第4話 一つ屋根の下
魔法の薬屋マクスウェル。二階の角部屋。
ゆっくりと、目を閉じる。すぐ目を開ける。
再び、目を閉じる。でも目を開ける。
眠れない。
落ち着かない。
でも、いつの間にか、眠っていた。
早朝。起きた。階段を降りる。
大きなツボのある部屋で、知らない人が倒れている。
いや、名前を知っている。
ミント・マクスウェル。20歳。
この魔法の薬屋の主人で、ローズの婚約者。
何でも勝手に決めている男の子。
「あなたは、床で寝れるの」
聞く。
応えが返ってこない。
息はしている。深く眠っているだけだ。
水が飲みたいローズは、台所で探す。
「水が飲みたい」
ガバッ。
何かが素早く起きる音がした。
ミントが、起きたのだ。
ダイニングテーブルをはさんで、二人で座る。
「水です。飲んでいいですよ」
コップに注いだ天然水をくれる。
天然水を大量に発注して、飲み水としているらしい。
第4話 一つ屋根の下
「何で、はやく起こしてくれないんですか」
「…」
声は、かけた。
勝手に婚約を決める人なんて知らない。
「夜中まで、魔法薬の研究をしてました。途中で、そのまま寝むってしまいました」
「私、眠れなかった」
「そうですか」
「二階は、角部屋だけ?」
聞く。この家の構造を知らない。
「そうです。僕の部屋は、一階ですから」
ミントは、研究ばかりして、自分の部屋で眠ることが少ないのだという。
研究は、植物栄養剤を、どうすれば効率よく作れるか。
ウッドブルグの街の中央庭園では、恒久的、薬草作りが進められている。
それを、街の魔法使いであるミントは協力している。
「僕は、いそがしいので、ローズ自身で、この店の構造をおぼえておいてください」
魔法の薬屋の簡単な構造。
一階。
お店の商品棚。会計のカウンター。
調合部屋。ミントの部屋。台所。食事部屋。
二階。
ローズの住む角部屋。
「二階は、せまいくないですか」
「大丈夫」
せまくはない。広くもない。
おじさんとおばさんの家もあまり広くはない。
「僕、失礼はないでしょうか」
「…」
「女の娘と付き合ったこともないです。一緒に暮らすなんて、全然はじめてです」
「私、おじさんとおばさんとしか、暮らしたことない」
正直に言う。
ずっと、おじさんとおばさんと暮らしてきた。
家に帰りたいのは、考えてくれないのか。
「家族とだけって、ことですよね。僕にも、叔父さんがいます」
「叔父さん」
「ステラ叔父さんです。この店の持ち主で、今、二号店で精神治療薬の研究をしています」
「精神…何」
「精神治療薬です。精神を元気にする薬」
「…」
わからない。いきなり、難しい話。
「会いに行きましょうか」
目隠し髪の奥で見つめてくる。
顔は、カッコいい男の子。勝手な男の子。
ミントは、ローズのことを紹介するため、二号店へ一緒に行くという。強制連行だ。
魔法の薬屋マクスウェル二号店。
店の前で、精霊女性が集まっていた。
「ステラさま〜ん」
「結婚して〜」
「結婚してないでしょーん」
何か、色っぽい女性精霊たちである。
「うるせえ!俺は、離婚した男なんだぜ。惚れるんじゃねえよ。ドリアード共が!」
濃い紫色のボサボサ髪の男が、女性精霊たちを足蹴にしている。
「遊びたいんでしょう〜ん」
「黙れ!」
バケツで水をまきはじめたので、精霊女性たちは、退散していく。
「あの、お久しぶりです。ステラ叔父さん」
「は!ミントか!」
ボサボサ髪のステラ叔父さんは、ミントの口をふさぐ。
「お前、絶対言うなよ。絶対に黙れよ」
「言いませんから」
「何だ。女の娘なんか連れて、めずらしいな」
ローズは、見られる。何、この人。
「この娘のことを…」
「いい。店の中で話そうじゃねえか」
ステラ叔父さんに連れられて、店内に入る。




