表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蒼弓の軌跡 ~探索者学院唯一の弓術士は静かに頂を狙う~  作者: 七夜灯
入学編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
19/27

第19話 奇襲

 前方二体、後方二体。

 蒼真は一瞬で判断を下した。


「悠斗、航、前を頼む! 後ろは俺が――」


 悠斗と航が前方に駆け出した。紅葉が前方の二体を指差し、位置と距離を叫ぶ。


 蒼真は振り返り、弦に矢を番えた。後方から迫るゴブリン二体。通路の暗闇の中で緑色の肌が真帆の《光球(ライト)》の残光を反射していた。距離は十五メートル。

 弦を引き、放った。蒼い軌跡が先頭のゴブリンの胸を射抜いた。崩れ落ちる。


 だが、二体目が速かった。

 一体目の横をすり抜け、蒼真の矢が届く前に後衛に到達した。棍棒を振りかぶり。


「真帆!」


 蒼真が叫んだ時にはもう遅かった。

 棍棒が真帆の左肩を打った。鈍い音が通路に響いた。真帆が横に吹き飛び、壁に背中をぶつけて崩れ落ちた。《光球(ライト)》が一瞬不安定に揺れ、空間が暗くなった。


「真帆ちゃん!」


 里奈の叫び声。


 蒼真は右太腿のナイフケースからナイフを引き抜き、ゴブリンに向かった。投げない。手持ちで斬りつけ、牽制する。ゴブリンが棍棒で受け、蒼真を押し戻した。


 くそ、近接は不利だ。


 背後から足音が迫る。悠斗が前方を片づけて駆け戻ってきた。


「どけ蒼真!」


 蒼真が横に跳ぶ。悠斗の《脚力強化》が炸裂し、蒼白い光を纏った槍がゴブリンの胴を貫いた。粒子化。

 四体全てを撃破。


 だが。


「里奈――?」


 蒼真が周囲を見回した。里奈がいない。杖を抱えた姿が、通路脇の横道の先に消えていく残影だけが見えた。


 ――逃げた。


 里奈は真帆が殴られた瞬間に凍りつき、恐怖に駆られて走り出したのだ。

 蒼真の胸に後藤の声が蘇った。


 ――独断専行は絶対にするな。


 魔導通信機を握った。


「後藤先生、第5班の神代です。帰路で奇襲を受けました。小林真帆が左肩を負傷。中村里奈がパニックで逃走。方向はエリアマップ上で第2層降り口に向かう南東方向です」


 ノイズ。そして後藤の声。昼行灯のトーンではなかった。


『――何があった』


 蒼真が手短に状況を報告した。


『追え。班を分けるな。全員で行動しろ。俺も向かう』

「はい」

『神代』


 後藤の声が低くなった。


『お前の判断で班員を死なせるな。全員連れて帰れ』


 通信が切れた。

 蒼真はナイフをケースに戻し、真帆の側に膝をついた。


「真帆、肩は」


 真帆が壁に背を預け、左肩を右手で押さえていた。顔を歪めてはいるが意識はしっかりしている。


「……《小回復(ライトヒール)》」


 温かい光が左肩を包んだ。真帆が息を吐く。


「大丈夫、動けます。でも、魔力の限界があるから今は何度もは……」

「十分だ。歩けるか」

「歩けます。里奈ちゃんを追わないと」


 真帆が立ち上がった。左肩を庇いながらも、足は止まらなかった。


 航が横道の入口を確認していた。


「足跡がある。まっすぐ走ってる」


 紅葉が《視力強化》で横道の先を覗いた。唇を噛んでいた。


「あたしが気づいてれば。前の索敵に集中しすぎて、後ろの二体を見落とした」


「俺もだ」蒼真が言った。「後方警戒が頭から抜けてた。紅葉だけの責任じゃない。班長の俺が後方を意識してなかった」


 紅葉が蒼真を見た。蒼真は横道の先を見つめていた。


「――行くぞ。全員で里奈を追う」


 五人が横道に突入した。紅葉が先頭を行き、里奈の足跡を追う。


「足跡がまっすぐ走ってる。振り返ってない。完全にパニックだ」


 蒼真は弓を握りしめた。矢筒の中の矢は残り四本。


 ――全員連れて帰る。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ