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アルブス  作者: シバザキアツシ
復活編

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35/36

魔王の血統

カイティアクの町に無事に船を持ってきたヴィア達は、傭兵団斧の鞘に引き渡した。

船を解析してもらうと、北の海を渡るには強度が足りないことが分かった。

改造船を造るには、丸三日掛かるらしい。



魔王城の出来事を、ルキウスの事をボカシながら、皆に話すアル。


「その変な空間に入った時、奇妙な魔獣がいたんだけど、アレなんだったんだろう」

「ソイツの特徴は?」

ラインハルトが興味を持った。

「気持ち悪いヤツ、人の顔だけど身体は獅子で、尾はサソリだった」

「マンティコアじゃねぇか!」

災害級とされるマンティコア、通常はパーティを組んで挑む。

攻守共に優秀な難敵である。

「んで、逃げて辿り着いたのが、魔王城ってか?」

「倒したよ、グーパンで」

「マジかよ…」

「まぁ、アルだもの」

「そうですね…アルですからね」

「なにそれ?」


辿り着いた魔王城で、出会ったのが魔王の血統であるルキウス=ザウリレウス。

マルクス=ザウリレウスの嫡男だ。

しかし、この話は皆には出来ない。

そう約束した。


「そこに何故がシンさんがいた」

シンの話なら問題ないとの判断。

「何故にそこに公爵が?」

「さぁ?何かの調査らしかったけど詳しくは教えてくれなかった」

「ふむ、守秘義務とかもありますからね、言えないこともあるでしょう」

他に話す情報を、アルは持ってなかった。


「暇になったし、魔王城行ってみない?」

突然のリイアの提案。

口止めをされてはいたが、既にルキウスは去っているだろうから、問題ないと思い口を挟まなかったアル。


意外とあっさり到着できた。

昼間に見ると巨大さに圧倒される。

禍々しい黒一色の城は、世界でもここくらいだ。


「これは圧巻ね」

「すげえな、真っ黒だよ」

リイアとラインハルトは素直な感想を言った。

アルは押し黙り、ジルは所用で町に残っている。


「なんか音がするな」

大扉を開け中に入ると違和感を覚える。

「奥の方ね」

「剣戟音…たぶんだけど」

魔王城、謁見の間の方向から戦闘音が聞こえる。

急いで行ってみると、戦っているのは老人と騎士。

しかし、騎士の動きは緩慢で次々と老人に倒されている。

「お爺さんに加勢しよう」

「する必要なさそうだけどな」

「いや、やな予感がする」

ラインハルトの予感は侮れない、悪い予感は良く当たる。


地響きが鳴り始めると、玉座を破壊しながら、下から骨の魔獣が現れた。

「嘘でしょ…」

「コイツは…」

骨だけではあるが、アルはコレに見覚えがあった。

「ドラゴンだ」

禍々しいオーラを放つ骨のドラゴン。

「ボーンドラゴン!」

アルはオリハルコンのダガーを抜き構える。

ラインハルトも二振りのダガーを構える。

「おい!じじい!そっちは任せた!大物はこっちで何とかする!」

「じ、じじい!?」

突然の乱入者の罵倒に、思いの外甲高い声で叫ぶ老人。


「そっちの騎士は死人ね」

司祭でもあるリイアが言うのだから、そうなのだろう。

「アンデットの騎士ってことか?」

「そうね」

「前見て、来るよ」

這い出たボーンドラゴンはアルを目標に定め、右前脚を振り下ろす。

地鳴りを上げアルを押しつぶそうとする。

「ほい!」

両腕を交差させて受け止める、足が床に食い込むが、アルにダメージはない。

「相変わらずの丈夫さね」

「ハルさん、攻撃攻撃」

「ハル?あれ、俺、ライさんでは!?」

「なんかハルさんの方が良い気がして、それより攻撃攻撃」

「お、おう!加速(アクセル)!」

気持ちを切り替え、ラインハルトが自身にバフを掛け、ボーンドラゴンの背後へ飛ぶ。

「天下無双!」

両手武器用の乱撃スキル。

小気味よく、骨と金属がぶつかり合う音が響く。

「硬え!」

手応えがなく不満を叫ぶラインハルト。

「続けて攻撃して!栄光!」

リイアは固有スキルを発動させ、パーティの底力を上げる。

「ほい!」

アルはボーンドラゴンの右前脚を上へ弾く。

体勢の崩れたボーンドラゴンの左後ろ脚を、リイアとラインハルトで叩く。

ユニーク職の戦女神(アスタルテ)へジョブチェンジしたリイアは、攻撃役もこなせる。

アルは一人で右後ろ脚を攻める。

「すごい斬れ味…」

オリハルコンのダガーは一振りで、ボーンドラゴンの脚を切断した。

再び攻撃に移ろうとしたボーンドラゴンは体勢を崩し両前脚で踏ん張る。

更に二人で攻撃した左後ろ足脚を破壊した。

完全に機動力を失ったボーンドラゴン。

勝負ありと思われたが、ボーンドラゴンの顎から瞬時に黒い衝撃波が放たれた。

「ヤバい!じじい!避けろ!!闇衝撃波(ダークブレス)だ!」

狙われたのはアル達ではなく老人の方だった。

一直線に飛んでいく。

「僕は老人じゃない!」

両腕を交差させた老人が光を放つ。

金属化(メタルボディ)!」

老人の身体は金色の硬い金属と化した。

ボーンドラゴンのブレスは老人ごと死人騎士を薙ぎ払った。

老人は無傷。

「今だ!」

アル、ラインハルト、リイアの波状攻撃でボーンドラゴンは完全に沈黙した。

「やったな、すげえじゃねぇか、じじい!」

「だから、僕はじじいじゃない!!」

金属化を解いた老人は、涙目で必死に訴える。

「お、おう…悪かったよ」

その必死さにラインハルトが引く。

「どう言う事なの?」

「ふむ、気になりますね」

アルとリイアが、興味津々に老人を見つめる。


老人は溜息を吐き、語りだした。

異世界召喚された男は、チート能力と引き換えに老人にされてしまったと言う。

女神の願いを叶えれば、元の世界に帰れるとらしい。

つまり、異世界召喚された勇者である。

その一環としての、死人騎士の討伐だったらしい。

女神の願いは全部で12あると言う。


「僕は先を急がなきゃならない」

「ちょい待ち!」

「なんだよ?もう…」


アルは老人にマルクス=ザウリレウス、元皇帝の魔王の事を聞いてみる。

異世界召喚された者なら、魔王の事を知っていると思ったからだ。

女神から説明されているかも知れない。


実際知っていた。

「魔王は元々人だよ」

「人間…?」


第三崩壊で疲弊した人々は、希望を失っていた。

人々に生きる為の、共通の目標を持たせる必要があった。

それを起こした悪は消えてしまったのだから。

皇帝は魔王となり、全世界共通の敵となり人々の生きる目標となった。

そして、自身を討たせる事でそれが希望になると。

語り終えた老勇者は、薄くなった頭を振る。

「おかしな話だよね?人の希望の為に一人の命が犠牲にならないといけないなんてさ」

他に方法がなかったのかと、瞳を潤ませる老勇者。

なる程、この人は本当に勇者なのだと、三人は理解した。

見た目と違い、清い心を持っている。

「どっちが魔王なんだか、本当に世界を壊したドクターと異王の事を知らないとは言え、悲しい話だよね」

目を伏せる老勇者、三人は何も言えなかった。

ハッピーエンドとは何なのか。

その答えが出ることはなかった。


「僕はもう行くよ…」

老勇者は何かの羽根を投げると、空に消えて行った。

「なにあのアイテム?」

「欲しい」

「便利そうだな」

老勇者の切ない話は、一瞬で謎のアイテムに上書きされたのだった。

何故、魔王城にアンデットが現れたのかは、この時は誰も分からなかった。

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