33.握り締めた拳、決して折れぬ心
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3型成熟体〈ノビリス〉。・・・・現状、発生が確認されている単一フェアリエにおいて、最強の個体。これを私たちは最大限に警戒していた。また、その他全てにおいても、準備を怠ることなんてあり得ない。
確認された巣の中心には、集合体であるが故にどの単一フェアリエをも凌ぐ強さを有する融合体〈アマルガム〉が一匹。ただ、フェアリレーダーで感知した保有エネルギー数値がクィーンクェの半分以下だった為、警戒対象としては2番目となった。とはいえ、恐らくはこれが”母体”であるとの推測から、討伐対象としては優先的とされている。
「確定で母体である」との確認が取れないのは、フェアリエの繁殖事情については詳しくは知らない・・・というか明確にされていないから。加えて、該当個体は巣の中心付近で建造物内に身を隠しているため、上空からは建造物が邪魔で・・・・ドローンを飛ばしても、フェアリエに落とされてしまうせいで・・・・潜入しても、目的地まで向かう途中にフェアリエに殺されてしまう状況から、目視確認が行えずにいる。結果、「何とも言えない」というのが現状。
けどだからって巣を除去しなければ、『但馬』との直接交流に支障をきたすし、ヤマト国奪還作戦を完遂する上でも、巣の除去は何れ果たされなければならない役目の1つ。
・・・そう。だから事細かに作戦を立てて挑んだ。装備も完璧。体力も万全。最大限を超えた準備を積んだ。
ーーーーそれでも私たちは、無知で無力だった。
だから、想定内の想定外を軽く蹴散らされる状況に持ち込まれた。
この戦場は、最悪の最悪の最悪の最悪を想定して初めて、対等な土俵に立てる状況だった。それなのに私たち人間は、まだ、己の浅慮さを自覚できていなかった。そのせいでーーーー。
巣の発見から『フェアリエの巣・駆除作戦』の概要説明と作戦遂行の為の準備は、巣の発見以前から、既にある程度は立案され用意されていたこともあって、2日を待たずして完了された。
「フェアリエの増加を防ぐ為にも、即断即決が一番。故に事前準備は欠かさない。」・・・それを怠らなかった彼らは、素晴らしく優秀であったと理解できる。
ただ、準備完了から当日の内に即時開始とはいかない。
いくら完了していようと、再確認を一度行っただけでは、見えにくい不備を見落とすかもしれないし、準備段階であくせくと働きすぎな彼らは、今作戦においては役目を背負っている。・・・・疲れてしまっては役目を果たせないなど、以ての外。それ故、今夜は休養。しっかり食べて、休んで、寝て、疲れを取って、明日に備えよ・・・とーーーー。
ーーーー翌日明朝。作戦開始数分前。
「フェアリレーダーの観測に異常無し。フェアリエの総数は当初の平均想定より20パーセント程下回っているようです。」
兵士の1人が情報を発し、それがみんなに共有される。
・・・・安堵。兵士含めた全員の様相から、それが見て取れる。少しだけの談笑が聞こえてきたりもした。
そりゃあもう滅茶苦茶に警戒してたわけだから、流石に下回っててくれないとね。
思いながら、空を見る。
鳴るは風切り音。
第一作戦は、ミサイルによる焼畑作戦。フェアリエの巣を、火の海にする。その第一段階が、これ。
まず、7本のミサイルが上空を通過し、爆炎を上げ、目前の建物群を粉砕していく。続くミサイルも、次々とフェアリエの巣に落ちていく。
ワオ!クリーンヒット!
そうしている内に、焼畑作戦・第二段階として、はるか上空を飛行する爆撃機が、ケツノアナを開いてよく燃える肥料と爆弾を投下。
倒壊した建物群。それを覆い隠してしまう炎。粉砕された瓦礫の中には単一のフェアリエが埋もれ、燃え広がる炎によって焼かれ続ける。・・・・はっきり言って、「フィリデイに役目はあるのだろうか・・・」・・・そう思いたくなるような光景が広がっていた。
「みんな、準備。」
ツミレの合図に、唖然として開きっぱなしだった口を閉じる。
業火に焼かれながらも・・・あるいは、その身に業火を宿したモノどもが、フェアリエの巣から溢れ出す。
「総員、構え。」
各部隊長らの合図が同時だったのか、「・・・ガチャリ」・・・と・・・・。地獄絵図さながらの状況と轟音が鳴り止まぬ中で、銃身を構えるその些細の音が、ハッキリと耳に届いた。
「60秒間の斉射用意・・・・撃て。」
部隊長の掲げられた手が振り下ろされ、果てまで並ぶ銃身に火が灯る。
業火を身に宿し、悪魔よりも悪魔よろしくをやっているモノどもに一切臆することなく・・・・己の芯、心、その身に宿した覚悟という名の火が、物理現象となって吹き上げ続ける。
第二作戦・第一段階。その開幕を告げる角笛が鳴らされたーーーー。
第二作戦は、巣から溢れたフェアリエの殲滅。
やることとしてはフェアリエ戦争の時と同じ。・・・第一段階として、銃砲でフェアリエの先頭を遅滞させ、第二段階として、あぶれたフェアリエをフィリデイが狩る。これの繰り返し。
とはいえ、ミサイルに粉砕され、瓦礫に押しつぶされ、炎に焼かれ、銃砲に貫かれ・・・・。まだ元気はあるけれど、それでも「瀕死と言って差し支えないじゃなかろうか」・・・・そんな状態のフェアリエばっかりな気がしなくもない・・・・。
「みんな!準備!」
ツミレの合図を受け、帯刀。
インシーニェから伸びる触手に手と腕が絡め取られ、一体化。・・・・決して離すことなく、離されることなく・・・・力の本流すらも繋がりを得て、ただ一振りの剣と成る。
胸の内側・・・心の奥底・・・・。深淵とでも呼びたくなる何処ともしれないソコが熱を帯びて、力が増幅するのを感じる。
・・・性欲を満たす為の快感とは違う・・・本当の意味での、快楽。
3大欲求は生きる為に必要な要素だけど、今感じてるこの快感は毒素でしかなく、どう考えても、性欲を満たすための快感でないと自覚できる。できるのに・・・抗えない。何度やっても抗えない。それでもーーーー。
嫌なほどの冷静さが、ここにはある。
世界はこんなにも静かで、こんなにも穏やかで、こんなにもゆったりと動いていたのか・・・と。
集中力が途切れるまでは、「決して死なない」と自負出来るだけの自信が湧いている。だってほら、こんなにもーーーー。
軽やかに、しなやかに、踊るように、清流のように・・・・。斬り伏せ、避け、打ち砕く。
目前に迫る悪魔を、熱すら気にならない心頭滅却の心とその映し身で、殲滅していく。
・・・・・ああ、晴れやかなり。
「前に出すぎだ!」
誰の声かは定かではないけれど、遠くから小さく聞こえた気がした。けれどーーーー。
「もう遅い」と私たちを嘲笑うかのように、悪寒が走る。
継続中の第一作戦・第一段階。その第何陣目かは知らないけど、断続的に発射していたミサイルが巣に直撃しようかとしたその瞬間、大地が揺れて世界が沈んだ。
・・・・蟻地獄。そう形容するのが一番合ってるだろう事態が起きた。
突然にして地盤が揺れた理由は定かではないけど、でもコンクリートの地面が流砂みたくヒビ割れ、足が嵌まり、瞬間的に身動きが取れなくなる。
そして続く轟音に合わせ、地面が大きく陥没した。
「やばいやばいやばいやばいヤバぁぁい!!!」
エリカの叫び声が一際大きく聴こえた後、部隊全体から悲鳴が上がる。
恐怖、驚愕、焦燥、絶望。
揺れて緩んで壊れて落ちてーーーー。
この状況を理解したものから順々に食われていく。燃え盛る炎に皮膚を焼かれながら、それでもなお突進してくるフェアリエ相手に。・・・いや、フェアリエに食われそうになったからこその状況理解。
ほんの一瞬にして、人生最大の絶望を、一人一人がゆっくりと味わっていく。そして無に帰されていく。
・・・・おっふ。終わったわ・・・。
「ダメッ!」
焦りと苦しみに呻く感情の叫び。・・・それは、近くにいたアサヒの声であり、出てこないでという願いであり、そして次に起こる光景を目にしたくないという拒絶の意でもあった。
だけど明らかに言葉足らず。そもそも声は轟音と悲鳴にかき消されて届くはずもなくーーーー。
目前にて尻餅をついた戦車から、首無し兵士が胴体を覗かせる。
「えッ・・・」
飛んできたそれの口は空いていた。だからこそそんな声が、聞こえたのかもしれない。
・・・馬鹿。なんで顔を覗かせるかな。中にいれば・・・・いや、どうだろ・・・。
戦車の中だろうと、フェアリエがハッチをこじ開けてしまえば・・・・。それ以前に、運悪く火の海に飲み込まれてしまった時点で、その戦車の中は蒸し焼状態。どっちみち逃げ道なんてあるのだろうかと・・・・。
そもそもこの状況下で理性が効かない・・・そんな人間が少なからずいた。それが一通り殺されてようやく、阿鼻叫喚の惨劇が収まった。
悲しいとか苦しいとか、そういうのは無い。そう決めつける。今はとにかく抑え込む。だって状況はまだ最悪だから。
・・・何とかしてこの状況を切り抜けないと!
「ダメ!登れない!」
「こっちも無理だ!」
ツミレの合図で脱出の確認を行っていたエリカとアサツジが告げる。・・・「この状況から逃げられない」・・・と。
広範囲の陥没によって、今、この場所には、ある種 闘技場と言って良いような戦場が作り出されていた。
歪な形をした大きな円を描く戦場。外縁部の壁は10メートル程の高さ。フィリデイであれば登れそうな高さではあるがしかし、粉々になった屑鉄やコンクリート、一部溶かされたそれらや瓦礫が、不安定で滑りやすく踏ん張りの効かない緩い地面を作り、フィリデイの脚力を奪う。そのせいで、逃げ出すことが許されない。
ならば・・・と、前を向く。
戦う以外の選択肢が無いのだから、やるしかないのだ。
想定外も想定外。最悪を軽く2回は塗り替えて、終わりとしか言えないような超絶望的状況下。
だけども心無しか、心は奮えている。そう感じる。
まったく・・・本当に、フィリデイの精神はどうなっているのやら。
今更になって、また少しの恐怖と不安が募った。・・・この状況でなく、フィリデイとしての精神性・・・それに関しての恐怖と不安が・・・・。
本当に、その時点でどうにかしているような気もしなくもない。いや、明らかに異常だと言うべきなのだろうか。
「陣形は!」
「その前に移動したい!」
「同意!ここ、ちょー足場悪い!」
「せめて硬い地面の上に!じゃないとまともに戦えない!」
「わかってる!けどどっちに行けば良いのかが!誰かわかんない?」
迫るフェアリエを軽くあしらいながらで会話を続ける数人。
・・・器用だな!
しかしこれができているのは、まだフェアリエの数が少ないから。・・・・今はまだ巣の端っこ。だからこそ疎らにしか攻めてこないけど、でも時間が経てばいずれ大所帯になって突進してくる。そうなる前に、移動は済ませておきたい。正面切って全力で戦える状況にしておきたい。
・・・そうだ。それさえできれば、少なからず勝機が沸くというもの。
・・・まさかこんな状態になっても、まだ勝てる見込みがあるなんて。
・・・やっぱフィリデイ最高!
ーーーーだった。やっぱりフィリデイは最高だった。だけどフェアリエはもっと最高だった。
『フェアリエの巣・駆除作戦』。それは最早機能していない。軍は一瞬で壊滅し、そしてどうして良いかわからず、ただ愚直に目の前の敵を排除し続ける私たちフィリデイ。
それでもまだ勝てると・・・・そんな淡い希望を胸に秘めて、私たちは・・・・。しかしやはり、無知で無力だった。
私達にとって最悪はまだ始まったばかりで、そして最悪の最悪の最悪の最悪を想定してなかった時点で、そもそも勝機なんてものは存在していなかったのだろうと・・・・その事実が今、告げられたような気がしたーーーーー。
「武器持ちって何の個体になるんだろ・・・。」
「・・・さっきの話?」
「そう。人の武器使って落とされたって・・・。武器使うってことは知能が高いってことでしょ?それって既存の個体のいずれかなのかな・・・。それとも新個体になるの?」
「さぁ?どうだろ・・・。・・・でも既存の個体に武器を扱えるだけの知能持ちは居なかったし、だとしたら・・・・」
「ちょっと怖いかも。」
「そう・・・だね。・・・レジーナもノビリスも武器は使ってなかった。その状況が変わったってことはつまり・・・」
「新しい個体が生まれたのかもしれないし、最悪ノビリスよりも強い可能性がある?」
「・・・・かもしれない。でもフェアリレーダーで観測した限りじゃーーーーー」
・・・・そんな個体はいなかったはず!なのにッッ!!!!!
「コトミちゃん!」
「・・・ぁッかはッ・・はぁ・・はぁ。」
できなかった息を吹き戻す。
視界が戻り、世界が色付く。全身の感覚が呼び覚まされる。
「コトミちゃん!!」
再度呼ぶ声に安心で応える。
「だい・・じょぶ。」
ショーコの支えを借り、上半身だけを起こす。
お腹周りが痛すぎて、下半身にはまだ力が入らない。
・・・寒気が・・・。
近くで火が火照っているというのに、全身が汗と冷や汗と脂汗にまみれて、急激に体温が奪われていく。
水分も足りていないのかもしれない。視界が揺れて霞んで、頭が少しふらふらして、手足が小刻みに震えて・・・痙攣を起こしていて・・・。
「どう・・なったの・・?」
「突然岩が飛んできて・・それがコトミちゃんを吹き飛ばして・・・。その後あの2体が・・・。」
目の前に見える2体。そいつらは明らかに異常な個体だった。
見ただけでわかってしまう。コイツらには絶対に勝てないと。・・・それくらい、恐い。・・・恐すぎる・・・・。
今はその2体を全員で何とかして抑えている。さらにその中から手の空いた数人が代わる代わる他のフェアリエを倒していく。そんな状況。
しかし直ぐにして耐えられなくなる。
「うぐッ・・・」
「カコッ!」
恐怖と激痛に顔を濡らすカコ。そして、殴り飛ばされた。
「ナシノッッ!!!」
リオナ叫びに、ハッとした表情で正面へ向き直るシノ。しかしその一瞬の隙を・・・飛ばされたカコを気にした為に生まれた一瞬の隙を突かれて、殴り飛ばされる。
これで私含め、3人目が戦線離脱。
そこからはもう、順々だった。・・・1人・・・また1人と戦線の離脱を余儀なくされ、そしてーーーー。
全員が吹き飛ばされて、久しぶりの苦痛を味わった。だけどみんなはまだ生きている。
切り裂かれたわけではなく、ただ殴り飛ばされただけだから、まだ生きてるはず。私みたいに・・・・。
その理由・・・殺せたのに殺さなかった理由は定かでないけど、でも事、今この瞬間に至っては・・・・。
とはいえ、終わりを告げられたかのような気分に嘘偽りはなく、このままでは・・・・。
・・・あっ・・・死んだかも・・・・。
そう悟った。目の前に迫る”ソレ”の手によって。
ただし、殺意とかいうのはイマイチ感じられない。
「・・・なに・・が・・」
震える体。震える声。
奮わせていたはずの心は、既に恐怖に染め上げられていて・・・・。
私の目の前に、”ソレ”が立つ。
”ソレ”額が、私の瞳に近づく。
「近寄るなッ!!」
”ソレ”の頭が横にブレる。
怒りの声を上げ拳を振り抜いたのは、ショーコだった。
このタイミングになったのはきっと、情報処理が遅れたから。
未知の敵。そして勝てないという意識を植え付けてくる敵に対して、戦うべきか、戦わないべきか。どう戦えばいいのか、どう逃げればいいのか。
けれど唐突に私の目の前へと迫ったそれに対して抱いたのは、純粋な怒り。
心の底から想い、且つ、利己的で感情的な本人の心が、ショーコの体を無意識に動かした。その結果が、”ソレ”を殴りつけるという行動。でもーーーー。
「ショーコちゃんッ!!」
へ゛キ゛ャ゛ッッ!!・・・という鈍い音と共に、 目前からショーコの姿が消えた。
・・・助けに行かないと・・・。
痛む体に力を入れて、のっそりと動きだす。
しかし”ソレ”が私の胴体を掴み、そして持ち上げ・・・。
更なる恐怖・・・人生における一番の恐怖・・・所謂トラウマって奴が、呼び起された。
「いやぁッ!!はなしてッッ!!!」
心が叫ぶ。嫌だと連呼する声が聞こえる。
私はパニックになって、ただ暴れていた。
どうにかして逃げないといけないのに、必死こいて無意味で無計画な足掻きを繰り返していた。その、次の瞬間ーーーー。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!」
血まみれでグチャグチャのショーコが飛んできた。そして、”それ”の腕を切り落として私を救う。
地面に落ちた私は、直ぐに抱き着いた。馬鹿な真似をした。でも無意識が勝手に・・・・。
一歩間違えば殺されていた。それでいいとも思わなくもないけど・・・。
「死んじゃえクソ野郎。コトミちゃんは私のなんだよ。」
中指を立て、口角を上げ、ガンッ・・と睨んで・・・・。
最高にカッコよかった・・・気がする。
助けられて抱き着いて抱き締められて・・・・。
ふわふわと、意識が飛んでいく。でも、凄く心地よかった。
けれど状況は改善虚しく・・・・。
ガッ・・・と勢いよく持ち上げられたかと思うと、そのまま2人一緒に風を切る。
今度は2人一緒両手で抱き上げられたらしい。
そして”ソレ”はそのまま走る。風を切って走り続ける。2人を、その触手のような腕で絡め縛り抱きしめながら・・・・。
「やば・・ごめん。力入んない・・・。」
「ん・・・。」
「死んじゃうのかな。」
そう、少し悲しそうに呟くショーコを胸に引き寄せ・・・。
せめて最後までは・・・。
覚悟はできた。
私は私を取り戻した。
「今度は、私の番。」
そう言って、今度は私が刀を振りぬく。動き難かったけど、できなくもない動作で、私たちを掴むその腕を、”ソレ”の胴体から切り離す。そして勢いに乗せて・・・・。
「このままその首!切り落としてやらぁ!!」
落ちながらも全力で、振りぬいてやった。
「・・・あはは・・・・。」
振りぬいた刀は、しかし断ち切るに至らず。
「・・・・ああ・・・。」どうしようか・・・。
気がつけば、インシーニェを握っていたはずの右手が、失くなっていた。
どうにかして回収しないと。じゃなきゃ戦えない。それにショーコちゃん、助けて・・・逃げて・・・。
「・・・あっ・・・。」
巡る思考を置き去りにして、迫る”ソレ”の爪を前に、死を受け入れてしまった。
「ッッ!!ばか!!誰が諦めるかぁぁぁぁ!!!!!」




