護衛屋
飢えては――いなかった。
渇いても――いなかった。
ストリートチルドレンとしては非常に珍しいことなのだと、後になって知った。
それでもストリートチルドレンであることには変わらない。
だから小さなソウスケの瞳には何時だって光が無かった。
雪の様に白い肌。
さら、と流れる癖の無い黒髪。
幼さ故の性の曖昧さの中に見せる艶。
――見た目が良い。
それだけでソウスケは飢えることも、渇くことも無かった。
それでも世界のルールは絶対だ。
金がないなら死んだ方が良い。
それが世界の定めた絶対のルールである以上、見た目が良い程度で金の無いソウスケがただ飢えず、渇かずにいることを許すはずがない。
男に犯される。
女に犯される。
それが小さなソウスケの毎日だった。
気が付いた時にはそうだった。
だからきっと明日もそうで、明後日もそうで、ずっとそうなのだと思っていた。
ある日、そんな当たり前が崩れた。
いつもの様に買われ、いつもとは少し違い上層のマンションに連れ込まれ、それでもいつもの様に犯されそうになった時――
「まぁ、随分と楽しそうですのね、叔父様?」
いつもとは違って、そんな声が差し込まれた。
声の主はソウスケと同じくらいの小さな女の子。
それでもソウスケの光の無い瞳とは異なり、爛々と力強い青い瞳を持った女の子。
彼女はその眼と同じくらい強い声でソウスケに跨る男に声を張り――
――ではやっちゃってくださいませ。
ぱちん、と開いていた扇子を閉じた。
それで魔法の様にソウスケの世界が変わった。
その女の子の影から文字通りに滲み出た護衛屋。お嬢様のわがままに付き合わされた先代により男は腕を斬り飛ばされて、捉えられ、ソウスケは気が付けば彼女の家が出資する孤児院に居た。
そうしてソウスケは“下”から抜け出すことになった。
“上”での暮らしは信じられないことばかりだった。
ソウスケは“子供”であり、保護される対象であり、学ぶことが許されていた。
――どうしてここまでしてくれるのだろう?
そう思ったソウスケはクリスマス会のゲストとして来た彼女にそんなことを訪ねてみた。
「残念ですが――わたくし、あなたを助けたわけではないんですの」
「? そうなの?」
「えぇ、ただ叔父様の持ってる権力が欲しかっただけなんですの。結果的に助けた――様に見えるだけですわ」
「でも。だったら――」
どうして孤児院に入れてくれたの?
そんな疑問。だってその言葉が本当なら、ここまでしてくれる必要はないはずだ。
だって世界が定めた絶対のルールは『金が無いのなら死んだ方が良い』なのだ。
だから金の無いソウスケは、下層の孤児であるソウスケは死んだ方が良い。
現にこの孤児院の他の出資者の子供はソウスケ達をまるでゴミの様な目で見て、そう言う接し方をしてくる。その方が自然なのだ。なのに。なのに彼女は――
「……恥ずかしい話ですけど、わたくしも前はそうでした」
でも――
「わたくしの好きな男の子、下層の出身なんですの」
そう言って彼女は恥ずかしそうに笑った。
花の様な笑顔だった。
太陽の様な笑顔だった。
だから小さなソウスケは彼女を守りたいと思って――
「……」
今、雨上がりの木漏れ日の中、彼女が、そっ、と白黒頭の少年を抱きしめるのを見ていた。
浮かぶ笑顔は優し気で。
花の様で、太陽の様で――
奏介には決して向られることのない、恋する少女のモノだった。
久しぶりの投稿だけど短い……
だってここからこまひー視点に移るのはちょっとぅー
まぁ、明日も上げるから許してね!
八月中にこの章完結に持ってかないとまた凄い間が空くからがむばるよ!
え?何でかって?
それはね――九月三十日に『ジャンクバード』が発売するからあっちの更新しないといけないからだよ!!
もう色々言って良い――って言うか、発表されてるけど、イラストレーターはしずまよしのり先生だよ!
って言うかもう表紙公開されてます。
https://x.com/gcnovels/status/2082058498041606185
で見れます。
マジでかっこいいので見て下さい!!
はい。
そういうわけです。




