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第10話 ローズの結婚

ウッドブルグの街。中央交番。

「何もしていない。何かしたかもしれない」

高利貸しワールは、黒服に黒い手袋の怪しい人物。

「どっちなんだ」

「どっちもない。どっちもある。キミが思う通りかもしれない」

「どっちなんだ!」

警備兵士が、立ち上がる。

ひょうひょうとした男に振りまわされている。

男は、全く警備兵士を恐れる様子はない。

もてあそんで、笑っている。

「何がおかしいんだ」

「いや。女の娘を一人、幸せにしてしまったことで、良い人になってしまったことが笑える」

おろかな夫婦から、一輪のバラ少女の保護権を奪った。

不正に手にした、保護権を商人オークションで売った。

「良いおこないだと、思うかい」

「思わんよ。犯罪者め」

「そう。良いおこないじゃあ、ない」

何故、悪いおこないから、女の娘は幸せになるのか。

「世の中を悪いヤツばかりだと思うな。女の娘が、幸せになるように、世界が、良い大人がいる」

「そうなのかい」

「そうなんだよ。お前は、反省しろ」

「はいはい」

高利貸しワールは、肩をすくめた。

いい人間は、連鎖を起こすのだろう。共鳴したのだ。

笑える。


第10話 ローズの結婚


中央庭園。教会。早朝。

神父が聞く。

「いついかなる時も相手を愛することを誓いますか」

「誓います」

「…」

ミントは、すぐ誓うのだが、ローズは黙り込む。

「…僕じゃ、駄目ですか。頼りないですか」

「…」

確かに、ミントは頼りない。顔なんて泣きそうだ。

「やっぱり、帰りますか」

「帰らない」

帰るつもりはない。そう決めた。

「愛は、わからない」

正直に言う。愛なんて、まだはやい。

「愛してほしいです」

「…」

わからない。

ただ、ミントの困った顔は嫌いじゃない。

だから、しょうがない。

「私、誓う。愛すること」

答えをいそぐ。男の子。ミント。

まだ、完全にわからないけど。誓うのだ。

一緒にいたいから。


宿屋。

ジェフおじさんとジェーンおばさんが滞在している。

「結婚したんだな。ローズ」

「おめでとう。ローズ」

二人は、祝福してくれた。

「ミントが泣くから、結婚してあげたの」

答える。嘘じゃない。

おじさんとおばさんは、二人でローズの肩を抱く。

いそぐ必要はない。ゆっくり決めなさい。

優しく、語りかける二人。

愛なんて、決まったものじゃない。それぞれの形がある。

激しい恋なんて、望まなくていい。

ゆっくり、好きな人と歩きなさい。


魔法の薬屋マクスウェル。

二階。角部屋。

ローズは、メイド服に着替える。

ゆっくりと着替えた。

「水が飲みたい」

メイド服姿で、階段を降りる。

調合部屋に、人が、倒れている。

ミントだ。

眠っている様子。二度寝だ。

教会の予約が早朝だったので、眠くなったのだろう。

自分の部屋で眠ればいいのに。

「水が飲みたい…」

そう言うと。

ガバッ。

すぐに、起き上がる。


「お水をどうぞ。飲んでください」

薄紫色の目隠し髪のミントは、コップに水をそそぐ。

その後、ジッとローズを見つめる。

「帰らなくていいんですか」

「帰らないって決めた」

そう、決めた。ラクがしたい。

ミントが、何でもしてくれる。まかせられる。

「いいんですか」

「大丈夫」

言おう。ローズは決める。

「聞いて」

「何ですか」

鈍感な男の子へ。

「私、ミントが好き」

女の娘は、考えている。

一輪のバラ精霊のローズ。好きな人ができた。

名前は、ミント。真面目な魔法使い。

ゆっくり心を動かしてくれる。

優しい人。


この優しい人と、これから、恋をはじめる。

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