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崩壊した世界で自分を探して 〜終わらない再構築のループと、夢の中で出会う謎の少女〜  作者: スズミヤ
第二章 失われた世界

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深淵の孤独

深淵に落ちて、どれくらい経っただろう。


時間は意味を失い、空間は歪む。

ここには死者もいなければ、生者もいない。

ただ、永遠に落ち続けるだけの場所。


彼はまだ知らない。

これが、終わりのない苦しみの始まりだということを。

赤い宇宙雲がどこまでも広がっていた。地面はない。空もない。星もない。ただ赤いだけ。何百万年もの昔から腐り続ける血の海のように、ゆっくりと、うねりながら動く虚無だけがあった。


ミカはまだ落ちていた。


彼の体は方向も目的もなく漂っていた。魔力は空っぽだった。先の戦いで受けた傷はまだ全身に痛みを残していた。胸は苦しく、目は重かった。何日もここに落ち続けているような気がした。実際は数分かもしれない。あるいは数時間かもしれない。この場所で時間を測る方法はなかった。


あとどれくらい、俺は落ち続ければいいんだ?


答える者はいなかった。


冷たい風が肌を刺した。奇妙な冷たさだった。氷や雪の冷たさではない。虚無の冷たさだった。何ものにも触れられたことのない場所の冷たさだった。


彼は手を動かそうとした。動いた。しかし、何もできなかった。掴まるものもなければ、足場もない。ただ落ちるだけだった。落ちて、落ちて、落ち続ける。


突然――


魔力が満ち始めた。


ゆっくりではなく、少しずつでもなかった。ダムを決壊させる洪水のように、勢いよく流れ込んできた。温かい。熱い。空っぽだった体の隅々まで満たしていく。


「な…なんだこれ?」


ミカは驚いた。彼の手は空を掴み、何が起きているのか理解しようとしていた。さっきまで空っぽだった魔力が――今は満ちている。それ以上に、溢れんばかりだった。


でも、なぜだ?なぜ突然?


考える暇はなかった。


遠く――分厚い赤い雲の隙間から――光の閃光が現れた。最初は小さかった。ぼんやりとしていて、うねる赤い海の中ではほとんど見えなかった。しかし、どんどん大きくなっていく。どんどん近づく。どんどん速くなる。


「あれは…何だ?」


ミカは目を細めてそれを凝視した。心臓が高鳴った。胸の中に悪い予感があった。あの光が良いものをもたらさないという予感が。


光はどんどん近づく。


「待てよ――」


彼が言い終わる前に――


ブラッ!


光が彼の頭を貫いた。


痛みはなかった。ただ冷たかった。ただ暗かった。世界がひっくり返った。色が褪せた。音が消えた。全てが一瞬で消え去った。


そしてミカは死んだ。


「また会おう、英雄たちよ!」


ジョロトの声が響いた。大きく、はっきりと。つい今しがた言われたかのように。


「お前たちからの救助を待っているぞ!」


「はははは…」


ミカは目を開けた。


赤い宇宙雲。目的もなく落ちていく。魔力――空っぽ。


「…なに?」


心臓の鼓動が不規則だった。彼は何度か瞬きをした。胸はまだ苦しかったが、新しい傷はなかった。体は無傷だった。髪は黒く、目は暗い。


ここは…同じ場所だ。同じ声だ。


俺は…戻ってきたのか?


彼は周りを見回した。何も変わっていなかった。赤い雲はまだゆっくりとうねっていて、彼の体はまだ落ち続けていて、魔力はまだ空っぽだった。


つまり…さっき俺は死んだってことか?


突然、激しい眩暈が彼を襲った。頭が重かった。しかし、じっとしている暇はなかった。


魔力が満ち始める。温かい――彼の体が再び魔力で満たされていく。


「ああ、またか…」


遠く――あの光の閃光が再び現れた。前と同じだ。最初は小さく、そして急速に大きくなる。


「ミコウト…クウカンオサクケンノシンカ」


彼の髪は雪のように白く変わった。彼の目は青く輝き、その中心には月の紋章が灯った。魔力が彼の周りで氷の嵐のように炸裂した。


光が襲いかかる。


「スターグレイザー!」


ドン!


大爆発。衝撃波が四面八方に広がり、周囲の赤い雲を引き裂いた。ミカは吹き飛ばされた。遠くへ。彼の体は数十メートル後方へと舞った。


しかし、彼は止まらなかった。


スッ。ミカは攻撃をかわしたが、光はまだ追いかけてきた。


スッ。


スッ。


一撃。二撃。三撃。ミカは全てを防いだ。氷の剣で。氷の盾で。使えるものは全て使った。


「くそっ…」


彼は動き続けた。遠ざかろうと。逃げようと。飛ぼうと。何でもいい。


しかし、四撃目が襲いかかった。大きすぎた。速すぎた。強すぎた。


ドン!


ミカは耐えられなかった。彼の体は吹き飛ばされた。遠くへ。遠すぎるほどに。世界が回転した。色が滲んだ。視界が一瞬暗くなった。


そして彼が意識を失いかけたその時――彼の体は何かに飲み込まれた。まるで扉のように。空気の穴のように。全てを飲み込む巨大な口のように。


ポータル。


ミカは落ちた。


しかし、今度は――止まった。


「…なに?」


彼は立っていた。少なくとも、立っているように感じた。彼の足の下に何かが彼を支えているわけではなかった。しかし、彼は落ちなかった。何かが彼を支えているかのように――見えない何かが。透明で、終わりのない虚無が。


彼は周りを見渡した。


赤い雲はない。光もない。何もない。


ただ黒だけ。ただ虚無だけ。


「ここは…どこだ?」


彼の声がこだました。壁はないのに、その声は自分の耳に返ってきた。まるで彼がとても広い空っぽの部屋に立っているかのように。


彼は歩いてみた。


一歩ごとに奇妙な感覚があった。まるで水の上を歩いているようだった。夢の中を歩いているようだった。


「ミカ…」


彼は止まった。


左を見た。何もない、空っぽだ。


「ミカ…」


右も同じだった。何もない。


それは彼自身の声だった。しかし、なぜか別人のように聞こえた。頭の中に響いた。あるいはこの空間に響いたのか?彼にはわからなかった。


「…誰かいるのか?」


答えはなかった。ただ虚無が彼を見つめ返すだけだった。


彼は歩き続けた。


五歩。十歩。二十歩。


終わりはない。目的地もない。


しかしその時――彼の視界がぼやけた。


「えっ…なに?」


彼は目をこすった。効果はなかった。焦点が合わない。世界は嵐の海の船のように揺れていた。


眩暈だった。しかし、ただの眩暈ではなかった。頭の中から回されているようだった。見えない手がゆっくりと彼の脳を絞っているようだった。


彼は膝をついた。


体中に奇妙な感覚が走った。


「うぐっ…」


腕が震えた。指が硬直した。胸が苦しかった――傷のせいではない。何か内部からの圧力だった。


何かがおかしい。


彼は自分の手のひらを見た。


青ざめていた。


ミヤの好きな青ではない。青白い。死体のような青。死の色のような青。


血管が浮き出ていた。隆起していた。動いていた。まるで小さな蛇が彼の皮膚の下を這い回っているかのように。


「な…なにこれ?」


彼は拳を握ろうとした。できなかった。指は木のように硬直していた。


熱が胃から胸へ、首へ、頭へと上がってきた。


普通の熱ではなかった。熱でもなかった。内側から焼かれるような熱だった。まるで血が沸騰しているかのようだった。まるで彼の血管の一つ一つで火が燃えているかのようだった。


「うぇっ――」


彼は吐いた。しかし、出てきたのは血だった。


目が痛んだ。ひどく痛んだ。


彼は自分の頬に触れた。ざらざらしていた。乾いていた。まるで皮膚が硬化し始めているようだった。石化し始めているようだった。死に始めているようだった。


「まさ――」


声が嗄れていた。声帯が焼けているようだった。一言一言がガラスの破片で喉を引っかくように感じられた。


彼は立ち上がろうとした。しかし、できなかった。足が反応しなかった。


彼は下を見た。


足が――凍っていた。


氷のように凍っているわけではない。だが彫像のように凍っていた。黒い。硬直している。動かせない。まるでその足はもう彼のものではないかのようだった。


パニック。


彼は左足を触ってみた。感覚がなかった。他人の肉を触っているようだった。木を触っているようだった。もう死んでいる何かを触っているようだった。


「動け…動いてくれ…」


反応はなかった。


パニックはさらに強まった。しかし、パニックは役に立たなかった。


彼の体はますます重くなっていった。見えない重りが上から彼の体の隅々まで押しつぶしているようだった。


胸が苦しかった。ひどく苦しかった。


ドクッ。ドクッ。ドクッ。


心臓が速く打っていた。速すぎた。


ドクッ。ドクッ。


そして遅くなった。


ドクッ。


そしてまた速くなった。


不規則だった。めちゃくちゃだった。まるで心臓自身がどうすればいいのかわからないかのようだった。


「…俺は…俺は…」


彼は文を終えられなかった。口が硬直していた。舌が鉛のように重かった。唇が動かなかった。


鼻から血が流れた。


目がくらんできた。世界が消え始めていた。ゆっくりと。少しずつ。まるで誰かが彼の目を内側から閉じているかのようだった。


それでも彼は這ってでも動こうとした。ゆっくりと、彼は動いた。しかし動けば動くほど、痛みは強くなった。


そしてついに、彼の体が限界を迎えた。ミカは動くのをやめた。もう希望は残っていなかった。それでも、彼は心の中で叫び続けた。


「お願いだ…この苦しみを終わらせてくれ」


そしてついに、ミカは動かなくなった。そして――


ドンッ!


彼の体は爆発した。


ミカは死んだ。


「また会おう、英雄たちよ!」


「お前たちからの救助を待っているぞ!」


ミカは目を開けた。


赤い宇宙雲。目的もなく落ちていく。魔力は空っぽだ。


「……」


彼は動かなかった。話さなかった。ただ頭上に広がる赤い空を見つめていた。


三度目だ。


ここで、俺はもう二度も死んだ。


最初は、光が頭を貫いた。


二度目は、静かな場所で体がゆっくりと壊れていった。


今度は……また死ぬのか?


魔力が満ち始める。温かい。熱い。


「ミコウト…クウカンオサクケンノシンカ」


白い髪。青い瞳。


光がまた襲いかかる。


しかし今度は――ミカは防がなかった。避けなかった。耐えなかった。


彼は飛んだ。


まっすぐに光に向かって。


可能な限り速く。可能な限り強く。彼が持つ全ての魔力を使って、体を前に押し出した。


「今度は…ぶっ殺してやる…!」


一撃目。彼は止まらずに防いだ。


二撃目。また防いだ。


三撃目。まだ前に進む。


ミカは自分に向かってくる全ての攻撃を防ぎ続けた。


彼は光に向かって突進し続けた。止まることなく。しかし――距離は全く縮まらなかった。


「どういうことだ…?」


彼の目が見開かれた。


ありえない。こんなに速く飛んでいる。全力を出し尽くしている。なのにあの光は同じ場所にある。近づかない。遠ざからない。


まるで…同じ場所を走っているだけだ。


まるで…誰もあれに近づけないようだ。


「ふざけるな…」


胸が痛み始めた。心臓が速く打ちすぎていた。そして、遅くなった。


「うぐっ!」


激しい痛みが彼の胸を襲った。視界が一瞬暗くなった。手が震えた。


その一瞬の隙に――


バシッ!


光が彼の右手を貫いた。


血。骨。肉。


腕が吹き飛んだ。


ミカは弾き飛ばされた。彼の体は制御不能に回転した。残された腕の断面から血が大量に流れ出た。


「あああっ、くそったれがああっ!いてえぞ畜生があっ!」


彼は動けなかった。彼の体はあまりにも多くの痛みを受けすぎていた。アドレナリンが切れていた。彼の体は感覚を失っていた。冷たかった。何も感じなかった。


彼はうつろな目で赤い空を見つめた。


なぜだ?


なぜ距離が変わらない?


なぜ近づけない?


なぜ何度も死んで、何も学べないんだ?


なぜだ?


光が再び現れた。


遠くに。小さく。そしてゆっくりと大きくなる。


ミカはそれを見た。


彼は避けられなかった。防げなかった。残された腕は一本だけ。胸はボロボロだ。魔力は満ちているのに、限界を超えていて使えなかった。


しかし今度は――光が当たる前に――


彼は考えた。


俺の目。


最初から、俺はあの光だけを見ていた。


後ろは見ていなかった。


横も見ていなかった。


光はどんどん近づく。


ミカは目を閉じた。


もしかしたら…俺は――


バチッ


彼の頭は粉々に砕け散った。


「また会おう、英雄たちよ!」


「お前たちからの救助を待っているぞ!」


ミカは目を開けた。


赤い宇宙雲。目的もなく落ちていく。魔力は空っぽだ。


しかし今度は――彼は動かなかった。パニックにならなかった。すぐに進化を発動したりもしなかった。


彼はただ静かにしていた。


赤い空を見つめながら。


何かを考えていた。


今まで、俺はただあの光に向かって進んでいた。


他の方向は試したことがなかった。


もしかしたら…前に進むべきじゃないのかもしれない。


もしかしたら、俺は――


魔力が満ち始める。


光が現れ始める。


ミカは息を吐いた。


「ミコウト…クウカンオサクケンノシンカ」


「今回は…ちょっと違うことを試してみる」

第2章の冒頭からここまでお読みいただき、ありがとうございました。

次の物語でお会いしましょう。

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