表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
崩壊した世界で自分を探して 〜終わらない再構築のループと、夢の中で出会う謎の少女〜  作者: スズミヤ
第二章 失われた世界

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

29/30

偽りの月

深淵に落ちて、どれくらい経っただろう。


時間は意味を失い、空間は歪む。

ここには死者もいなければ、生者もいない。

ただ、永遠に落ち続けるだけの場所。


しかし——その深淵で、偽りの月が昇る。

「じゃあ、自己紹介するわ。あたしはマミーナ。七人の将軍の一人、強欲の権能を持つ者よ。」


その声は軽かった。何の重みもない。まるでこれから殺そうとしている相手ではなく、旧友と話しているかのように。


ミヤは黙り込んだ。


権能?


彼女は眉をひそめた。ジョロトの記憶が頭に浮かぶ。ジョロトも何か権能について言っていた。暴食の権能。大食。すべてを吸収する能力——ミカが作り出した空間さえも。


今、マミーナは強欲の権能を持つという。


どういう意味だ? 権能にはそれぞれ特別な力があるのか? そして、それぞれ違うのか?


それに……他の将軍たちはどんな権能を持っているんだ?


しかし、それ以上考える暇はなかった。


マミーナが飛び出した。


速い。非常に速い。以前と同じ——無音の瞬間移動。彼女の体はミヤの前から消え、そして背後に現れた。警告なしに。空気の振動もなしに。


蹴り。


しかし、今回は——違った。


ミヤはもう警戒していた。最初の蹴りで吹き飛ばされて以来、彼女は学んでいた。目は前だけを見ているのではない。周囲の小さな変化のすべてを感じ取っていた。耳は目に見えない空気の振動を捉えていた。


ガキン!


ミヤは背後からのマミーナの攻撃を防いだ。正確に。振り返る必要すらなく。


鋼が鋼とぶつかる。聖火の剣の緑がかった炎が、闇と激突する。


マミーナは驚いた。その目がわずかに見開かれる。


「おや?」


しかし、笑みは消えなかった。いや、むしろさらに広がった。


「あははは! 英雄様はやっぱり強いのね!」


彼女は再び攻撃した。より速く。より激しく。無謀に。


左へ瞬間移動——斬撃。

右へ瞬間移動——蹴り。

上へ瞬間移動——拳。

下へ瞬間移動——地面からの攻撃。


規則性はない。休憩もない。予測不能な嵐のように。決して止まらない波のように。


しかしミヤは耐えた。


すべての攻撃を防ぎきった。マミーナの動きはすべて読めた。彼女の剣は水のように動いた——流れ、適応し、決して無理をしない。


強い……でも、無秩序だ。


スピードと奇襲に頼っている。技術じゃない。


ミヤは歯を食いしばった。


このままじゃ終わらない。決着をつけなければ——少なくとも、彼女を退けるまでは。


彼女は出力を上げた。


10%ではない。


15%だ。


周囲の空気が震えた。魔力に敏感な者にしか感じ取れない小さな振動。しかし、それで十分だった。マミーナに——何かが変わったと気づかせるには。


青と緑が半分ずつだったミヤの髪が、変わり始めた。緑が支配的になり、青はゆっくりと後退した——潮が海岸から遠ざかるように。


右目はすでに明るい緑だった。今、左目も変わり始めていた——青から薄緑へ、そして明るい緑へ。


しかし、完全ではない。まだグラデーションが残っている。


マミーナは感じ取った。空気の圧力が高まっている。攻撃によるものではない。ミヤという存在そのものによるものだ。


「おや? まだ本気じゃないのか? いいね。諦めない相手は好きだよ。」


戦いはさらに激しさを増した。


剣と拳がぶつかり合う。魔力と魔力が激突する。ミヤの斬撃は一つ残らず緑の光の軌跡を空中に残した。マミーナの攻撃は一つ残らず黒い跡を——まるでキャンバスに描かれた墨絵のような——残した。


彼らの足元の黒い大地は割れ、砕け、散っていった。


彼らは守らない。退かない。ただひたすらに攻め続ける。


ミヤは力を溜め始めた。


剣の先に、緑の光が集まる。以前のようではない——春の若葉のような柔らかな光ではない。濃い。密な。重い光だ。生き続けるには重すぎる星のように。


これは彼女の新しい技だ。一度も使ったことはない。訓練したことさえない。


この技があれば——惑星一つなら破壊できる。完璧に命中すれば。


彼女は剣を高々と掲げた。緑の光が強く輝く。周囲の暗い領域全体を照らし出す。マミーナの影さえも消え去るかのようだった。


「聖火の剣……」


しかし、振り下ろす直前に——


「ミコウト、スターグレイザー。」


ミヤは止まった。


彼女の手は空中で凍りついた。その目は見開かれた。


あれは——あれはミカの声。


違う。マミーナの声だ。でも——


技の名前。言い方。リズム。イントネーション。言葉の強調。


すべて完璧に一致していた。


マミーナの手のひらから、青い光の攻撃が放たれた。ミカのスターグレイザーに似ている——しかし、違っていた。色はより暗く、より混沌としていた。完璧ではない模倣のように。完成品だけを見て描かれた絵のように。


しかし、それで十分だった。


ミヤを沈黙させるには。


彼女の思考は止まった。


なぜ?


なぜ彼女はミカの力を使える?


奪ったのか?


まさかミカは——


ミカはまさか——


彼女の手が震えた。疲労のせいではない。恐怖のせいだ。今まで味わったことのない恐怖。


集中力が散った。剣先の緑の光が弱まる——暗く、明滅し、芯の消えかけたろうそくのように。


攻撃の出力が急激に落ちた。


15%が10%に。そして5%に。そして、ほとんどゼロに。


マミーナの攻撃が彼女を襲った。


ドン!


ミヤは吹き飛ばされた。


遠くへ。


彼女の体は黒い大地を転がった。埃が舞い上がる。小さな石が散らばる。


数十メートル進んでようやく止まった。


血が口元から滴る。服のあちこちが破れている。最後の一瞬で作り出した防御壁は——十分に強くなかった。


感情が混乱しすぎて、集中力を保てなかった。


ミヤの心の中:


「なんだったんだ、今のは?」


「なぜ彼女はミカの力を使えるんだ?」


「模倣なのか? それとも——」


「待てよ。まさか……」


「ミカが……」


その先は心の中でさえ言えなかった。


遠くから、マミーナが笑った。


大口を開けて。何の重みもなく。何の罪悪感もなく。


「はははは! どうした、英雄様? 急に弱くなっちゃって? 私、やっと楽くなってきたところなのに。」


ミヤは立ち上がった。


息は荒い。疲労のせいではない。不安のせいだ。動揺のせいだ。恐怖のせいだ。


胸は大きく上下している。冷や汗が額を濡らす。


「お前……!」


その声は嗄れていた。ほとんど聞こえないほどに。


「ミカをどうしたんだ?!」


マミーナは笑うのをやめた。彼女は細めた目でミヤを見つめた。笑みはまだ浮かんでいる——しかし、違った。そこには満足感があった。


「ミカ? それ誰?」


「とぼけるな! お前、アイツの力を使ってる!」


「おや~」


マミーナは小さく頷いた。ようやく理解したかのように。


「それがミカって奴の名前なの?」


彼女はまた小さく笑った。


「うーん……さあね。」


彼女は肩をすくめた。気楽に。無関心に。


「どう思う?」ミヤの拳が強く握りしめられた。指の関節が白くなった。


「答えろ、クズ! さもないと——」


「さもないと、なに?」


マミーナが遮った。その声はまだ軽い。しかし、その目は——もう笑っていなかった。


「その状態で私に勝てると思ってるの、英雄様?」


彼女は手を掲げた。


「ミコウト、ビッグドメイン——フロストムーン。」


世界が変わった。


冷たい青い花の野原。大きな氷の月が空に浮かぶ。その光は青白く、冷たく、骨まで凍らせる。空気も凍てつく。


ミカの領域。


しかし、完全に同じではない。


花はミカのように濃い青ではない。氷の月は完璧な円ではない。表面にはひび割れがある。遠くからは見えないが、近づけば明らかなひび割れ。


空気はただ冷たいだけではない。空虚に冷たい。


まるで中に魂が宿っていないかのように。


それでも。


これはミカの領域だ。


ミヤは言葉を失った。


口は開いている。しかし、声は出ない。


すべてが。


攻撃。技。領域。


すべてがミカに似ている。


彼女はミカの力を奪ったのか?


それとも——


彼女の思考は混乱していた。明確に考えることができない。論理を組み立てようとするたびに、傷ついた——あるいはもっと悪い——ミカの姿が頭に浮かんだ。


胸が苦しい。息が詰まる。目まいがする。


もしかしたら、ミカはもう死んでいて、彼女がその力を奪ったのか?


いや。ありえない。


しかし——証拠はここにある。目の前に。


この領域。この技。


すべてミカのものだ。


なのに、彼女が使っている。


マミーナは待たなかった。


彼女は再び攻撃した。容赦なく。休むことなく。


「ミコウト、氷剣連鎖!」


無数の氷の剣が空中に現れた——ミカのように。しかし、より暗く、よりくすんでいた。


「ミコウト、ファズマファントム!」


高速の重層攻撃。似ている。しかし、同じではない。


「ミコウト、スターグレイザー!」


何度も。何度も。何度も。


攻撃が途切れることなく続く。


マミーナが口を開くたびに、ミカの名前が飛び出す。


彼女が手を動かすたびに、ミカの技が現れる。


ミヤは防ぐ。


しかし、彼女の防御壁は強くなかった。


防げた攻撃のたびに、腕の震えが強くなる。


防ぎきれずに被弾するたびに、傷が増える。


右腕の傷。

左腿の傷。

頬の傷。


血。痛み。


しかし、彼女を苦しめているのはそれではなかった。


彼女を苦しめているのは——不確かさだ。


ミカ……


彼女の思考は深く、暗く、そして混沌としていく。


彼はきっと捕まっている。


それ以外に説明がつかない。


マミーナはミカをどこかに監禁している。彼に力を——技を、領域を——見せさせている。そしてそれを模倣している。


そうだ。きっとそうだ。


だから彼女はこれらすべてを使えるんだ。


完璧ではないけど。ただの模倣だから。習得したわけじゃない。


それでも……ミカ……


そして、その結論に達した時——


ミカが捕まっていると信じた時——


ミカが苦しんでいると信じた時——


彼女が彼を守れなかったと信じた時——


何かが変わった。


決意ではない。

闘志ではない。


鬱だ。


深い絶望。

言葉にできない悲しみ。


ミカが捕まっている。そして、私は彼を救えない。


でも——


私は彼を苦しめる者たちを殺せる。


私は彼の力を奪った者たちを殺せる。


私はマミーナを殺せる。


彼女の力が溢れ出した。


制御不能。方向性もない。


しかし、野性的で、獰猛で、残忍だ。


魔力が勢いよく流れ出る——あまりに勢いよく——フィルターなしに彼女の体から。


領域内の圧力が急激に高まった。


空気が震える。歯がガチガチと鳴るほどの振動。


空の氷の月が割れ始めた。大きいなひび割れが。深いひび割れが。まさに割れんばかりのガラスのように。


外からの攻撃のせいではない。


下からの——内側からの——ミヤ自身からの圧力のせいだ。


マミーナは感じ取った。


初めて、その目が見開かれた。


笑みが——消えた。


「お、おい……なんだこれ?」


彼女は周囲を見回した。彼女の領域が揺らぎ始めている。氷の月のひび割れがさらに広がっている。


「なんで急にそんな力を……?」


ミヤは立っていた。


彼女の髪——先ほどまでかすかに青を残していた——今は完全に緑に変わっていた。


最後の一本の青い髪が消え去った。


彼女の目——片方青、片方緑だった——今は両方とも明るい緑だった。そして、その瞳孔は星の形に変わっていた。


柔らかい緑。春の若葉のように。


しかし、その顔に怒りの表情はない。憎しみの表情もない。


ただ虚ろだ。


しかし、無感情な虚ろではない。感情が溢れすぎて——表現できなくなった虚ろだ。


ミヤはマミーナを見つめた。


静寂が二人を包む。


「……殺す。」


その声は静かだった。声そのものから、マミーナは尋常ならざる圧力を感じ取った。


マミーナは再び笑った。しかし、その笑みは少し硬い。初めて彼女は危険を感じた。


真の危険を。


「はっ……やっと面白くなってきた。」


彼女は構えた。足をわずかに開き、手を胸の前に。


「さあ、英雄様。見せてみなさい——すべてを失った後で、お前に何ができるのかを。」


ミヤは答えない。


彼女はただ、剣を掲げた。


緑の光が、かつてないほど強く輝く。


本当の戦い——それが今、始まろうとしていた。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。


ミヤは絶望の果てに、新たな力を解放した。

しかし——それは本当の覚醒なのか、それとも狂気の始まりなのか。


次回、第二章「失われた世界」第30話へ続く。


どうぞお楽しみに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ