


 すると突然、カメラマンが後ろに倒れる。


「だ、大丈夫ですか!?」


 緊急事態と思い、急いで近づくと、側にいた社長が倒れたカメラマンの状態を確認していた。


「くっ!ついに1人目の犠牲者が出たかっ!」

「ついにって始まったばかりですよ!?」


 1シャッターで1人目の犠牲者が出た。


「だが、安心しろ。こんなこともあろうかと、カメラマンができるスタッフはたくさん用意している。だから、はやくさっきの位置に戻れ」

「わ、わかりました」


 気を取り直して、撮影を再開する。


 別のカメラマンに代わり、俺は指示通りに動く。


「はい!ここで笑顔ください!」


 とのことで再び笑顔を向ける。


「きゅぅぅぅ〜」


 そして、またしても倒れる。


「くっ!はやくも2人目の犠牲者が出てしまった!」

「はやすぎだろ!」


 2シャッターで2人気絶してしまった。


(桜に聞いたら女の子が気絶する原因は俺の至近距離からの笑顔って言われたし、今回もそのパターンなんだろう。でも、笑顔くださいって言われて拒否するわけにも――)


「まぁ良い、日向くんの笑顔を見て死ぬなら本望だろう。幸せそうな顔してるし。さて撮影の再開だ。次にカメラマンしたい人ー?」

「勝手に殺さないで下さい!」


 そんな感じで撮影が再開した。




 新しいカメラマンが来る。


「シロ様!私はシロ様の写真を数々見てきました!場数を踏んできた私は倒れたりしませんので、安心してください!」

「よ、よろしくお願いします」


 俺は先程の位置に戻り、再び指示を待つ。


「笑顔くださーい!」


 とのことで、注文通り笑顔を向ける。


「ぐふっ!」


 すると突然、鼻を押さえだすカメラマン。

 しかし先ほど言った通り、倒れることはなく、見事に耐えてみせた。


「ふっ。私は倒れたりしませんよ」


 鼻血をドバドバ出しながらドヤ顔される。

 そのドヤ顔に応えるように、周りから拍手喝采が起こる。


「拍手なんかせずにティッシュ渡せよ。床が血の海になるぞ」


 そんな周囲とは対照的に未だに止まらない鼻血を心配する俺。

 しばらく称賛の嵐が沸き起こっていると、突然カメラマンがフラフラし始める。


「あ、ヤベ……血が足りなくなって……」


 そんな言葉を残して倒れる。


 その様子を見てみんなが慌てて駆け寄る中…


「やべぇ、こんなペースで人が死ぬと撮影が終わらねぇ」


 ようやく社長がこの状況のヤバさを理解した。




 その後、カメラマンがコロコロと代わりつつ撮影を行う。

 そして現在。

 撮影現場に10人以上の死体が転がっていた。


「あの人たちは大丈夫なのでしょうか?」


 俺は心配になり、神野さんに聞いてみる。


「そうですね。司法解剖の結果、死因は日向さんの笑顔を見てのショック死や鼻血を流し過ぎたことによる貧血。その他、今までの撮影で蓄積されたダメージとなっておりますので大丈夫かと思います」

「司法解剖とかしてないだろ」


 実際、救急車を呼ぶ様子はないので大丈夫なのだろう。

 そんな感じで、撮影が続いた。




 そして数時間後。


「シロ様……カッコいい……」

「はぅ〜幸せ…」

「私、このまま死んでいい……かも」


 俺と神野さん、社長の3人だけが生き残った。


「ホラー映画かっ!」


 誰かに向かって盛大にツッコむ。


「あちゃー、これは続行不可能ですね」

「マジかよ。私、日向くんの力を見誤ってたわ。ごめんな、日向くん」

「いや、謝られても。それより社長と神野さんは大丈夫なんですね」

「私をみくびってもらっては困る。これくらい問題ない」

「私は日向さんと関わる回数が多かったので、徐々に慣れたのかと思います!」

「な、なるほど」

「とりあえず、こんなことになってしまったので、今日の撮影は終了だ。神野に家まで送ってもらえ。お疲れ様」

「あ、はい。お疲れ様でした」


 とのことで撮影は全て完了することなく帰宅することとなった。


 後日、社長と神野さん、男性スタッフで写真集の撮影を行った。

 倒れる人がいない、平和な撮影でした。

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