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第8話 高利貸しワール

魔法の薬屋マクスウェル。

翌日。早朝。

朝食は、リンゴと水。

ダイニングテーブルを向かい合って座る。

食事をすます。

「今日は、中央庭園に用事があるので出かけます」

「…」

何も言わない。

お留守番を頼むミント。ジッと見る。

「植物栄養剤のことで長話になるので、ローズは、お留守番していてください」

「わかった」

植物栄養剤。わからない。

難しい話を聞くより、お留守番の方がいい。

何度かうなづく。


「お土産に、マスカットを買ってきますから、楽しみにしていてくださいね」

「マスカット、食べたい」

喜ぶ。

マスカットは美味しい。食べたい。

「じゃあ、行ってきます」

フードをかぶったミントは、外出した。


第8話 高利貸しワール


お留守番をミントにまかされた。

「…」

お店のカウンターで、店番をする。

誰もこない。

ローズは、自分のメイド服を見つめる。

フリルが、たくさんついていて、可愛い。


「とても可愛いです」


ミントの言葉を思い出す。

何だろうか。思い出していた。


カランコロン。

お客さんだろうか。

突然に、警備兵隊の兵士が入ってきた。

「キミが、ローズか」

「私は、ローズ」

答える。お客さんじゃない。

「悪徳商法を、悪いことを取り締まっているところだ」

「…」

悪いこと。

「キミは、高利貸しのワールを知っているはず」

「…」

考える。思い出す。

おぼろげに、暗闇の道を思い出した。

おじさんとおばさんの元から、連れられた。

おじさんに五十万ゴールドを要求した。

黒服の高利貸しワール。

知っている。

「ワールを、悪徳商法の罪で追っている」

「…」

高利貸しワールを追っている。

あの黒服の男の人。

ニヤリと笑う顔。気持ち悪くなる。

思い出したくない。

「商人オークション会場に、不正に得た植物精霊保護権を売ったことが判明した」

植物王国では、植物精霊保護権を譲渡するのが合法である。

植物精霊を売り買いしていいのだ。

その保護権を商人オークションで売ることも、買うことも、罪ではない。

問題は、保護権を不正に手に入れることだ。

高利貸しワールは、港町リーズンに住む。

港町リーズンでは、一つの家庭に一人精霊の保護権がある。

これを、複数持っていたのがワールだ。

「難しい話、わからない」

混乱しそう。頭が痛い。

「だよな。ごめんよ。このお店の主人を呼んでくれないか」

「出かけてる」

ミントが、帰る頃に出直す。

警備兵隊の兵士は、店を出た。


何人かのお客さんに魔法の茶葉を売った頃。ミントが帰ってきた。

お客さんには、魔法の茶葉が、よく売れる。

「マスカット買ってきましたよ」

そのまま、昼食にする。


昼食。

マスカットと水。

「美味しい」

もぐもぐ。もぐもぐ。

マスカットを食べる手が止まらない。

「そんなに好物だったんですね」

「…」

マスカットは美味しい。

でも、話すことがあるのだ。


「高利貸しワールですか」

「嫌いな人」

一番嫌いな人。

とにかく、悪いことをして、警備兵隊に追われている。

「もしかして、ローズの保護権は、不正に得られたものなんですか」

「…」

わからない。でも、ミントが困った顔をしている。

ミントが、考えたくなかったこと。

ローズの植物精霊保護権が、合法であってほしかったこと。

初対面で気に入った。

大好きになった可愛い一輪のバラ精霊の女の娘。

ローズ。愛しいローズ。

こんなに素直に結婚したいって思うのは、キッカケは占星術の占い。

だけど、今は。

もうこの娘しかいないと思っている。

お別れなんて、絶対に嫌だ。考えたくなかった。

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