香織のお礼 3
〜涼宮香織視点〜
私の膝枕でシロくんが気持ちよさそうに眠っている。
(いつもはカッコいいのに、寝顔は無防備でかわいいよね)
私はシロくんの頭を撫でながら思う。
他のこともする予定だったけど、布団が敷かれていることや、ナース服の件で時間を使ってしまっため、他のことはできそうにない。
少し残念な気持ちはあるが、私の太ももで寝ているシロくんを見て嬉しい気持ちも抱く。
しばらくシロくんの顔をじっと見ていると、脳裏にシロくんのおデコにキスしたことを思い出す。
(っ!へ、変なことを思い出してしまった!)
私は頭を振り忘れようとするが、前回キスをした状況と類似しており、その時の様子を鮮明に思い出してしまったため忘れることができなくなる。
しかもそれだけではなく、もう一度キスをしたくなった。
(って!いやいや、シロくんの知らない間に2回もキスをするのはアウトだよ!)
とは思うが、“ちゅっ”と何故か身体が勝手に動き、シロくんのおデコにキスをしてしまう。
(はわわわわっ!な、なぜかシロくんのおデコに吸い寄せられてしまった!)
私は即座にシロくんの顔から離れる。
(こ、これは仕方のないこと!好きな人が無防備になってたらキスの一つや二つしたくなるのは当然のこと!つまり、私に無防備な寝顔をさらすシロくんが悪い!)
そして心の中でシロくんのせいにする。
全面的に私が悪いのに。
(こ、これ以上はダメだよ!絶対、ダメだからね!私!)
その後、シロくんが起きるまで3度目のキスを我慢する時間が続いた。
私が我慢の時間を過ごしているとシロくんの目が開く。
「ごめん!寝過ぎてしまった!」
そして飛び跳ねるように起き上がり、すぐに謝る。
「き、気にしなくていいよ!今日はシロくんを癒す日だから!」
(反応からして私がキスしたことに気づいてなさそう。まぁ、シロくんなら気づいても変な勘違いをしそうだけど)
気づかれていないことに心の中で安堵する。
「そ、そうか。なら、ありがとうって言わないといけないな」
「そうそう!それでいいんだよ!」
「でも、俺が寝過ぎたからもうこんな時間に」
「あっ」
シロくんの言葉で初めて辺りが暗くなっていることに気がつく。
「結局、耳かきしか出来なかった
」
いろいろと準備をしていたため、その出番が無かったことに少しだけ残念な気持ちになる。
「ご、ごめん!俺が寝過ぎたせいで!だ、だから、俺にできることはなんでもするよ!」
「なんでも?」
私の目がキラン!と光る。
「あ、あぁ。今、できることなら」
そのせいでシロくんが身構えるが、私は言質を取った喜の方が強いので、シロくんの反応は気にしない。
(変なお願いをするつもりはないけど――あっ!それなら!)
「シロくんにお願いがあります!」
「お、おう」
「これから私のことを涼宮さんではなく香織って呼ぶこと!」
「………え?」
シロくんが首を傾げる。
「そんなお願いでいいのか?」
「うん!私ずっと思ってたんだ!私だけ名字で呼ばれてるのはおかしいことに!」
義妹や幼馴染のことを名前で呼ぶのは分かるが、ミクさんまでも名前で呼んでおり、私だけシロくんとの距離を遠く感じていた。
「べ、別に涼宮さんのことが嫌いってわけじゃなくて――」
「なら私のことを香織って呼んでもいいと思うよ!」
「……そ、そうだな」
そう呟いたシロくんが真剣な表情で私の方を見る。
「か、香織」
「〜〜〜っ!」
好きな人から名前を呼ばれたことがすごく嬉しく、心の中で悶える。
「こ、これでいいか?」
「う、うん!次からは私のこと香織って呼んでね!」
「あ、あぁ。善処するよ」
(これだけでも今日は満足だね!)
シロくんから今後も名前で呼ぶことをお願いし、私はニコニコしながら車に向かった。
翌日。
「ご機嫌だね、香織。昨日、シロ様とのデートが上手くいったってことかな?」
梨奈から話かけられる。
「うん!すごく楽しかったよ!」
「えっちぃことが?」
「ちっ、違うよ!そんなことしてないよ!」
布団を敷いた張本人へ全力で否定する。
「まぁ、2人がエッチなことをするとは思ってなかったけどね」
「じゃあ、何で布団なんか用意したのよ」
「万が一ってこともあるからね」
「はぁ、そんなことだろうと思ったよ」
私は梨奈の行動にため息をつく。
「で、昨日はどこまでいったの?前回シロ様のおデコにキスしてたから、昨日も――ってさすがにしてないか」
梨奈の言葉を聞き、私がシロくんのおデコにキスをしたことを思い出す。
そんな私を見た梨奈が案の定、突っ込んで来る。
「え?キスしたの?」
「ち、違っ――くわなくて!あ、あれは事故!事故だから!シロくんが悪いから!」
自分で墓穴を掘ってしまう。
「は〜い、あっちで詳しく聞こうね〜」
その後、梨奈に洗いざらい話をすることとなった。




