深淵の門
二人の将軍——ミヤは独り、空で戦い続ける。
「逃げろ——私が食い止める!」
ミカとユキナは学園へ向かう。十メートルごとのテレポート。一秒ごとの絶望。
そして——空が割れた。
空はまだ暗かった。戦いの塵は完全には消えず、傷つけられた戦場の名残の息のように空気中を漂っていた。遠くでは、夕暮れの橙色がゆっくりと沈み、地平線を飲み込むような濃い夜に取って代わられようとしていた。
その闇の只中、壊れ果てた銀色の花園の上に、一人の影が立っていた。ジョロトが大口を開けて笑う。その笑声は静寂を砕く、まるで硝子に走るひび割れのように。
「英雄が目覚めただと?これは本当に面白くなってきた!お前たち全員、この手で殺してやる!」
その声は虚空に響き、鉄槌のように耳を打つ。しかしミヤは動じない。
彼女はミカとユキナの前に立っていた。手にした神器の剣が緑がかった光を放つ——目をくらますような光ではない。むしろ温かい、まるで朝日が生まれたばかりのような。彼女の髪は、半分が青、半分が若草色で、風もないのに揺れている。その瞳は青と緑が混ざり合い、鋭く輝きながらジョロトを睨みつけていた。恐れはない。迷いはない。ただ燃え盛る決意だけがある。
「二人は早く逃げて」ミヤの声は静かだが、断固としていた。否定を許さない命令のように。
ミカは驚いた。体はまだ動かず、魔力も底をつきかけていた。胸は大きな石でも乗せられているかのように重い。彼はただユキナの隣に沈み込み、全身に広がる痛みを耐えていた。
「なにを——」
「早く逃げろ!」ミヤが遮る。今度は声が叫びに近かった。 「私がこいつを止める!」
ユキナは歯を食いしばった。顔は青ざめ、残された魔力はごく僅か——おそらくあと十回テレポートできるかどうか。だが彼女にもわかっていた。この状態では戦えない。
震える手でユキナはミカの腕を掴んだ。 「テレポートはきついわよ。耐えて。」と彼女は囁いた。
ミカはただ頷くことしかできなかった。声は出なかった。
スッ。 金色の光が彼らの周りで灯る。その身体は一瞬のうちに光へと変わり——そして消え去った。
ミヤは今、一人だった。ジョロトと向き合って。
ジョロトが微笑む。友好的な笑みではない。むしろ満足げな笑み——罠にかかった獲物を見る狩人のような。 「逃げたか。臆病者め。」
「構わん。」
後ろから声がした。
ミヤが振り返る。息を呑む。
濃密な闇の中から——月明かりすら届かないような闇の中から——一人の男が歩み出てきた。
黒いスーツ。ジョロトと同じような。だが帽子は違う。より高く、より黒い。その顔は影に覆われ、目だけが認められた。
赤い。
真夜中に燃える炭火のように輝いている。
「ジョロト。遅すぎた。」
ジョロトがニヤリとする。 「悪い悪い。ちょっと遊んでいたものでね。」
その男はミヤを見つめた。目を細めると、赤い輝きが一層強くなった——見るものすべてを焼き尽くさんばかりに。
「あれが例の英雄か?」
「そうだ。」ジョロトが頷く。 「さっきまで後ろで縮こまっていたくせに、今では一人で立ち向かうつもりらしい。」
男が微笑む。友好的な微笑みではない。嘲るような微笑みでもない。ただ、背筋が凍るような笑み——呪いのように感じられる笑みだった。
「手を貸そう。」
二人の将軍。ミヤは独りだった。
ミヤは剣を掲げた。言葉はない。脅しもない。ただ動きだけがあった。
「千の聖火斬り! 」
一振り——そしてその一振りから千もの緑の炎が生まれた。それらは四方八方へと飛び散る。速く、鋭く、致命的に。空気が鳴き、周囲の雲が切り裂かれ、天の幕が破れたように揺れ動く。
ジョロトは身軽にかわす。その体は影のように動く——素早く、予測不能に。一方、赤い瞳の男はただ手をかざすだけだった。千もの斬撃はその手のひらに触れた瞬間に砕け散った。傷一つない。
「なかなかやるな。」彼の声は平坦で、感心する様子もない。「だが——」
彼が飛び出した。
速い。速すぎる。
ミヤはかわしきれず、かろうじて剣で受け止めた。
ガキン! 剣と男の素手がぶつかり合う。その衝撃で空気が震え、空に雷が落ちたかのような音が響いた。
「神器ごときでこの私を傷つけられると思っているのか?」男が微かに笑う。「そんな剣にはうんざりするほど慣れておるわ。」
強い押しの力でミヤは弾き飛ばされた。その体は宙を舞い、なんとか体勢を立て直そうとする。雲の渦に飲み込まれそうになったが——間一髪で剣を周囲のエネルギー流に突き立てて、自らの動きを止めた。
呼吸を整える間もなく——ジョロトが横合いから現れた。
「トク、影の短剣! 」
ミヤ自身の影が短剣へと姿を変えた。真っ黒で、鋭く、致命的だ。その短剣は彼女の胸目掛けて真上から突き上げる。
ミヤは跳んだ。しかし十分に速くはなかった。
ズタッ。 短剣が彼女の腕を捉えた。血が滴る。制服が裂ける。焼けるような痛みが走る。
しかし——神器の剣が放つ緑の光が脈打った。生命の鼓動が彼女の全身へと広がるかのように。開いたばかりの傷口は淡い輝きを放ち始め、見えない手に撫でられているかのようだった。
流れ出た血が止まる。痛みが和らぐ。裂けた皮膚がゆっくりと塞がり始める——嵐を耐え抜いた花が再び咲くかのように。神器の祝福が働き、ミヤの傷を少しずつ癒していた。
ミヤは自分の腕を見つめる。まだ赤い痕はある。かすかな痛みも残っている。しかし彼女にはわかっていた——神器とは単なる武器ではない。命を守る盾でもあるのだ。
彼女は剣をより強く握りしめた。その目は相変わらず鋭く、決意に満ちている。
「なかなかやるな。」ジョロトが呟く。その口調は少し変わっていた。わずかばかりの敬意が込められていた——たとえ薄っぺらなものであっても。「だが、お前は一人だ。」
「一人でも十分よ。」
ミヤは再び剣を掲げた。血を流した傷はかすかに輝いていた——まるで聖なる光が彼女を倒すまいと拒んでいるかのように。彼女は残る痛みなど気にしなかった。疲れた体など気にしなかった。
ただ一つのことだけが大切だった。ミカとユキナに逃げる時間を与えること。
「オーロラ! 」
剣が動く。先ほどのような速さではない。むしろ優しく——非常に優しく、まるで極夜の空に踊るオーロラの光のように。その一振りごとに、無数の緑に輝く斬撃が生まれ、四方へと散っていった。
鋭くはない。致命的ではない。しかし避けるのは難しい。男がかわす。ジョロトもかわす。しかし二人は近づけなかった。前に進もうとするたびに、その輝く斬撃が立ちはだかる——聖なる光の幕が彼らを拒むかのように。
「煩わしい。」男の声に苛立ちが混じり始める。
「俺が相手をする。」ジョロトが一歩前に出る。「お前は学園へ行け。あの二人を追え。」
男は頷いた。その体が変容を始める——霧となり、影となり、形を持たない何かへと。
ミヤはそれを見た。その目を見開く。「この私から逃げられると思っているの——」
彼女は走り出した。剣を男に向かって振りかざす。全身全霊を込めて。残された力のすべてを込めて。
しかしジョロトが立ちはだかった。
「トク、影の短剣! 」
地面から、無数の黒い短剣が出現する。それらはすべての隙間を塞ぎ、ミヤの行く手を阻む。動く余地はない。呼吸する余地もない。
「お前の相手は俺だ。」ジョロトは微笑みながら言う。「他所を見るな。」
ミヤは歯を食いしばった。彼女は短剣を斬り払う——しかし斬り払っても斬り払っても、新しい短剣が現れる。終わりがない。絶え間なく流れる水のように。止めどなく降り積もる砂のように。
ミヤは答えない。彼女はただ斬り続ける。
その間に——赤い瞳の男は消え去っていた。
一、二、三、四。
振るうたびに、かつてない速さで。かつてない激しさで。しかしジョロトはいつもかわす。容易く。まるで遊ぶかのように。
「聖光破壊斬り! 」
ミヤは剣を一振りした——今度は全身全霊を込めて。残された力のすべてを振り絞って。
緑の光が空間を切り裂く。
ドン! その斬撃は放たれた。巨大な。速い。破壊的な。それが通過するものすべて——雲も、気流も、月明かりさえも——両断された。
ジョロトはかわす。しかし斬撃は彼の背後にある雲を捉えた。
バン! 宇宙雲が裂け、巨大な渦が形成される。緑の光が宵闇の靄と混ざり合い、空に回転する深淵を創り出した——まるで天そのものが砕けたかのように。
「おやおや。」ジョロトが口笛を吹く。その目がわずかに見開かれる。彼はミヤがここまで強いとは思っていなかったのかもしれない。「本当に私を殺すつもりか?」
ミヤは止まらない。彼女は攻撃を続ける。一振り。二振り。三振り。しかしジョロトはいつもかわす。その体は空中を自由に舞い、風と遊んでいるかのようだ。
「残念だが——」ジョロトは後方へ跳ぶ。彼らの距離は約十メートルだった。「——これ以上お前に付き合っている暇はない。」
彼は手を掲げた。高く。ゆっくりと。まるで天の深淵から何かを呼び寄せるかのように。
「影の呑喰! 」
ミヤ自身の影が空中で膨れ上がる。大きくなる。大きくなる。周囲の雲の塊よりも巨大な黒い巨人となって。
その影がミヤの体を飲み込んだ。先ほどの短剣とは違う——今度は全身が閉じ込められた。動くことも、呼吸することもできない。ただ闇があるだけ。ただ冷たさがあるだけ。
ミヤは動こうとする。しかし自身の影が彼女を縛り付けていた。無数の手が彼女の体の隅々を掴み締めているかのように。
「離しなさい——!」
「残念だが、それはできない。」
ジョロトが背を向ける。「さて、そろそろお前の友達を追いかけるとしよう。」
彼は飛び出した。速い。風が耳元で唸り、宙の霧を裂きながら。
ミヤが叫ぶ。「やめなさい——!」しかし影はまだ彼女を縛り付けている。
くそっ……くそっ……なんてこった……
彼女は目を閉じた。強くあれ。強くならなければ。
神器の剣が放つ緑の光が輝く。より明るく。より熱く。
「離れなさい! 」
バキン! 影が砕けた。空中で割れたガラスのように。太陽の下で溶ける氷のように。
しかしジョロトはもういない。ミヤは追いかけようと走り出した——たとえ自分がもう手遅れだと知りながらも。
スッ。
ユキナとミカは十メートル先に現れた。
一秒。
スッ。
さらに十メートル。
一秒。
スッ。
ミカはもう動けなかった。魔力は尽きていた。彼の体はただユキナに寄りかかり、意識を保とうと必死だった。しかし目は重くなり、聴覚は遠退き始めていた。
「はあ……はあ……」
ユキナは息を切らしていた。顔は汗で濡れていた。魔力はほとんど残っていない——あと三、四回テレポートできるかどうか。しかし彼女は止まらない。
スッ。
スッ。
スッ。
テレポートするたびに、命を削られているような感覚があった。嵐の海を泳ぐように。終わりのない砂漠を走るように。
後方——遠く遠く後方——爆発音が聞こえた。戦いの音。ミヤの叫ぶ声。
ミヤ……
ミカは拳を握りしめた。
耐えろ。耐えろ。耐えろ。
スッ。
ついに——学園の像が目前に見えた。
巨大な獅子の石像。学園の象徴。数百年の歴史を持つ。しかしそれは今も頑健にそびえ立っていた。
「着いた……わ……」ユキナは膝をついた。魔力が尽きた。もうテレポートはできない。
ミカもその隣に倒れ込んだ。体が震える。歯がカチカチと鳴る。
しかし彼はまだ動くことができた。
あの像を……壊さなければ……
彼は這った。手が石畳に触れる。一歩。二歩。五十センチ。一メートル。
ヨウスケ……助けて……
彼はほとんどそこまで来ていた。
彼の手が像の表面に触れる。
冷たい。粗い。埃っぽい。古い石の匂いが鼻をつく。
彼は残り僅かな力を振り絞った。ほとんど何も残っていなかった。砂漠の真ん中の一滴の水のように。しかしそれで十分だった。十分でなければならない。
ヒビ。
小さなひび割れが像の表面に走った。
ヒビ……ヒビ……ヒビ……
ひび割れは広がっていく。蜘蛛の巣のように。枝分かれする川のように。
像が砕けた。石片が地面に散乱する。崩れ落ちる音が静かな夜に響いた。
その瞬間——
黄金の光がミカの傍らで灯った。明るく。温かく。まるで真夜中に突然現れた太陽のように。
長いローブを纏った男の姿がその光の中から現れた。
ヨウスケ。
「来てくれたんだな……」ミカはかすかに微笑んだ。弱々しい、しかし誠実な微笑みだった。
ヨウスケは砕けた像を見つめた。それからミカを見つめて、少しだけ目を細めた。おそらく彼は見て取ったのだろう。ミカがどれほど疲れ果てているか。その体がどれほど傷ついているかを。
「言ったであろう。像を壊せば、私が来ると。」
「ヨウスケ!」
後方から二人の声がした。
リョウジョとキヨが走って近づく。その顔は真剣であった。遠方から異様な魔力の揺らぎを感じ取ったのだろう——何マイルも彼方まで地面を震わせた戦いの振動を。
「ここで何があったんだ?」リョウジョが尋ねる。彼の手はすでに神器の杖を握りしめていた。
「ヴォイド・リーパーズの将軍どもだ。」ヨウスケは簡潔に答えた。その目は前方を見据えたままだった——闇が今も濃く立ち込める方へ。「二人だ。」
「二人?」キヨが白金の盾を取り出す。盾は月明かりの下で輝いた。「残りの一人はどこに?」
「そこだ。」
ジョロトが影から歩み出てきた。
その笑みはまだ貼りついていた。しかし以前とは違う。その目に何かが潜んでいた。何かを狙う何か。飢えた何か。
その隣には——第二の将軍もすでに戻っていた。高い帽子と赤い瞳の男。その両腕は背中に組まれている。落ち着いている。しかし脅威的だ。
ミヤが後方から現れた。息は荒く、未だに腕の傷を押さえている。血は固まり始めていたが、その傷は月明かりの下でなお赤く見えた。しかし彼女は立っていた。
「ミヤ……」ミカが小声で呼びかける。
ミヤは答えない。その目は前方の二人の将軍に注がれたままだった。
今、学園側には六人の戦士がいる。
ヨウスケ。ミカ。ユキナ。ミヤ。リョウジョ。キヨ。
第二の将軍がジョロトに歩み寄った。
何かを彼の耳に囁く。
ジョロトはそれを聞いた。
その目を見開く。眉が上がる。予想外の何かを聞いたのかもしれない。
そして——
彼は笑った。
普通の笑みではない。嘲るような笑みでもない。
ただ——大きく。
非常に大きく。
耳まで裂けんばかりに。
「はははははははははは!」
その笑声が辺り一帯に響き渡る。耳をつんざき、恐怖を植え付ける。風までもがその笑いを聞いて立ち竦んだかのようだった。
ヨウスケはそれを快く思わなかった。彼は一歩前に踏み出す。その手はすでに構えられている。魔力が手のひらに集まっていた——青みがかった光が指の間に灯る。
しかし彼の攻撃が放たれる前に——
第二の将軍がすでに彼の眼前に立っていた。
ガキン!
ヨウスケの攻撃を受け止められる。片手で。容易く。
「急くな。」その男は静かに言った。声は低い。しかし重い。山が噴火する前の地響きのように。
「お前たちは本当に運がいい、くそったれども!」
ジョロトが笑う。その目は凶光を放ち、笑みは決して消えない。
「我らの主がお前たちに会いたがっておるぞ!」
ミカは眉をひそめた。主だと?
「ならば——」
ジョロトが帽子を掲げた。
高く。かつてないほど高く。天に届かんばかりに。
「——この私がお前たちを案内してやろう!」
彼は帽子を空へと放り投げた。
黒い帽子は回転する。回転する。回転する。ますます速く。ますます速く。やがて黒い輪郭がぼやけるほどの速さに。
そして——
「トク……オーソリティ・グラトニー——大食の門。 」
彼は指を鳴らした。
チン。
それぞれの足元に——黒い穴が開いた。
一つではない。六つだ。一人に一つずつ。獲物を飲み込まんとする巨大な口のように。
ミカには避ける暇も、叫ぶ暇も、目を閉じる暇もなかった。
足元の地面が消え失せた。
彼は落ちた。
ミカの視界は暗転した。
黒。濃い黒。何も見えない。
音もない。匂いもない。何もない。
ただ闇だけ。
ただ虚無だけ。
そして——
視界が開けた。
赤い宇宙雲が彼の眼前に広がっていた。
空ではない。空と呼べるものでもない。それは終わりなき雲の大海原——血のように、炎のように、何百万年もの昔から朽ち続けている何かのように真っ赤に輝いている。その雲は緩やかに流れ、うねり、時折その深淵でかすかな光を放っていた。
どこにいるんだ……?
彼は動こうと試みる。体はまだ動いた。しかし彼にできることは何もなかった。手がかりもなく、足場もない。
ユキナ? ヨウスケ? ミヤ?
彼は一人だった。
「ご機嫌よう。」
声が響いた。
あらゆる場所から。あの赤い空から。大気から。彼自身の頭の中から。
ジョロトの声だ。
しかし彼の姿はどこにも見えない。
「我らの主から直接招待された客人たちよ……紹介しよう。私はヴォイド・リーパーズの将軍、ジョロト。この下界宇宙の領域を一千万光年にわたって管轄する者の一人である。」
ミカは息を呑んだ。喉が乾いている。
一千万光年……?
「混乱するな。お前たちは今、宇宙の底辺へと転送されておるのだ。」
宇宙の……底辺……?
「よく来られた、最底辺の宇宙——『ジ・アビス』へ。 」
ミカは何も言えなかった。
彼はただその赤い空を凝視するしかなかった。
ここが……宇宙の裏側……?
「さて、それでは。」
ジョロトの声の調子が変わる。より軽く、より気楽に。しかし恐ろしいことに変わりはない。
「また会おう、英雄たちよ! 」
笑い声。
「お前たちからの救助を待っているぞ! 」
その笑い声は消えていった。
ミカは再び一人になった。
別の場所。同じ赤い宇宙雲。
ミヤはそこに立っていた——何の上に?地面はない。しかし彼女は落ちない。浮かんでいるかのようだ。
半分が若草色に変わった髪が、風もないのに揺れている。神器の剣が放つ緑の光はまだ灯っている——しかし先ほどよりも薄くなっている。もうすぐ消えそうなろうそくのように。
彼女の目が周囲を見渡す。
見知らぬ場所。
すべてが見知らぬ。
彼女は神器の剣を強く握りしめた。その手は震えている。
「ミカ……」
彼女の声は震えていた。ほとんど囁きに近い。
「どこにいるの……?」
答えはない。ただ赤い空だけ。ただ息苦しいほどの静寂だけ。
「最後まで読んでいただき、ありがとうございます。このエピソードをもって、第一章『全ての終わり』は完結となります。そして、第二章『失われた世界』へと続きます。どうぞお楽しみに。」




