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八百万の火玉花道  作者: 椿 木春
アジサイ[第一章]
55/57

09.心を射溶かす破魔のようで・・・・

(1737.10/--)

 ーーーー体育祭当日。最初のプログラムである入場行進と宣誓の後。体育祭運営本部の横に座る放送部員が、進行の為の合図を学校内全体に伝える。

 「訳ありペア競走に参加する生徒は、入場口に集まってください。」

 一応、プログラムの合間は、トイレや水分補給用に少しの休憩時間が空けられている。その上で、所要時間内に集合が完了すれば、休憩時間を終了し、放送部員から入場の合図があって、次プログラムが始める。

 「訳ありペア競走、選手入場。」

 合図があり、1年、2年、3年の順に入場していく。

 訳ありペア競走は・・・というより任意の参加者だけが参加する個別競技では、全学年が一度に入場し、1年、2年、3年の順に競技が執り行われ、全学年が同時に退場する。

 逆に学年全員参加の全体競技の場合は、学年ごとに入場と競技と退場を執り行う。

 ーーーーそういうわけで、私は先頭に立たされた。

 1年1組。第1走者。しかもクラス委員長と副委員長。・・・・まぁ、仕方ないとしか言いようがない。けど・・・・

 「なんでアタシがプラカードなの。美十でしょ持つの。」

 「兎美麗さんの方が背が高いので。」

 「聞いたよそれは。けど納得はしてないから。絶対に委員長の役目。これは。」

 「副委員長は委員長の補佐でしょう。ならば私の代わりをする事に否は言えません。」

 「いや、体調悪いならわかるけどさ・・・。元気ピンピンじゃん?しかもリレーまで掛け持ちして・・・・。」

 「個別競技はあくまでも任意参加です。とはいえもちろん、なるべく1人1枠ですが、それはあくまでも推奨。人の集まり次第では掛け持ちも可。やりたい人は2つまでやっていいよ。それがルールです。そして枠は余った。ならば私はやりましょう。それに、兎美麗さんだってやってるではないですか?」

 「だって美十が・・・・いや、うん。・・・そうだね。男子か女子かの限定の対抗リレーでないと、午後の部は暇になっちゃうし。」

 

 「そういえば兎美麗さん、結局部活動には入らず終(じ)まいですか?」

 「まあ、うん。・・・なんか悩んでたら結局・・・・。」

 「エリカさんにテニス部に誘われてませんでしたか?」

 「そーだけど・・・見て、なんかなぁ・・・って。」

 「他の部活も?」

 「・・・まあ。」

 「そもそも兎美麗さん、どういった部活がやりたい・・・という願望は?」

 「ん〜・・・・なんか・・・・なんて言うか・・・・その・・・・・」

 思いつきはした。けど、口にはしなかった。・・・・だって恥ずかしい・・・から?

 ・・・まあよくわからないけど、とにかく口にはしたくなかった。

 「思いあたるモノはあるんですね。」

 「・・・・まあ。」

 「じゃあ作っては?」

 「いや、それは難しい・・・・のかな?」

 「人が集まりそうにないと?それとも準備自体が難しいとかですか?」

 「人は・・・・どうだろ。・・・多分集まる・・かな?けど、先生が許可出さないと・・思う。」

 「・・・・力添えはしますよ?」

 「いや美十には・・・・・なんでもない。」

 「入りますよ?兎美麗さんが望むのなら。」

 「いやいや・・・大丈夫。ほんとに。・・・大丈夫。」

 「・・・・そうですか。」

 「・・・なんかごめん。」

 「いえ。兎美麗さんらしいので、別に構いません。」

 「らしいって・・・・。」・・・・アタシはそういう人間なんか・・・・。・・・そうか。

 

 ーーーー美十は、優しい。

 美十は人の心を慮る事ができる。それでいて、人の事を歯牙にも掛けない冷徹な理性も併せ持っている。

 美十は矛盾の塊。でもそれ故に、あまりにも優しい。・・・・人にどれ程厳しくしても、それは当人がルールを・・・ひいては人様に迷惑を掛けているから。だから厳しくする。けれど寄り添いもする。

 美十は太陽みたいで、全てを見通す眼を持っていて、その灼熱と心眼により、凝り固まった心を柔軟になるまで焼き溶かされてしまう。・・・けれど流離う美十は何処まで行っても朧げで、とても危なっかしいと・・・・最近は、そう感じるようになった。だから・・・・。

 ・・・・それもあった。でもそれ以上に、私自身が変えられていく。ずっと理性的で冷静でいたはずの私が、感情的で情動的になるように絆されてしまった。それが良い事なのか悪い事なのか分からなくて、なによりあまりにも不甲斐ないと自覚してしまって・・・・・だから私は、美十からは距離をとることにした。

 ーーーーとはいえそんなこと、出来るはずもなく。・・・だって私は・・・・・。


 「はぁ・・・・。」

 午前の部が終わり、昼休憩。多くの生徒が親や友達と昼食を取る中、私はさっさと昼食を終え、心に湧く情動に逆らうようにして、美十の居ない場所へとあちらこちらへーーーーー。

 暫く歩き回り、校内へ入ることに。・・・「教室から外を見れば、少しくらい変わるかな」・・・・なんて思ったりして・・・・・。けどーーーーー

 「あれぇ〜・・・・ど〜しよ〜・・・・・。」

 「エリー?」

 下駄箱前で、エリカが立ち往生していた。

 「あ、ソーチョー!」

 「どーしたの?」

 「あっと・・・靴が見つからなくて・・・。」

 「靴?」

 「・・・うん。ちゃんとエリのとこ、入れてた筈なんだけど・・・・・」

 そう言いながら、エリカは下駄箱にある靴をひとつずつ確認し回っていた。

 ーーーーふと、思い出す。

 ・・・そういやさっき・・・・。

 玄関口に入る前。校内の窓際、下駄箱が見える位置から、女が2人顔を覗かせていた。

 ・・・・あいつら・・・・・あの笑顔、そういう・・・・。

 何となくではあるけど、察した。・・・まあ、そういうことなのだろう。・・・・さっきのあの2人がエリカの靴を隠した・・・と。

 ーーーーとはいえこれは推測。ただの偶然かもしれないから、私も一緒になって靴を探し回った。

 「見つからない・・・・。ど〜しよ〜・・・・。」

 下駄箱は、全て見た。その周りも、全て探した。それでも見つからず。

 ・・・・どーするか・・・・。

 悩み、けれど直ぐに決断する。

 「誰か借りれる子、いる?この後、部活動行進でしょ?部活入っていない子で、靴のサイズが近い子。」

 「探してみる。」

 「・・・見つからなかったら、最悪アタシの靴使って。ここ、置いとくから。」

 「うん。ありがと。」

 ーーーーそう言ってエリカは去っていった。

 ・・・・さて、私も行くか。

 さっき見た2人。顔は覚えている。・・・美十のせいで他クラスとも少なからず縁があって、そのおかげで名前も分かったていた。

 ・・・・1年2組。・・・・。

 教室を前に、少し立ち尽くす。

 ・・・・いや、悩む必要なんてない。私一人でも・・・・。

 落ち着き、深呼吸。

 ・・・・常に冷静。感情的になって自分優先で語らない。・・・・よし。

 思い浮かべるは美十。彼女のように、私もやってやろう・・・・と。そう息巻いて教室の扉を空けた。

 「兎美麗さんだ。」「つみれちゃん?」「総長・・・。」「おお・・・。」「おい。」「どうしたんだろ・・・・。」

 教室内の反応は様々。昼食を食べながらも口を開く者、手を止める者、あるいは無視する者。・・・とはいえ大抵は驚いていて・・・・。

 ・・・・私が来たら悪いかよ。・・・・・まあいいや。

 気にせず、取り敢えず部屋を一望。

 ・・・・居ないか。

 目的の女2人は居なかった。

 「あぁ・・・・・・」

 居場所を聞こうと口を開く。・・・けど思い留まる。

 ・・・・聞くべき?・・・いらぬ噂が立つかも

 そう考えて、自分で探すことにした。

 ・・・・エリに迷惑は掛けられない。

 そう思い、歩き回る。・・・さっきまで教室には居たわけだし、ならばトイレだろう。・・・あるいは屋上行きの途中階段でたむろっているか・・・・・。

 

 ーーーーー階段の踊り場で、2人を見つけた。

 「ちょっと。」

 「なに。」

 明らかな怪訝な表情。

 ・・・黒か。・・・いや、決めつけは良くない。

 「聞きたいことがあるんだけど。」

 「・・・・・。」

 2人とも、不満顔で黙ったままだった。

 「エリーの・・・・エリカの靴が見つからなくて探してるんよ。それで見てないかな?・・・ってさ。」 

 「知らない。」

 「そっか。」・・・・あ、ちょっと待って。話終わっちゃった。

 「じゃ、行くから。」

 言って、2人は去ろうとする。

 「いや、ちょっ・・・と待って・・・・欲しいかも。」

 ・・・・どうしよ。どうする?・・・いや無理でしょ。ならもう直接聞くか?

 「まだ何かあんの?」

 「いや・・・いや、うん。エリカの靴。アンタらが隠したんじゃないかって思ってさ。」

 「は?なにそれ?知らないんだけど。」

 「いや、もちろんアタシだってアンタらを責めてるわけじゃない。ただ見たって子がいてさ。それで一応、ね?」・・・・嘘だけど。

 「誰そいつ。」

 「プライバシー保護の観点より、黙秘させてもらいます。」

 「あっそ。とにかく知らないから。それじゃ。」

 「わかった。」・・・・・まあ、無理か。

 思い、去る2人の背中を眺めていた。


 ーーーーー「ほんと笑える。見たあの顔?ぜったいウチらのこと犯人だってさ。あぁ・・・いい気味ぃ〜。」

 「いいの?」

 「なにが?」

 「そろそろ返さないの?このままじゃエリカちゃん・・・」

 「は?知るかよ。どーせ他人の靴使うでしょ。ウチはもう知らない。」

 「・・・・・・。」

 「なに?不満なの?」

 「・・・・・うんん。」

 「だったら黙ってりゃいい。どーせ誰も知らない。アイツの言ってたこともどーせウソだよ。」

 ・・・・とのことらしい。

 彼女らの後を付け、暫く。勝手に話し始めてくれたので、証拠が揃った。・・・録音とかはしてないけど。

 ・・・・まあ、私が聞いたし、なら後は私がどうにかすればいい。

 ーーーーというわけで、2人の下へ。

 「なに?」

 ・・・さっきと同じか。まぁ、私が違うから同じにはならないけど。

 「話、聞いてたよ。アンタら、やったんだ。で、どこ?」

 「は?知らんし。」

 「いやだから、聞いてたから。今おもっきり話してたじゃん。」

 「いやだからなんのこと?」

 「はぁ?今ここで喋ってたじゃん。エリーの靴隠したままでいいのかってさ。それにアンタ、もう知らないっ言(つ)ってたじゃん。」

 「だから?なに?ウチは知らな〜い。」

 「いい加減に!」

 強く言って、近寄る。そして胸ぐらを掴もうと・・・。

 「きゃ〜イジメられるぅ〜。」

 決して大きな声ではなく、けれどもしかしたら誰かに聞こえていたかもしれない。・・・そう思って、けれど気にせず詰め寄る。

 「いい加減しろよ!」・・・ダメだ、落ち着かないと。・・・・冷静に・・・・。

 一度、深呼吸を入れる。そしてしたたかに口を開く。

 「幼稚。稚拙。浅慮。愚か。・・・ハッキリ言ってバカ。あんまりにも頭が弱い。だからそんな事しかしない。いいよ別に。エリーには友達いっぱい居るし、代わりの靴なんてすぐ見つかる。」

 言い立てる度に、彼女からも反論がある。けれどそれを無視して更に責め立てる。

 「いい気味ぃ〜とか言ってたけど、こっちの方がいい気味ぃ〜・・・だよ。ってかどーせアンタ友達居ないんでしょ。ああそっか。好きな人をエリーにでも取られちゃった?だから怒っちゃったんだ。だから靴なんて隠しちゃったんだ。」

 煽る・・・ことが正解なのかはわからなかった。けど、でもまぁ手を出すよりは・・・・。そう思って・・・言い終えて、胸ぐらから手を離す。

 「母親居ないくせに。」

 「あ?」

 何故、そのような事を言ったのか。ハッキリ言って理解できないし、関連する理由も見当たらない。けれど私が反応したのを見て、彼女は続けた。

 「もしかしてあのクソエリカのこと好きになっちゃったの?ああそれか桜華(おうか)の方?いっつもベッタリだもんね。ママァ〜っつってんでしょどうせさぁ!オマエの母親死んじゃったもんなぁ!」

 ーーーー私とその女、2人して声が大きくなっていた。だから覗く生徒が増えていた。・・・・けれどそんなこと知りもしない。見えていない。

 ・・・・冷静さなんて・・・理性なんてクソ喰らえ。

 ーーーー思い、想い・・・そして怒りに駆られ、握り締めた拳を振り上げたーーーーー

 

 ・・・・悪いのは私。

 私が最初に彼女を煽った。

 煽り返されて、殴ってしまった。

 どう考えたって、間違えてる。

 「・・・・なんで・・・・。」

 なんでこんなことに・・・。

 結局、エリカの靴は見つからなかった。

 彼女らが隠したという証拠も・・・そもそも彼女らが隠したという認識さえ生まれなかった。

 ・・・だから、私がただ一方的に悪い。

 ・・・・わかってる。・・・・わかってる。・・・・でもーーーーー

 

 やり切れないこの怒りはどうしたら・・・・・。

 やるせないこの心に、どう折り合いをつけたら・・・・・・。

 ・・・・離れよう。・・・美十といると、絆されてしまう。感情的になってしまう。

 ・・・・周りが見えなくなるくらいなら・・・・距離を置いて、自分を取り戻そう。冷静で理性的だったあの頃に・・・・。


 ・・・・間違えているのかもしれない。それはわかっている。けれどそれが、私の決断だった。

【体育祭・種目】

『1年限定・全員参加』→

『2年限定・全員参加』→ソーラン節

『3年限定・全員参加』→


『全学年・全員参加』

→大縄跳び[練習有り]

→ムカデ競争[10人×4回×50m(直線)]

『全学年・各参加者』→クラス別対抗リレー

(男子限定)[4人×100m(トラック半周)](4人)

(女子限定)[4人×100m(トラック半周)](4人)

(男女混合)[女子2×100m(トラック半周)、男子2×200m(トラック1周)](4人)

→訳ありペア競走[8回×50m(直線)][二人三脚、背中で風船運び、手繋ぎ縄跳び、デカパン](16人)


『体育委員、及び、生徒会各参加者』

→応援歌[振付あり]


『部活動参加者・全員参加』→部活動行進

『部活動参加者・各参加者』→部活動対抗リレー

(運動部・男子限定[2×200m+2×400m])

(運動部・女子限定[2×100m+2×200m])

(文化部・男女混合[2×50m+2×100m])

(尚、人数が足りない場合は、各部活動の担当教員が参加するものとする。)


【体育祭・種目順番】

ーーーー午前の部ーーーー

1.入場・開会式・宣誓(全員参加)

2.訳ありペア競走(1年→2年→3年)(各参加者)

3.ムカデ競走(1年→2年→3年)(全員参加)

4.クラス別対抗リレー・男女混合の部(1年→2年→3年)(各参加者)

5.教員+PTAによる綱引き大会(各参加者)

6.大縄跳び(全学年)(全員参加)

ーーーー昼休憩ーーーー

7.体育委員より・応援歌(振付有り)

8.セレモニー(得点状況の確認・各部活動の過去の実績紹介)

ーーーー午後の部ーーーー

9.部活動行進・各部活動の現在の実績紹介(部活動参加者)

10.部活動対抗リレー

・文化部男女混合(各参加者)

・運動部女子限定(各参加者)

・運動部男子限定(各参加者)

11.ソーラン節(2年)(全員参加)

12.クラス別対抗リレー

・1年、女子限定、及び、1年男子限定(各参加者)

・2年、女子限定、及び、2年男子限定(各参加者)

・3年、女子限定、及び、3年男子限定(各参加者)

13.閉会式、得点発表、表彰、閉幕


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