表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
崩壊した世界で自分を探して 〜終わらない再構築のループと、夢の中で出会う謎の少女〜  作者: スズミヤ
第一章 全ての終わり

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

23/26

予告なき手紙

休憩時間。


ミカは一人、庭園のベンチで昼食を取っていた。


そこへ、転校生のユキナが現れる。

彼女の手には、一通の封筒。


「これ、渡してくれって」


差出人は——学園長。


静かな昼下がりに、小さな波紋が広がる。

授業が終わった。


休憩のベルが鳴り、生徒たちが一斉に教室を出て行く喧騒と同時に響いた。数人は食堂へ向かい、数人は廊下で話し込み、数人は椅子に座ったまま体を伸ばしている。


ミカは立ち上がった。


彼の手には、水色の布で包まれた弁当があった——ミヤからのものだ。普段なら教室か食堂で友達と一緒に食べる。だが今日は、一人でいたい気分だった。


今日は、一人でいたほうがいいかもしれない。


彼は教室を出て、廊下を歩き、学園の裏庭へと向かった。そこには小さな庭園があり、木陰にいくつかの木製ベンチが置かれている。静かだ。風の音と、葉擦れの音だけが聞こえる。


ミカは隅のベンチを選び、腰を下ろした。


彼はゆっくりと包みを開けた。中には、黒ごまが振りかけられた丸いおにぎり。いくつかの小さなおかず。漬物。そして、きれいに切られた卵焼き。


ミヤが、まだこんな風に作ってくれているのか……


彼はスプーンを手に取った。ご飯をすくう。口へと運ぶ——


だが、そのスプーンが唇に触れる直前——


「ねえ!」


横から、明るい声がした。


ミカは驚いて、スプーンを落としそうになった。


彼が振り向くと——


すぐ隣——同じベンチの上に、いつの間にか長い銀髪の少女が座っていた。瞳は薄紅色。大きな笑みが唇に浮かんでいる。


ユキナだった。


「どうして俺についてきたんだ? 何か用か?」ミカは少し疑わしげな口調で尋ねた。


ユキナは小さく笑った。「うーん、半分は当たりで半分は外れかな。一緒にお昼を食べたかったから来たの」


「どうして俺なんだ? 他の誰かじゃダメなのか?」ミカは弁当を食べ始めながら返した。


ユキナは少し体を後ろに預けた。「あなたの力のことを、直接聞きたくて来たの。お父様が『すごい奴がいる』って言うから、気になっちゃって」


ミカは一瞬、咀嚼を止めた。そして、ため息をついた。


「俺はただの普通の学園の生徒だ。勝てたのは、仲間が助けてくれたからだ」


ユキナは微かに笑った。信じていないようだった。だが、反論もしなかった。


二人はそのまま、静かに食事を続けた。スプーンと弁当箱の触れ合う音。風の音。葉擦れの音。


しかし、その静けさは長くは続かなかった。


「ねえ、ミカ」ユキナが再び呼びかけた。


「ん?」


「聞いていい?」


「何を?」


ユキナはゆっくりとご飯をすくい、横目でミカを見た。「ミヤちゃんとの関係って……何なの?」


ミカは眉をひそめた。


「つまり、あなたは彼女の護衛? それとも恋人? それとも……夫?」ユキナはどんどん意味のわからない言葉を並べ始めた。


ミカは無視した。聞こえないふりをして、食べ続けた。


そんなミカの態度に、ユキナは諦めなかった。彼女はいたずらっぽく笑った。


「あら、冷たいのね、ミカ。まさか、あなたの関係を隠してるってわけ?」


ミカはスプーンを置いた。


彼はユキナの方を向いた。顔は真剣で、目は鋭かった。


「ミヤとの関係を隠したことなんて一度もない。何の関係もないからだ。ただの戦友だ」


ユキナは少し驚いた。無口だったミカが突然、はっきりとした口調で言い切ったからだ。


「ごめん、ミカ」ユキナは小さな声で言った。「私、ちょっとからかいすぎたね」


ミカはため息をついた。顔の表情が再び穏やかになる。


「謝らなくていい。君は何も悪くない。ただ、俺はそう伝えたかっただけだ」


ユキナは小さくうなずいた。しかし、心の中で何かが微かに動いた。


食事が終わると、ユキナは自分の弁当箱をベンチに置いた。そして、制服のポケットから何かを取り出した。


白い封筒だった。かなり厚みがある。彼女はそれをミカに差し出した。


「これ、何だ?」ミカは戸惑いながら尋ねた。


「封筒。お父様からの手紙。あなたに宛ててるの」ユキナは答えた。


ミカはしばらく封筒を見つめ、それから受け取った。彼はゆっくりと封を開け、中から少し黄ばんだ紙を取り出した。やや乱雑な手書きの文字が並んでいる。


ユキナも気になって覗き込む。首を少し傾け、目を細めた。


手紙にはこう書かれていた——


「こんにちは、ミカ。おめでとう。君のところが今、朝なのか昼なのか夕方なのか夜なのかは知らないが——たぶん朝だろうな。娘に朝のうちに届けろと頼んだから。

さて、前置きはいいだろう。伝えたいことがある。

万が一、不測の事態が起きたら、学園の正面広場に行け。そして、広場の中央にある像を破壊しろ。すぐにテレポートする。

だから、試しに壊してみようなんて考えるなよ。破ったら、お前を罰するからな。

わざわざ手紙を書いたのは、時間がないからだ。いつも忙しい。それに、『ヴォイド・リーパーズ』という組織が動き出したらしい。将軍一人と、数名の部隊を送り込んで、お前とミヤを狙っているそうだ。

気をつけろ。

どうしても追い詰められて、像を破壊できないなら——周囲のことは気にするな。全力を出せ。

では、これで終わりにする。

ああ、そうだ。一つだけ言い忘れた。娘に手を出そうものなら——殺す。

——ヨウスケ・リベルト」


静寂が訪れた。


風が吹き、数枚の枯れ葉が二人の間を舞い落ちた。


ミカは手紙を読んだ。その目は最後の一文で止まった。


「娘に手を出そうものなら——殺す。」


彼はユキナの方を見た。


ユキナはまだ読み続けていた。その顔は——真っ赤だった。


ただの赤ではない。耳の先まで真っ赤になっている。


「ユキナ……大丈夫か?」ミカが尋ねた。


ユキナは答えなかった。


彼女の目はまだ手紙に注がれている。最後の一文に。その前の一文に。自分が地中にでも埋まりたくなるような全ての文章に。


「お父様……なんで……なんでこんなこと書くのよ?!」


「ユキナ?」


「あああああああっ!」


ユキナは突然叫び、ミカの手から手紙を奪い取った。そして、パニック状態でそれを折りたたむ——雑に、ぐちゃぐちゃに、ところどころ破れそうになりながら。


「何してるんだ?!」ミカは驚いた。


「この手紙! お父様、頭がおかしいのよ!」ユキナは叫びそうになりながら言った。「まさか、こんなことが書いてあるなんて知らなかった!」


「こんなことって?」


「最後の一文よ!」


ミカはまばたきした。「まさか……本当に知らなかったのか?」


「知らないわよ!」ユキナは手紙を封筒に雑に詰め込んだ。「お父様は『ミカにこの手紙を届けてくれ』って言っただけ! 普通の手紙だと思ったのに! まさか殺人予告なんて入ってるなんて!」


ミカは笑いをこらえきれなかった。


「笑ってるの?!」ユキナは目を見開いてミカを睨んだ。


「悪い」ミカは口を手で覆った。しかし、肩はまだ微かに震えている。「でも……笑えるよ」


「何も笑えないわよ!」ユキナは立ち上がった。顔はまだ真っ赤だ。封筒を手の中でぐしゃぐしゃに握りしめている。「お父様ったら本当に……私は……私は……」


彼女は最後まで言い終えなかった。


彼女は乱暴に封筒を地面に投げつけた。ベンチのそばに落ちた封筒は、中の紙がはみ出しそうになっている。


ユキナはそのまま歩き出した。振り返らない。止まらない。


ミカはただ黙って、遠ざかっていくユキナの背中を見つめた。銀色の長い髪が風に揺れている。小さく、速く、木々の向こうへと消えていく。


風が再び吹いた。


ミカはため息をついた。そして、ゆっくりと口元に微かな笑みを浮かべた。


「笑える」と、彼は小さく呟いた。


しかし、その笑みは長くは続かなかった。


笑える。笑えるのか?


彼はうつむき、地面に落ちている封筒を見た。端にいくつかの草の葉が付いている。


残念だけど……これは全然笑えない。


ミカは近づき、封筒を拾い上げた。そして、再び中から手紙を取り出した。


彼はヨウスケの言葉を読み返した。


「『ヴォイド・リーパーズ』という組織が動き出したらしい。お前とミヤを狙っている。」


「周囲のことは気にするな。全力を出せ。」


ミカは手紙を強く握りしめた。


なぜだ? なぜ、一つの問題が終わると、いつも次の問題がやってくるのか? なぜ、彼は安らぐことができないのか? なぜ、ミヤはいつも危険にさらされなければならないのか? なぜ——


彼の手が震え始めた。


恐怖からではない。怒りからでもない。


しかし、何かが混ざり合っていた。怒り。フラストレーション。恐怖。全てが一つになっていた。


ヴォイド・リーパーズ。


くそったれが。


彼は拳を握りしめた。手紙はその掌の中にあった。


そして——


バキッ。


彼の指の間に、氷が形成され始めた。ゆっくりと。


バキ……バキ……バキ……


手紙は凍りついた。紙は硬くなった。そして——


砕けた。


青白い氷の破片が彼の指の間から飛び散り、小さな雪片のように地面へと落ちていった。


「ヴォイド・リーパーズ……」ミカの声は低かった。ほとんど囁きに近い。しかし、その中には重い何かがあった。「……必ず、全員ぶっ潰す」


彼は立ち上がった。


長く息を吐き、手に残った氷の破片をゆっくりと払い落とした。


そして——彼は歩き出した。庭を後に。ベンチを後に。地面で静かに溶けていく氷の破片を後に。


教室へと戻っていく。


遠く、学園二階の窓の向こう側。


青い髪の少女がそこに立っていた。


ミヤだった。


彼女の目は、最初から最後まで、ずっとミカから離れていなかった。ユキナがミカの隣に座った時も。二人が一緒に食事をした時も。ユキナが怒って封筒を投げつけた時も。


ミカが手紙を凍らせた時も。


ミカが「必ず、全員ぶっ潰す」と言った時も。


ミヤは全てを見ていた。


最初から最後まで。


彼女はゆっくりと遠ざかっていくミカの背中を見つめた。その歩幅は小さく、しかししっかりとしていた。いつもの彼とは違う。そこには重荷があった。しかし、同時に決意もあった。


ミヤはそっと目を閉じた。


ミカ……


息はゆっくりと、深く。


そして——彼女は再び目を開けた。


窓から風が吹き込み、青い髪の何筋かを後ろへと流した。


しかし、その瞬間——


何かが変わった。


彼女の右目。


青ではない。薄緑だった。春の若葉のように。これまで一度も見たことのない、かすかな光のように。


彼女はそれに気づいていない。知らない。


しかし、あの窓辺で、風がそよぐ中で、頭上に青い空が広がる中で——


ミヤは小さな声で呟いた。


「戦って、ミカ」


その声は優しかった。ほとんど聞こえないほどに。


しかし、十分だった。


彼女の緑の瞳が一瞬輝き、すぐに元に戻った。何もなかったかのように。


彼女は遠ざかっていくミカの背中を見つめ続けた。


そして外では、互いに振り返ることなく、互いに知ることなく——


同じように戦い続ける二人が、前に向かって歩き続けていた。

新キャラクター・ユキナの本格登場です。


そして、物語は静かに次の舞台へと動き出します。


次回もどうぞお楽しみに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ