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第9話 僕のローズ

港町リーズン。

ジェーンおばさんが、言った。

「ローズ。そばに、いてくれるだけでいいよ」

「うん」

うなづく。

ジェーンおばさんは、優しい。

「でもね。女の娘は、いつかね。男の子を一番好きになるんだよ」

「好き?」

男の子を好きになる。

いいや、一番好きなのは、おじさんとおばさん。

「私は男の子を一番好きにならない」

そう思う。

「好きになると思うぞ」

ジェフおじさんが、言った。

それは、ジェーンおばさんが、ジェフおじさんを一番好きだからだという。

女の娘は、男の子を一番好きになるのだ。

「一番好きになって、一緒に暮らして、やがてな」

「女の娘と男の子は、幸せになるんだよ」

何も変わらない毎日。

刺激的な毎日。

どんな毎日でも、女の娘は男の子を好きになる。

「好きにならない」

ローズは、否定した。

だって、好きになるような男の子なんていない。


第9話 僕のローズ


魔法の薬屋マクスウェル。

警備兵隊の兵士が、入ってきた。

「僕が、主人のミントです」

「ああ。キミか」

兵士は、つい先ほど、高利貸しのワールがつかまったことを伝える。

アジトにしている家もわかったが、高利貸しワールは犯罪を認めていないらしい。

植物精霊保護権の違反については、確実に行われているらしいとわかった。

港町リーズンに、ローズの保護権を持っていた夫婦がいる。

その夫婦から、ローズの捜索を頼まれている。

つまり、ローズは、夫婦の元に帰すということ。

「保護権譲渡は、不正で商人オークションにかけられていたんですね」

「…」

難しい話。

でも、兵士は、おじさんとおばさんが、ローズを探しているのだという。

帰ってきてほしいのだという。

おじさんとおばさん。すぐ会いたい。

「ミント」

話しかける。

「どうしました。ローズ」

「おじさんとおばさんのところに帰りたい」

「…ですよね」

ミントは、うつむいてしまう。

この娘は、ローズは、夫婦の元に返すべきだ。

有名な商人オークションで、不正に植物精霊保護権譲渡を、売り買いするなんて思っていなかった。

ローズの保護権を持っていると思っていた。

ローズとずっと暮らしていけると思っていた。

「僕のローズ」

「…」

ミントが、悲しい顔をしている。

「お別れですね」

「何で」

わからない。ミントも一緒に帰ればいい。

おじさんとおばさんの住む場所へ。

ローズは、ミントと婚約している。もう、一緒に暮らすことが決まっている。

何でもまかせるつもりだ。ラクをさせてほしい。

「僕は、ウッドブルグの住人です。魔法の薬屋もあります」

「一緒に帰る」

ミントも帰る。おじさんとおばさんのところへ。

「帰れませんよ」

「何で」

わからない。頑固なミント。

「ローズ…」

だきっ。

抱きしめる。

「僕のローズ。少し離れた場所ですけど。心は、いつも一緒ですよ」

「…」

ミントが、強く抱きしめてくる。

何で、悲しい顔をしているのだろう。

一緒にいようと思っている。

ああ、そうか。

言葉にしていないから、伝わっていないんだ。

ミント。ローズは、ね。


数刻後。

「ローズか」

「ローズ」

おじさんとおばさんが、薬屋にやってきた。

港町リーズンから、はるばるきてくれたのだ。

その後ろには、ライムとリーフがいる。

「悲しいかい。ミントくん」

ギュッ。

ライムが、毎回のようにミントに抱きつく。

近くで見るミントは、泣いていた。

「泣いてるね。ミントくん」

「…な、泣きますよ!やっと見つけた婚約者なんですよ!」

泣きながら大声になるミントの頭を、ライムが優しくなでてあげる。

「お別れじゃない。これから、はじまるんだ」

ライムにしては、真面目な顔で言う。

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