虚空の英雄
前回、空間が裂け、ミヤが現れた。
しかし——彼女はもはやかつてのミヤではなかった。
その瞳は冷たく、心は虚ろだった。
彼女はただ一言、こう問いかける——
「……ミカはどこだ?」
それは、数時間前からずっと彼女の頭の中にあった問いだった。
その問いは——「ミカはどこだ?」——彼女が実際に口にするずっと前から、頭の中で何度も響いていた。
数時間前——すべてが起こる前に——
ミヤはまだマミーナと互角に渡り合っていた。しかし、徐々に彼女は戦いの主導権を握り始めていた。
「おやおや、英雄様が本気を出し始めたのかい?!」マミーナは大きく笑いながら、一振りの斬撃を後方への跳躍でかわした。「それなら、喜んで相手をしてやろう!」
しかし、彼女が周囲の状況を確認しようとしたその時——ミヤはすでに彼女の視界から消えていた。
「お前は口が過ぎる。」
その声は彼女のすぐ横で聞こえた。次の瞬間、ミヤの足がマミーナの腹部に全力で叩き込まれた。マミーナは吹き飛ばされ、その体は暗黒の深淵の空気を裂いて飛んだ——しかし、体勢を立て直す間もなく、ミヤが再び襲いかかった。剣を抜き、全力の速度で追撃する。
キン!
マミーナは間一髪でその斬撃を受け止めた。衝撃は彼女の腕を震え上がらせるほど強烈だった。
「ワァオ、本っ当に強くなったねぇ!」彼女は叫んだ。その声にはまだあの奇妙な高揚感が満ちていた——まるで痛みや危険が何の恐怖も引き起こさないかのように。
戦いはさらに激しさを増した——斬撃、蹴り、エネルギー弾の爆発が虚無の中で衝突し、周囲に浮かぶあらゆるものを粉々に砕いていった。
「ミコウト……アイスプリズン。」
ミヤの動きが一瞬で止まった。彼女の全身は、虚空中から現れた氷に完全に閉じ込められた——冷たく、硬く、一瞬で全ての筋肉を凍結させる。
「ミコウト……スターグレイザー。」
光の弾が一直線に彼女へと放たれた。
しかし、それが届く前に、ミヤの手が氷を突き破った。残された魔力で薄いバリアを形成し——体がまだ半分閉じ込められたままでも、その攻撃をかわすには十分だった。
間髪入れず、マミーナは全力で突撃した。瞬時にミヤの目前に現れ、魔力を込めた拳を彼女の顔面に叩き込む。
ドゥアッ!
ミヤは吹き飛ばされ、彼女を閉じ込めていた氷は粉々に砕け散った。彼女は空中で回転しながら体勢を立て直し、口元から血が一筋伝う。
彼女は止まらなかった。足が浮遊する岩片に着地するや否や、すぐさま反撃に転じた。剣を斜めに振りかざし、マミーナに完全な防御を強いる。
ガキン! ガキン! ガキン!
金属とエネルギーがぶつかり合う音が響き渡る。その速度は増すばかりで、どちらが攻撃でどちらが防御か、もはや区別もつかない。ミヤの剣がマミーナのエネルギーシールドに触れるたび、緑と黒の火花が散り、周囲の空気を焼き焦がした。
マミーナはミヤの脇腹に一撃を叩き込んだ——吐血させるほどの威力で——しかしミヤもほぼ同時に反撃し、その肘がマミーナの顎を同じ威力で打ち抜いた。
両者ともよろめいた。両者とも一瞬で立ち直った——まるで痛みなどただの小さな妨害に過ぎないかのように。
「どうして黙ってるんだ?」マミーナは微笑んだ。彼女自身の口元からも血が滴っている——先ほどまでのミヤの斬撃の名残だ。「ミカはきっと、今のお前を見て誇りに思うだろうな。」
ミヤは答えない。その顎は固く閉ざされ、半分が緑に変わった瞳は鋭くマミーナを睨みつけている。
「それとも——」マミーナは別の攻撃を放つ。ミヤは最小限の動きでかわす。「——もう死んでるのか? それでお前は死体のために戦ってるのか?」
「黙れ!」
ミヤは猛然と突撃した。剣を怒りに満ちた一振りで振るうが、マミーナは容易く避け、小さく笑った。
「おやおや、敏感だねぇ〜」彼女は続ける。わざと声のトーンを上げて、より嘲るように。「それともまさか……彼はもう降参したのか? 俺が苦しめるのをやめるために、全ての力を教えたのか?」
その一言一言が、マミーナが物理的に放つどんな斬撃よりも深く突き刺さった。ミヤは攻撃を重ねる。何度も何度も。その動きは次第に形を失い、もはや制御できない感情に満たされていく。
「知ってるか、」マミーナは続ける。斬撃を次々とかわしながら、その動きはますます優雅に、まるで危険な状況で話し続けることを楽しんでいるかのように。「俺はもうたくさんの彼の技を見てきた。たくさんの彼の動きを。お前は、彼がそれを全部喜んで教えたと思ってるのか?」
ミヤの脳裏にイメージが浮かんだ——稽古のたびに疲れた笑顔を見せるミカ。いつも軽口の裏に傷を隠すミカ。あのポータルが現れた時、ただ消えていったミカ。
もし彼が本当に拷問されて、全ての力を示すことを強いられたのなら……
もし彼が一人で、苦しみながら、誰も助けられずにいるのなら……
「黙れえええ!」
ミヤの内側で何かが砕けた。
聞こえる砕け音ではない。見える砕け方でもない。しかし、確かに感じる砕け方だった——理性の最後の砦がゆっくりと崩れ落ち、一つの煉瓦がまた一つ、そして最後の一つが落ち、残されたのは、ただ一つの衝動で満たされた虚無だけだった。
彼女の髪の緑がさらに広がり、まだ残っていた元の色の部分をも飲み込んでいく。彼女は一度まばたきした——そして目を開けた時、その瞳にはもはや燃え盛る怒りの輝きはなかった。ただ冷たく、平坦な虚無だけが広がっていた。まるで、もはや波立つことのない凍てついた湖の表面のように。
彼女は攻撃した。
もはや叫び声も、罵声もない。ただ斬撃を重ねる。速く、残忍に、読むことのできないパターンで——なぜならミヤ自身ももはや考えてはいなかったから。彼女はただ動いていた。戦略よりもはるかに根源的な何かに駆り立てられて。単なる怒りよりもはるかに深い何かに。
マミーナは、その攻撃の雨の中で、かつて感じたことのない何かを感じていた。
これは……何だ?
彼女は避け、受け流し、反撃する——しかし、その動きはどれも次第に重くなり、次第に遅れていく。一つの斬撃が彼女の肩を裂いた。もう一つが太ももをかすめた。新しい傷が、自然治癒で対処できるよりも速いペースで増えていく。
全力を出しても、彼女とミヤの距離は縮まらない。むしろ広がっていく。
まさか。全力を出しても……追いつけないのか?
冷や汗が彼女の額を濡らした。彼女は必死にそれを隠そうとした——作り笑いの裏に、忍び寄る恐怖を覆い隠そうとして。
ミヤは攻撃を止めない。休む間も与えず——息をつく暇も、考える暇もなく——疲れを知らない嵐のように、容赦ない連続攻撃を浴びせ続ける。
ついに、マミーナは遊びをやめることにした。
彼女は大きく後方に跳び、距離を取った。先ほどまで高揚に輝いていた目は、今や鋭く、真剣に変わっている。
「……いいだろう。」彼女は呟いた。その声からは、先ほどの嘲るような調子は消えていた。「どうやら他人のスタイルを借りるのは、もう終わりにしなきゃいけないようだ。」
暗い光が彼女の周囲に集まり始めた——もはやミカの青白い光の模倣ではなく、周囲の光を吸収する漆黒の色。まるで空間そのものが虚無に飲み込まれていくかのように。
「強欲の権能。 」彼女は言った。その目はもはや隠そうとしない渇望で輝いている。「本来あるべきものを奪う時だ。」
彼女は前進した。今度は武器で攻撃するのではなく、その手をミヤに向かって差し伸べた——殴るためではなく、掴むために。
奪うために。
その手は一瞬、ミヤの肩に触れた。そしてマミーナは感じた——彼女の中に流れ込む力の奔流を。それほどまでに巨大で、純粋で、彼女がかつて奪った何よりもはるかに大きな力を。
一瞬、彼女は勝利の笑みを浮かべた。
しかし、その笑みは悲鳴に変わった。
「グッ——!」
血が彼女の口から噴き出した。物理的な傷ではない——斬撃も打撃もない。それは内側から来るものだった。彼女自身の体が拒絶し、もがき、呑み込もうとした負荷によって内側から崩壊していく感覚。
ミヤの力は大きすぎた。純粋すぎた。彼女自身の権能が収容できる限界をはるかに超えていた。
強欲の権能は、自分よりはるかに強い者から奪うようには設計されていない。無理に奪えば——
信じられないほどの痛みが彼女の全身を駆け巡った。まるで体内のすべての細胞が同時に抗議の叫びを上げるかのように。マミーナはよろめき、その体は激しく震え、内側からの苦痛に意識が遠のきかけた。
残された制御力で、彼女は奪ったばかりの力を吐き出した——内側から殺される前に、強制的に放出した。
エネルギーが彼女の体から噴出し、周囲の瓦礫を吹き飛ばし、何もない空間に巨大なクレーターを生み出した。
ミヤはただ立っていた。無表情で、その光景を見つめていた。その虚ろな瞳は慈悲も、満足も示さない。ただ一つのことに満たされた虚無だけがあった——彼女の前に立ちはだかるものを完全に破壊するという、ただ一つの衝動。
マミーナは膝をついた。息は荒く、血はまだ口元から流れている。戦いが始まって以来初めて、本物の恐怖——もはや作り物の高揚感ではなく——が彼女の目に明確に浮かんでいた。
くそっ……くそっ、くそっ、くそっ。
直接彼女の力を奪えないなら……
彼女は震える体で再び立ち上がった。そして、青白い光が再び彼女の手を包み始める——今度はより濃く、より安定して。かつてない深層から引き出しているかのように。
「それなら、」彼女は呟いた。その声は掠れているが、無理に作り上げた決意に満ちている。「もっと多くを借りるまでだ。」
彼女の黒い髪の先端が白くなり始める。彼女の目は、彼女自身の顔には似つかわしくない青い光を放っていた——彼女のものではない色。彼女が見たすべての動きの記憶から盗んだ色。
「ミコウト……空間を裂く剣の進化。」
その変身は、ミヤがミカ自身から見たものとまったく同じだった——白髪、青い瞳、その中心に浮かぶ月の紋章。しかし、以前と同様、そこには不完全さがあった——月の紋章に走る微かな亀裂、わずかにくすんだ光。まるで彼女が、本来彼女のものではない何かの仮面をかぶっているかのように。
しかし、彼女から放たれる力は、以前よりもはるかに巨大だった。
「さあ、」彼女は言った。その顔はまだ先ほどの痛みで青ざめているが、それでも笑みを浮かべている。「本当に強いのはどっちか、見せてもらおう。」
そして、その挑戦に答えるかのように、ミヤ自身にも変化が現れた。
緑の光が彼女の体からほとばしり出た。かつてないほどの輝きで。彼女の明るい緑の髪はより濃いターコイズグリーンに変わり、急速に伸びて背中を越えた。彼女の瞳は四つの尖った星の形に変貌し、その頭上には、淡い光を放つ光輪がゆっくりと回転し始めた。
マミーナは、自分の新しい力に自信を持っていたにもかかわらず、固まってしまった。
これは……まだ五十パーセントだと?
今まで彼女は、たった五パーセントしか使っていなかったのか?!
ミヤから放たれる圧力は、マミーナがこれまでに感じたすべてをはるかに超えていた——もはや単に強いというレベルではなく、まるで生きている天災の前に立っているかのような感覚だった。
「それならば、」マミーナは残されたすべての勇気を振り絞り、体勢を固めた。その周囲の青白い光はさらに激しく燃え上がる。「俺ももう手加減はしない。」
彼女は高く手を掲げた。エネルギーが集まり、周囲の空間を引き裂かんばかりの強度で凝縮される。
「ミコウト……絶対零度!」
凍てつくエネルギーの爆発が放たれた。その通り道にあるすべてを凍結させ、発生源をはるかに超えて広がる冷気の波を生み出す。
ミヤは剣を掲げた。その刃先に集まる緑の光は、彼女がかつて放ったどの光よりも強く、重く——春の柔らかな光ではなく、爆発を待つ星の核のように、はるかに密度が高く、重かった。
「聖火の剣……」
その声は平坦で、冷たく、しかし周囲の空気を震わせた。
「……浄滅の聖火。 」
緑の光が彼女の刃から炸裂した。彼女が以前試みたスターグレイザーよりもはるかに大きく、はるかに強力な——巨大なエネルギー波が、マミーナの氷の攻撃を正確に捉えた。
二つの力が衝突した。
周囲の空間が悲鳴を上げ始めた——亀裂が入り、歪み、二つの力の圧力に耐えきれずにいる。緑と青の光が混ざり合い、名前もない色を生み出し、周囲のすべてをまばゆい光で包み込んだ。
そして、その衝突の頂点で——
空間が裂けた。
爆発したのではない。崩壊したのでもない。裂けたのだ——二つの色が支配権を巡って争い、それに耐えられなくなったキャンバスのように。
マミーナは、爆発の中心にいたため、その裂け目から信じられない速度で吹き飛ばされた——彼女の体は制御不能に回転しながら、虚無の彼方へと消えていった。
そしてミヤは、ためらうことなく、迷いなく、その裂け目の中へと飛び込んだ——彼女の虚ろな心に残された唯一のものに駆り立てられて。
追跡。破壊。終焉。
彼女の周囲の光はますますまばゆくなり、彼女の視界すべてを飲み込んだ。そしてついに、彼女はまったく見知らぬ場所に現れた——見知らぬ虚無の空間。そこには三人の見知らぬ人影が、驚きと恐怖の入り混じった表情で彼女を見つめていた。
そして、もう一人——赤いマントの人物が、彼女と、遠くに弱々しく倒れているマミーナの間に立ちはだかっていた。
ミヤはゆっくりと剣を掲げた。その星型の瞳は、自分がどこにいるのかなど、本当には気にしていないかのように、その見知らぬ領域を見渡した。
彼女の心に残っているのは、ただ一つのことだけだった。
「……ミカはどこだ?」
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
次回もどうぞお楽しみに。




