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貧乏脱却少年は異世界で影に隠れて活躍する  作者: 神永ちろる


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ミカエスの父ロンデ

第10話 ミカエスの父ロンデ



ミカエスの父ロンデは悪い男ではなかった。

ちゃんと自分で働く場所を探したり、家族のために食べ物を買ってきてくれたりする。


しかし、失敗続きで落ち込みやすく、酒に逃げて、現状を脱却するために博打をして借金をつくるような悪いクセがある。


「父さんはまじめだから、薬草採取とか一人でやる仕事が合ってるかも」


ミカエスは父親のロンデに言ってみた。

父がまじめに働き続け、酒や博打を控えてくれたらよいと思ってのことだ。


「薬草採取は確かに得意だけど、あれは一年中はできないな」


「薬草は花、葉、根など、薬効成分が種類によって違うし、収穫するにも場所や見極め方が様々だから難しいんだ」


「なんか父さんは、薬剤師さんみたいに詳しいなぁ」


「ははは、母さんの病気を治したくなって、あれこれ調べているうちに詳しくなってた」


「ついでに森で食べ物探しもやっていたしな」


「そうだったんだね。どうりで詳しいわけだ」


父親のロンデは、やっぱり一人でやる仕事が向いていそうだった。

人と仕事をしていると、他人より仕事が遅いとか、下手だとか、なじられることがある。そんな思いをしない方がよいと思った。


◆


父親ロンデの一日はというと、朝起きると何も食べずに家を出る。


辺りはまだ暗いが、オルフェスの街に到着する頃には日が高くなっている。


日雇い仕事を仕事斡旋所で見つけ、仕事をして、暗くなる頃には帰ってくる。


しかし、仕事をするまではよかったが、仕事で嫌なことがあると、それを忘れるために酒場に行っては酒を飲んで金を使ってしまう。


また、酒を飲むと気が大きくなってしまうのか、カードなどの賭け事で全部スってしまう。


そして、我が家は年がら年中、金がない貧乏生活をしているというわけだ。


そして今回、とんでもないことをしでかして帰ってきたのだ。


「すまない。俺はとんでもないことをしてしまったようだ……」


「あなた、どうしたんですか? 泣きながら、また酔っぱらって帰ってきて」


ロンデは妻サビーナに一枚の紙を手渡した。


「またお金を借りた証文ですか?」


しかし、妻サビーナの予想に反して、とんでもない内容が書かれていた。


「これって、娘のマリナの売買契約書ではないですか!!」


家の中の空気が一気に凍りついた。


「い、一体どういうこと? あたし、売られるのは嫌だ!」


「いや、まあ、そうなる」


「ちょっと、どういうこと?」


「ゴホン、ゴホン!」


「ほらほら、また咳き込んで。母さんは寝てなさい」


「寝てなんかいられない! ゴホン、ゴホン!」


俺は母さんをなだめて、ベッドに横にさせた。


「とりあえず、落ち着いて父さんの話を聞こう」


家族全員は黙って、父親ロンデが話し出すのを待った。


「実は酒場でいつも通り飲んでいたら、カードをやらないかと誘われた」


「俺は嫌だと突っぱねたんだが、強引に席に座らされて、やらされてしまった」


「嫌々やっていたカードだったが、やたらとツキまくってな、かなりの金が俺の前に積まれたんだ」


「俺はこのとき帰ろうとしたんだが……」


「『勝ち逃げは許さねーぞ!』とか言われて引き止められ、高い酒を飲まされた」


「俺は酔いが回ってきて気が大きくなって、カード博打に没頭していった」


「気がついてみると、前にあった俺の金が全部なくなっていた」


「俺は今日の稼ぎを取り戻そうとして、金を借りてカード博打をやりまくった」


「俺はカードをしながら、寝てしまっていた」


「そして目が覚めたときには、一枚の紙を突きつけられて、この有り様だ」


この話を聞いて、しょーもない父親だと思い、呆れて開いた口が塞がらなかった。


「あたし、とにかく売られるのは嫌だからね。なんとかしてよ」


「しかしな、期限までに借金を払わないと、お前を手放さなきゃならないんだ」


姉マリナは泣きわめいたが、家族は何もしてあげられなかった。


冷静になって借金はいくらか聞いてみたら、大金貨三枚だった。


俺の持っているのは小金貨三枚ほどで、それの十倍の借金になっていた。


しかし、なんだか父親の話を聞いていて、これは計画的な企みではないかと俺は思った。


俺は金を貸した男や、もっと詳しい状況を父親から聞いたのだった。



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