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私の中のひとしずく  作者: くろくまくん


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孫と行く海水浴場

私 59歳

明美 35歳

ヒロキ 10歳

アヤ 7歳

「ばぁば〜! こっちだよ〜、早く来てきて〜!」


 天気の良い夏の日。ここは兵庫県の日本海側の海水浴場だ。


「はいはい、わぁ、波がきてるね〜! 触ってみいよ〜」


 ばぁばと言われるのにまだちょっぴり抵抗はあるものの、孫に懐かれるのは悪くない。


 ちなみに孫は二人だ。上は十歳の男の子、下は七歳の女の子。


「アヤ! あっちまで競争や! 俺の方が速いで〜」


「お兄ちゃん待ってよ〜!」


 砂浜を走り回って遊んでいる。私が小さい頃もこんなに元気良かったんだろうか。


 もう半世紀も前のことになると、なんだか記憶も朧げである。


 娘の明美あけみが家を出ていったのが十年以上も前のことだった。結局家を出ていってから数年後に泣きながら帰って来て。


 あの子は私に似て気が強いところがあるから、男の人には誤解されることが多いんだと思う。それに素直に気持ちを伝えることができないところも一緒。


 でも、職場の繫がりで知り合った人と上手くいって。それから結婚までも早かった。


 上のヒロキが生まれてから、下のアヤが生まれる間に、一度浮気問題で危なくなったことはあったものの、私が間に入って二人を説得して。


 一時の感情だけで離れてしまって、あとで後悔することのないように、お互いが思ってることやわだかまりをちゃんと話すように言い聞かせて、事無きを得た。


 あの時にこうしていたら、って後悔することは誰にだってある。


 でも、過去に戻ってやり直すことはできない。


 だから、その時にできる、思いつく限りのことをすればいいかなと思う。


 それだけしても、やはり後悔することはあるはずだから。


「ごめ〜ん、遅くなって。車停めるのが手間取ったわ」


 遠くからアケミが手を振っている。


「うんうん、ええよ。砂浜で二人、走り回っとるわ」


 アケミの旦那さんは今日は仕事なので、私とアケミと孫二人の四人で海水浴に来たのだ。


「それにしてもあっついね〜! 干からびそうやわ」


「ほんまやね、でも小さい頃はなるべく外に出て、たくさん空気を吸って、たくさんお日様を浴びて、自然と触れ合って過ごしたほうがええよ。大人になったらあまりできなくなるからね〜」


 住んでいる環境にもよるけども。


「まぁそうやけど。でも、一日は無理やわ〜。お昼くらいには切り上げて帰りにいつものランチバイキングに行こうや〜。私、あそこの手作りハンバーグが好きなんよ」


 アケミは小さい頃からバイキングが好きだった。


 色々な料理を好きなだけとれるのもあるし、お皿に綺麗に盛り付けるのも楽しみの一つだったようだ。


「あーちゃん、ちっちゃい頃から好きやったもんね、バイキング」


「母さん、それ何歳の時の話よ〜」


 いつの頃だろう? もう二十年以上前のことかな。


「ばぁば〜! 見てみて〜! 俺めっちゃ走るの速いやろ〜! ほらほら〜!」


 ヒロキが遠くから叫んでいる。


「母さん……」


 アケミが急に真顔で話しかけてくる。


「ん? どうしたんあーちゃん」


 私はヒロキとアヤに手を振って応えながら聞く。


「いつも、ありがとう」



——ぽとり



——ぽとり



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