04.流離うあの子は太陽みたいで・・・・
(1737.4/-- )
1741.4/--
ーーーーいよいよ本格的に学校生活が始まるということで、まずはクラス委員長を決める運びとなった。
「それじゃあ、立候補の人。手、挙げてね〜。」
先生の合図。そしてしばらくの沈黙。・・・・望んで立候補する人は居なかった。
先生が美十に、チラチラ・・・と視線を送っている。・・・・先生的には、彼女が立候補してくれるものだと思っていたらしい。
そういや中学校の先生と小学校の先生は繋がっているんだったか。・・・・人伝の聞き耳ではあるけれど、「小学校時代の人物像は、それとなく中学校側に流れている」との声を聞いた事がある。それが事実だとするならば、つまり彼女は小学校時代、当たり前のようにクラス委員長をやっていたということ・・・でいいのかな?
とはいえ現在、その彼女は、一向に手を挙げようとはしなかった。
「えっと〜・・・・・。」
先生が焦りながらチラチラ・・・。非常に困っていた。が、私は素知らぬ顔で、廊下向こうの空を眺める。
ーーーー少しして、美十が手を挙げた。
「私がやります。」
彼女の表情に変化はないが、しかし・・・・。
クラスメイトの何人が気づいていたかは知らないけど、入学式前のやり取りがあったせいか、その女が『非常に面倒くさそうにゆっくり大きくため息を吐いた』・・・ように見えた。
「ありがとうね!桜華さん!」
喜び、ホッ・・・っと胸をなで下ろす先生。
口にはしないが、「・・・それでいいのか」・・・なんて思ったり。・・・・だって本人が望んでないのにやらせるのは、どうかと・・・・。いや、はたから見れば本人が手を挙げて立候補したに過ぎないんだけど・・・・。
そんなこんなでクラス委員長が決まり、残りの役職・・・図書委員であったり体育委員であったりを、まず立候補で一通り。埋まらなかった枠を、クジで決めていく事に。
・・・・と、その前に。
「次、副委員長に立候補する人はいるかな〜?」
カッカッカッ・・・と、委員長に選ばれた美十が黒板に文字を書いていく一方で、教壇に手をつく先生が次の立候補者を募っていく・・・がしかし、当然のようにクラスは沈黙。
・・・・まぁ、当然か。・・・なんて思っていたら、教壇横に立った美十が、私を指さす。
「彼女で。」
「は?」
思わず、ドスの効いた声が漏れる。
「えっと・・・。」
先生も困惑したまま、チラチラ・・・チラチラ・・・と。
・・・・たまったもんじゃない。
とはいえ場の空気が、完全に一方通行に定まってしまった。
一応、私の態度を見て周囲は心を隠して沈黙しているが、いや、わかってるからな?
・・・・はぁ。
仕方ないので、席を立つ。
「えっと・・・・。」
話を進めようとする先生を横に、美十が手に持ったチョークと紙を私に差し出す。
「はいこれ。よろしく。」
私は黙ったままそれらを受け取り、クラスメイトに背を向けた。
紙には委員会の役職と空白の名簿欄が記してあるから、それを黒板に書き写していく。
先生は教室の隅で椅子に腰掛け、残りをこちらに全投げ。
美十は指示を受け取り、テキパキと役員を決めていった。
腕前としてはさすが委員長。無駄はほとんど無く、クジで当たってしまった者に対してもそれ相応の対話を行い納得させていく。・・・・正直、見惚れてもいい話術だと思った。クジで選ばれた者たちが、「最悪だ。やりたくない」という状態でありながらも「まあ、仕方ないか」と納得していくのだ。
クラス委員長として非常に有能で、信頼できる。これなら、副委員長である私が手を煩わされる心配は皆無だろう。それはとても素晴らしい。
あくまで可能性としてではあるけど、副委員長になっていなければ、私が役員に選ばれてた可能性だってある。それをこの楽なポジショニングで回避できたと言うのなら・・・・まぁ、いいだろうと納得できた。・・・・納得してしまった。
・・・・いや、それでも名指しはおかしいでしょ。止めろよ教師。
先生に視線を向けてみれば、申し訳なさそうに笑った表情で返された。
・・・・笑ってんじゃねーよ。
「・・・・で?なんでアタシ指したの?」
クラス委員として先生を手伝い、職員室に荷物を取りに行った帰り道。・・・丁度2人きりになったので口を開く。
「気分です。」
「は?」
「クラスで一番使えそうでしたので。」
「はぁ?」
「正確に言うならば、クラス全員の第一印象に触れた結果です。副委員長が私の手を煩わせるなど、以ての外。その上で最も使えると判断したのが、兎美麗さんということです。」
これは褒めているのか、貶しているのか・・・・。いや、褒めてはいるのだろう。けど、『使い勝手のいい駒』と言われているようで、少し腹立つ。
ただそれ以上に、有能と認めたこの女に褒められたのは、素直に嬉しいと感じた。とはいえ・・・・。
「・・・・あっそ。」
美十の言葉は適当にあしらっておく。
「照れてます?」
「黙れ。」
ーーーーーーー・・・・晴れ渡る空。
「チュンチュン・・・チュンチュン・・・。」
ーーーー小鳥たちが、ナいているーーーー
「ザァザァ・・・サワサワ・・・。」
ーーーー草木がざわめいているーーーー
「・・・・・・。」
ーーーー静かな森が、燦然と佇んでいるーーーー
・・・・ミト・・・。
・・・・みんな・・・・。
ーーーー生い茂る木々の中、寄りかかった木を支えに、ゆったりと立ち上がる。
顔を上げれば、たんぽぽが孤独に揺れている。
もっと顔を上げれば、自然が色とりどりの花を咲かせている。
・・・・行こう。
ふらつく脚に力を入れて、歩みを進める。
・・・・ケタケタ・・・・ケタケタ・・・・。
何処からともなく聞こえてくる笑い声。何がそんなに可笑しいのか・・・・。
・・・・ワカからない。けど、楽シそう。
『もう少ししたら、きっとお家に辿り着く。だから振り向かないで、歩き続けて。』
言われて、止まっていた脚をもう一度動かす。
何度も何度も動かして、また、止まる。
・・・・ケタケタ・・・ケタケタ・・・・おいでよ・・・・キミもおいでヨ。
誘われて・・・・。
『行かないで。歩いて。みんな待ってる。』
言われて、ふらふら・・・・ふらふら・・・・ふらふら・・・・ふらふら・・・・。
歩いて、歩く。・・・・声に従い、ただ、歩き続ける。




