無理な重税とミカエスの索
第13話 無理な重税とミカエスの索
ミカエスが住むヒミン村は、貧しさはあったが比較的に穏やかに生活をしていた。
村の主な産業は、農業や牧畜であったが、貧乏故にあまり家畜の数は揃えられず、畑作業にその殆どの労力を費やした。
ミカエスの家では、父親の借金問題があってから、日雇い仕事を終えて酒場に寄らなくなった父親ロンデのお陰で、安定した生活にもどっていた。
しかし、ヒミン村に領主から使者がやって来て、村人を集めてから領主の言葉を告げた。
「国は今財政難に陥っているため、今年の税をさらに上げることになった。」
「お前はそれぞれ、収穫物や家畜、あるいは金で税を収めるようにいたせ。」
「もし決められた税が収められなかった場合は、強制労働や厳罰があるから気をつけるように!」
「以上だ!」
領主の使者は自分の仕事を終えると、さっさと馬に乗って帰って行った。
「おい、また重税だってよ!」
「どうしようか。」
「どうしようもないが、税を納めるしかないな。」
「しかしよ、ジャイアントボアが荒らして畑は不作だしな。」
「カシムさんが、賞金首のでっかいジャイアントボアを退治してくれて助かったがな。」
「しかし、まだまだジャイアントボアはいて、畑を荒らしているしな。」
「やれやれだ。」
「これからカシムさんの処へ行って、ジャイアントボアをもっと討伐してもらうように頼もう。」
「うんうん、それはいい考えだ。俺も一緒に行って頼むとしよう。」
「そうだな。皆でカシムさんにジャイアントボア討伐を頼もうか。」
「賛成!」
「皆で頼もう。」
しかし、狩人のカシムにとっては、厄介な存在のジャイアントボアを一人でやるのは骨が折れた。
賞金首のジャイアントボアはカシムが討伐した事にはなっていたが、実際はミカエスが倒したのだから無理もない。
「カシムさんだけが頼りだ!何とかジャイアントボアをまた討伐して下さい。」
「討伐したジャイアントボアには、1頭ごとにボーナスをつけますから、よろしくお願いします。」
「ん〜む。」
「まぁ、やるだけはやってみますが、あまり期待しないで下さいよ。」
「あ〜、でもカシムさんも重税の話を聞いたでしょ?だからジャイアントボアを討伐して税を収めなきゃならないでしょ?」
「そうですけどね。」
「まー、ジャイアントボア討伐を、できるだけやってみますよ。」
とりあえずカシムは了承した。
そしてカシムはミカエスの処へやって来て相談するのだった。
「なぁ、ミカエスよ。またジャイアントボアを倒してくれないか?」
「えっ?何故子供の俺に、大人のカシムさんが討伐依頼するんだ?」
「だって、この前倒したジャイアントボアはミカエスがやっただろう?」
「しかも、あっさり倒して、それに賞金首だったしな。」
「ん~~。」
ミカエスは頭を抱えた。
ミカエスは対策を考えた。
ジャイアントボアの問題と重税の問題は、俺の家の問題でもあるし、なんとかしないといけなかった。
俺のストレージにはジャイアントボアが1頭あるが、おそらくはもっと狩らないと、村作物を荒らす事件は治まらない。
俺が能力を使ってジャイアントボアを討伐しまくればよいが、今度は俺やカシムさんに負担が大きくなる。
そうだ!村全員で狩りすればよくないか?
作物だけでは重税は払えないなら、ジャイアントボアで納税すれば、一石二鳥だ。
「カシムさん。」
「ん?」
「村人全員で、ジャイアントボア討伐したらどうだろか?」
「村人全員でか?」
「うん。やれないかな?」
「そうだなー、う〜ん。」
カシムさんは頭の中で色々と考えていた。
「やってみないと分からないが、やる価値はあるな。」
「うんうん。」
「ただ、村人は農民で畑や家畜の世話は得意だが、狩りは慣れていない。」
「それを克服しないと、狩りは成功しないだろうよ。」
「う〜ん。」
「それも、まったくカシムさんの言う通りだ。」
「しかし、やり方をしっかり対策すれば、なんとかなるかもしれないな。」
「そうだね。」
「それじゃ、持ち帰って作戦プランを考えてくるよ。」
「分かった。期待してるよ。」
カシムは思った。
あのジャイアントボアを一人で倒したり、父親ロンデの借金問題を解決に導いたり、家賃問題を解決したりしていた、あのミカエスなら何とかできるかもしれない。
カシム本人もジャイアントボア討伐のプランを考えることにした。
◆
翌日、ミカエスはカシムの家にやって来て、ジャイアントボア討伐作戦のプランを話した。
「基本的にオリか落とし穴に嵌める作戦にする。そして戦闘よりも足が速い者か鍋釜で音をたてて、追い立てるのがよいと思った。」
「まーそうだな、しかしジャイアントボアは気性が荒いから、追い立てる方へ立ち向かうかもしれないな。」
「そうしたら、足の速い者が誘導するしかないかな。」
「ふむふむ。」
「それで罠のある場所へ誘導するのか?」
「そうそう。そこに岩を落としたり、槍とかでトドメをするんだ。」
「なるほどな。」
「カシムさんのプランは?」
「俺も基本的には罠だな。」
「畑周辺に罠を作り、引っかかったジャイアントボアを大勢で仕留める方法だ。」
「なるほど、なるほど。」
「しかし、俺のやり方には欠点があってな、成功確率は低いな。」
「それは何故?」
「やつらはやたらに嗅覚が良いんだ。だから罠を見破ってなかなか掛からない。」
「あー、なるほど。そうかもしれない。」
結局、ミカエスとカシムのやり方の両方でやる事にした。
追い立てられる方へはカシムとミカエスがサポートする手筈にした。
果たして狩りは成功するのだろうか?
◆
ミカエスの発案のジャイアントボア狩りだったが、カシム発案として村人達に伝えた。
賞金首のジャイアントボアを仕留めたカシムの提案は簡単に通り、村人多数での狩りになった。
入口は広いオリだが、だんだん狭くなり、人だけが通り抜けられる仕組みの罠を作った。
当然ジャイアントボアが通過すると、重さで自動的にオリが閉まる仕組みだ。
あとは普通の落とし穴だが、人は素通り出来るが、ジャイアントボアくらいの重量だと穴に落ちる仕組みだった。
カシム発案の足にワイヤーを引っ掛ける罠も仕掛けたが、本人はあまり期待してなさそうだった。
各罠を仕掛けた後に、大勢で鍋などを叩いてジャイアントボアを追い立てていった。
しかしカシムの予想していた通り、怒ったジャイアントボアが、ミカエスの見ている側で、他の大人に向かって突進して来た。
ミカエスは持っていた鍋と棒を咄嗟に収納し、背中に数本背負っていた木の槍を手に持った。
すると突進して来たジャイアントボアは逃げる大人に迫って来た。
ミカエスは腕を身体強化し、木の槍をジャイアントボアの横っ腹目掛けて投げた!
ミカエスの投げた木の槍は背中に命中し、致命傷ではなかったため、今度はミカエスに向かって突進して来た。
ミカエスは素早く罠へ誘導して行くが、ジャイアントボアの足は早く、追いつかれそうになった。
しかしミカエスは木の隙間や小さな身体を活かして、ジャイアントボアの距離を稼いだ。
そして木のオリへ誘導して行った。
だが、何故かオリの入口辺りで、ジャイアントボアは立ち止まってしまう。
ジャイアントボアは危険を察知したのか、それ以上はミカエスに近寄らなかった。
「このー!こっちに来やがれ!」
ミカエスは背中の木の槍を抜いて、再びジャイアントボアに投げつけた!
またしても致命傷とはならず、背中に辛うじて当たっていた。
ジャイアントボアは痛みで飛び上がり、怒りをあらわにして、ミカエスを睨んだ。
「ベロベロバッ!」
ミカエスが挑発すると、ジャイアントボアは再び突進してきた。
ミカエスはそのままオリの行き止まりまで走って行き、隙間からオリを出た。
ミカエスがオリから出たのを見たジャイアントボアは、ブレーキして止まろうとしたが、その重量で自動的にオリの蓋がしまって閉じ込められてしまった。
そこへ身構えていた槍を持った大人達が近より、ジャイアントボアを槍で滅多刺しして仕留めた。
カシムもジャイアントボアを上手く誘導した。
冒険者のレンジャースキルを使い、危なげなくジャイアントボアを誘導して落とし穴にはめてから、槍や岩で攻撃して仕留めた。
ミカエスは以前仕留めたジャイアントボアをストレージから出して、こっそりとカシムの作った罠に引っかけた。
それを罠により仕留めたように見せかけた。
「おお、凄い!今日一日で3頭のジャイアントボアを仕留めたぞ!」
「流石狩人のカシムさんだな。」
村人はカシムの功績を称えて称賛したが、その影では、ミカエスが活躍していたことを誰も知らない。
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