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八百万の火玉花道  作者: 椿 木春
イベリス[第一章・第2幕]
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35.真なる神の子よ、我らに赦しを与え給へ

 「討伐、完了しました。」

 「ジジ・・・ジジジジジジ。」

 「生きています。精神核も無事なようです。」

 「ジジ・・・ジジジ・・・ジジジジジジ。」

 「了解しました。」

 暗闇の中で、誰かの声が聞こえる。それ以外の世界は、空虚な静けさに包まれていた。

 「さぁ、行こうか。」

 首と膝裏に手が回り、私の体が持ち上げられた。お姫様抱っこってやつ。

 そして何処かに運ばれる中で・・・。

 ・・・あなた・・・は?

 「僕?・・・そうだね。僕は、サ”エル。ヘーリ・サ”エル。君の、お姉ちゃんだよ。」

 お姉・・・ちゃん?

 「そう。君のお姉ちゃん。そして君は、僕らの末妹。」

 末妹・・・。なにが・・・どうして・・・。

 「ん〜・・そうだなぁ〜。本来であれば君の魂はフェアリエの一部になっていた・・・んだけど、でも君の精神核は崩壊しなかった。そして君は、シャーディアの詩を聞いただろう?」

 ・・・詩?

 「そう、詩。僕らに贈る、彼女からの手向け。シン化の手助け。聞いた者同士は繋がりを得る。だから君と僕らは姉妹となった。そして君は最後のピース。だから末妹。」

 ・・・末妹・・・。

 「わかってなさそうだね。」

 うぅ・・・。

 「まぁ良いよ。そもそも気にする必要もないから。ただ漠然とさえ知っていれば、それで良い。」

 ・・・ん。わかった。

 「いい返事だ。さ、早く家に帰ろう。」

 家?

 「そう。僕らの家・・・タカマガハラに。みんな待ってるよ。君の到着を。」

 ・・・ん。わかった。かえる。

 「よろしい。」

 何もわからないまま、ただフワフワとした気持ちの中を彷徨っている気分。

 何か、大切なことが抜け落ちているような気がする。けど・・・でも多分どうでもいいことなのだろう。だってそこまで気にならないのだから。

 今はなんだか、眠っていたい・・・。

 ウトウトとしながら・・・やがて意識が消えていくーーーーー。


 「お!末妹様のぉぉぉ!!!おなぁぁぁぁりぃぃぃぃぃ!!!!」

 「・・・・んあ?」

 「はぁ・・うるさすぎ。もうちょっと黙ろうよ。その子眠ってんじゃんか。」

 「あ、ほんとじゃん。え、ごめ〜ん。」

 「んえ?」

 「ふひ・・・わかってなさそう。こりゃ後で土下座1000回コースだな。」

 「は?!なんで?!」

 「ふひ・・・赤ん坊の眠りを起こす奴は極刑だぁ。」

 「ホントにその通り!!ちょーひどい!!なのにそんなこともできないとは!!こりゃプラスして裸釣りもやってやらなきゃな!!きゃー!」

 「それあんたの趣味でしょ!てか赤ん坊じゃないじゃんかその子!」

 「ふひ・・我らの妹であることに変わりはなし。」

 「そうだぞ。黙って裸になって土下座してろ。きゃー!」

 「いやだね!!私はやらない!!というか決めるのはこの子だ!!ね!」

 「・・・んえ?」

 「寝!ぼけてる?!」

 「違うよ了承の意だって。ね?」

 「ふひ・・そうだね。」

 「は?!」

 「はぁ・・。まぁみんな落ち着いて落ち着いて。取り敢えずさ、多数決にしよう。」

 「いいね!」

 「ふひ・・最高・・・。」

 「よくない!ギ”エル!あんたわかってて言ってんでしょ!」

 「ふんむ???」

 「かぁぁーーー!!!腹立つ顔するなぁ!」

 「ふひ・・・煽りに乗せられる単細胞。やはり馬鹿。」

 「はぁぁぁ?!?!」

 「線が単調で肉付きの悪い体。貧相。肉体美の欠片もない。やはり裸になんてなる必要なし。価値もなし。きゃははは!」

 「はぁぁぁあぁぁぁぁ!!!!!!貧相な体で悪かっですねほらしかっかりと拝めやぁぁ!!!」

 「きゃッ・・カシャリ。」

 「あぁぁぁおぉぉおぁぁぁ!!!撮るなぁぁぁ!!!」

 「ふひ・・やはり、馬鹿。義務教育の泣き声が聴こえる・・・。」

 「んあぁぁ?!ヴ”エルお前年下だろぉぉぉがぁぁぁ???」

 「ふひ・・昔の話よ。今は我のほが、姉。お前は6番目よ。ん?」 

 「なぁぁぁぁぁ!!!」

 「きぁぁぁぁぁ!!!」

 「うをぉぉおぉぉ?!?!てめパンツ返せダ”エルぁぁぁぁ!!!!」

 「えっと・・・・。」

 カオスだ・・・。凄く、カオスだ・・・。

 貧相な体の全裸女と、パンツ被ってきゃッきゃ笑ってる変態と、それを観ながら笑う負のオーラ丸出しちびっ子と、にこやかな真顔で静観してるギャル系褐色豊満女性と、お姫様抱っこされている私と、しているボーイッシュ。

 ・・・わ、かっこいい。・・・って違う。

 この状況・・・私は、どうすればいいんだ?

 「おはよう。エ”イマ。今目の前にいる4人と僕が、君のお姉ちゃんだよ。ほら皆自己紹介。」

 「三女、ラフメル・ギ”エル。」

 これが、ギャル系褐色豊満女性。

 「よろしくね。気になることがあったら何でも聞いて。”私に”・・・ね?」

 ”私に”・・・を強調してる辺り、どうやら他の姉たちは駄目人間だぞと言いたげな感じだった。

 ・・・うん、まあ・・・見れば分かる。

 「スゥぅぅぅ・・ハァぁぁぁ。・・・四女!ガリレット・ダ”エル!!きゃぴ!ダブルピィィーッス!」

 これが、パンツを被った変態。

 うん、言うことはないな。・・・うん、距離は置いておこう。

 「ふひ・・我の名はレミヴァ・ヴ”エル。六・・・六番目だ。」

 これが、負のオーラ丸出しのちびっ子。

 「い・・妹よ。お前は・・わ・・私を・・頼るといい・・いいぞよ・・・ふひ・・ひひひ。」

 とてもぎこちない笑顔を見せてくれた。・・・うん、コミュニケーションが苦手な人なんだな。

 「七女!!ミヘッドォォォ!!!ルゥゥゥ!!!!カ”ァァエルァァァ!!!」

 これが、全裸の人。両手をおっ広げて、余すことなく恥部を晒す・・・変態?

 「どうぞよろしぃぃぃぃぉぉおおおぉぉぉぁぁ??」

 七女の全裸女性が、三女の褐色ギャル系豊満女性に取り押さえられ口を塞がれる。それ故に暴れ出す・・・が、技を決められた結果、藻掻くに終わっていた。

 「七女。ミヘッド・ル・カ”エル。彼女は能天気で馬鹿で貧相な恥さらしね。関わらなくていいよ。」

 「ンゴぉぉぉ!!!ンゴぉぉぉぉ!!!」

 「そして抜けた五番目が、僕ね。」

 「ふひ・・も・・元男な。そいつ。」

 「え?」

 「まぁ、そうだね。」

 「へ、へぇ~。」

 「ふひ・・・わ、笑える。」

 「そういう君は僕よりも貧相な体して・・・くっそ笑える。」

 「我・・まだ成長期残ってるから・・・ふひ。・・・お、お前なんてな・・あっという間だ。」

 「可哀想に。僕らはもう二度と成長しないよ?セノビック飲んだって意味ないよ?」

 「ち、違うな・・・。成長しないのは・・第二次性徴期を過ぎた奴だけ。我は・・まだだから・・・。ふひ・・ひひひ。」

 「夢を見るのは自由だけど、現実から目を逸らしちゃあいけない。はは・・1年後が楽しみだね?」

 「うぅッ・・・ぜ、絶対に伸びる・・・だから・・・大丈夫。大丈夫。大丈夫。大丈夫。」

 一番マトモだと思っていた五女のサ”エルも、やはり姉たちの1人なんだと理解した。

 ・・・うん。・・・・私、ここでやっていけるかな・・・・。

 「で?・・・君は?・・・君の名前は?」

 「あ、私・・・私の・・名前は・・・・名前・・・・・。・・・・あれ?」

 私・・私・・わたし・・・・。私は誰だ?

 いや覚えている。覚えているはず・・・。

 確か因幡を出て、フェアリエの巣に向かって・・・そこで戦って、負けて、そして・・・。

 そう。過去は思い出せる・・・思い出せている・・・はず・・なのに・・・・。

 名前とか顔とかが・・・浮かんでこない・・・・。

 ・・・・誰かがいた。ずっと近くで、一緒に戦い続けた誰かはいた。でも・・・・・その人たちが誰か?なのかを思い出せない。

 ・・・・あれ?・・・私、何か大切な事を・・・忘れているような・・・・・。

 涙が、頬を伝った。それをサ”エルが優しく拭う。

 「この子の名前はウーリ・エ”イマ。僕らの末妹。はい、よろしくね?」

 「あ・・うん。」

 その後少しの沈黙が続く。

 その間に七女のカ”エルが服を着る。

 そして三女のギ”エルが沈黙を破る。

 「あぁ・・・まぁ・・その・・あれだ。仕方がない。それだけ君が、耐え抜いたってことだから。」

 それの意味するところはわからない。けれど、何処か悲しく・・それでいて優しく、頭を撫でられた。

 「ようこそ、タカマガハラへ。ここが君と私たちの家だよ。」

 「あ・・りがとう?」

 「私はションボリした空気とか苦手だから!次からはまた楽しんでいこう!・・・ね!」

 「・・・うん。」

 「今日は取り敢えずおやすみ。此処まで来るのに随分と疲れたでしょ?」

 「あぁ・・・。」

 ずっと寝ていたせいか・・・うん。眠たくない。けどまあ、今は少し1人になりたくもあるから・・・・。

 「おやすみ。」

 「おやすみ。・・・ほらサ”エル!ボサってないで案内!」

 「はいはい。それじゃあ行こっか。」

 「あ・・うん。お願い。」

 結局最後までお姫様抱っこされて運ばれた。とうかそうしてくれないと・・・。

 どうも体に、力が入ってくれない。今は私の意思で、動けない。だからーーーー。


 「おやすみ、エ”イマ。」

 自然と意識が落ちていく。起きてられない。

 「無理に起きる必要はないよ。きっと君には、今暫く時間が必要なんだ。」

 時間・・・。

 「そう、時間。一週間か、一カ月間か・・・果ては数年単位。長い・・・本当に長い時間が必要なんだと思う。それくらい、君は特別な存在だから。・・・うん、だから・・・今はとにかく眠ってしまおう。次の計画は僕らで進めておくから。君が必要になるまで、ゆっくりお休み。・・・"僕ら"の大切な"僕ら"の母よ。」

 ・・・時間・・計画・・必要・・母・・大切な人・・・・・大切・・何か・・・・忘れて・・・。

 「いや・・・・。」

 「大丈夫。君は大丈夫。ただ在るべき始まりへと還るだけだから。」

 その声が、私の心を優しく撫ぜる。

 その手が、私の両眼をふわりと覆う。

 拒絶する理性が、完全に呑まれてしまった。

 もう、起きることはできない。ずっとずっと深くまで、私の心は落ち続けるーーーー。

 『世界の中心、母なる大地よ。

 我ら罪人、今こそ還る時。

 ああ・・・・なんと心地良き、この温もりよ。

 赦されざる大過が浄化されてゆく・・・・。』

----.--/--

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