表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
崩壊した世界で自分を探して 〜終わらない再構築のループと、夢の中で出会う謎の少女〜  作者: スズミヤ
第一章 全ての終わり

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/26

進化の始まり

戦いが終わり、夜は更ける。


静かに降り積もる雪の中、彼らは学園へと歩いていた。


疲れと静寂だけが、彼らを包む。


そして——学園の灯りが見えたその時、一人の男が現れる。


「どうやら、お前は進化を遂げたようだな」


それは、長い夜の終わり。そして——新たな始まりの訪れ。

静かな夜だった。雪が静かに降り始める。


普通の雪ではない——ミカの攻撃が半径百メートルを凍らせたその残滓だ。結晶と呼ぶには小さすぎ、霙と呼ぶには繊細すぎる。それらは柔らかに舞い落ち、戦いの残骸を薄い白の層で覆っていく。


四人はようやく、学園へと歩き出した。


キヨが先頭を歩く。その足取りは遅く、重い——まだ、今しがた起きた出来事を消化しきれていないようだ。時折振り返り、白い雪に静かに埋もれていく氷の円環を眺める。


ミカとミヤは、キヨの数歩後ろを歩く。


ミヤはミカの隣にいた。二人の距離は、手を伸ばせば届くほど。彼女の手は時折、ミカの腕に触れそうになる。しかし、そんなことは彼女の頭にはなかった。その顔は、完全に沈んでいた。自分が原因で、街の住民を危険に晒すような大戦闘になってしまった——その責任を、ミヤは感じていた。


ミカはミヤの隣を歩く。その足取りは遅い。重荷を背負ったキヨとも、沈みきったミヤとも違う。ミカの歩みは、どこか空虚だった。身体は動いているのに、意識は別の場所にある——そんな風だった。


彼の目は前を向いている。しかし、何も見ていない。時折、彼は手を胸の上——心臓のあたりに当てる。何か見えないものを感じ取るように。


お前は、欲しいものをすべて手に入れられる。


その言葉が、頭の中で何度も繰り返されていた。


意味はわからない。しかし、彼の胸の中で、ずっと空っぽだった何かが、少しずつ満たされていくのを感じた。


温かいわけじゃない。冷たいわけでもない。


ただ——ずっと失くしていた何かが、ようやく戻ってきつつある。そんな感覚だった。


リョウジョは、最も後ろを歩いていた。


神器の杖は右手に握られたまま。その先端が時折地面をかすめ、雪に細い跡を残す。吐く息は白く、いつもより速い。彼の視線は、ミカの背中から離れなかった——最下級クラスの新入生。その理解を超えた力を持つ少年の背中を、ただひたすらに見つめ続けていた。


雪は降り続く。


正面、木々の向こうに、学園の灯りがぼんやりと見え始める。暖かそうだ。遠い。休息を約束しているようだった。


ようやく、彼らは生徒寮に到着した。


ミカとミヤは男女別の寮ということで、ここで別れることになった。キヨは二人に、空き部屋の鍵を二つ手渡した——ミカ用とミヤ用に。


「部屋はどちらも二階だ」


ミヤは震える手で鍵を受け取った。それでも、彼女はミカに向かって小さく微笑もうとした。


「また、明日ね」


ミカはうなずいた。


ミヤはリョウジョと共に、右手にある女子寮へと歩いていく。ミカはあまり心配していなかった——男子寮と女子寮はすぐ近くだ。小道一本と、並木一列を挟むだけの距離だった。


キヨがミカを男子寮の空き部屋へと案内する。二人の足音が、静かな廊下に響く。ほとんどの部屋は暗い——寮生たちはもう眠っているか、あるいは誰も構ってほしくないのかもしれない。


ミカはその後ろをついていく。その意識は、まだ半分、別の場所にあった。


ようやく部屋の前に到着する。


キヨがドアを開けようとした、その時——


「——おや?」


横から声がした。


ミカが振り向く。


そこには、ヨウスケが立っていた。白い髪が少し長く、その目は鋭く細められている。足音はしなかった。風もなかった。ただ、そこに現れた。


ヨウスケはミカを見ていない。その視線は窓の外——白い欠片が降り続く夜空に向いていた。


「雪か……」彼は呟いた。半分、問いかけるように。「今は夏なのに」


彼はミカへと向き直る。その目は鋭いが、敵意はなかった。


「これは……お前がやったのか?」


ミカはうなずいた。それだけだった。否定しても仕方ない。説明しても仕方ない。


ヨウスケはしばし沈黙した。そして、微笑んだ。


「この銀河のどの学園の生徒でも、こんな芸当はできんよ」彼は静かに言った。「だが、お前は……」


彼の目が、ミカの顔を捉える。


白く変わっていたミカの髪——徐々に、少しずつ、その色が黒く戻っていく。まるでインクが紙に染み込むように。あるいは、何かが元の場所へと引き戻されていくように。


そして、その瞳は。


まだ青い。その中心には——月の紋章が、かすかに輝いていた。


ヨウスケは再び微笑んだ。


「どうやら、お前は進化を遂げたようだな」


彼の目は、読み解くのが難しかった。


「お前は本当に……規格外だ」


ミカが問いかける前に——進化とは何か? 自分に何が起きたのか?——


ヨウスケは消えた。


ただ、それだけだった。音もなく。風もなく。


しかし——


ドォン。


遠く、空の彼方から、空気を震わせる重い音が響いた。雷ではない。爆発でもない。もっと深い——空そのものが、何かに応えているような音だった。


雪雲は一瞬で吹き飛ばされ、夜空だけが、暗く、澄み渡って残された。


ミカは、呆然と立ち尽くした。


進化。

規格外。


これらは、一体何を意味するのか?


彼の意識は再び、答えのない問いの渦へと引きずられていく。緑の髪の女は誰なのか? 廃墟の惑星にいた老人は誰なのか? 聖域とは何なのか? そして——進化とは?


しかし、その思考は途中で断たれた。


カチリ。


キヨがドアを開けた。


「入れ」彼は淡々と言った。「十分に休めよ」


ミカは息を吐いた。彼はキヨの方に向き直り、軽く頭を下げた。


「ここまで案内してくれて、ありがとうございます」


キヨは肩をすくめた。「礼を言うことじゃない。それに、さっきは俺たち全員をお前が助けたんだ」


ミカはそれには答えず、部屋へと足を踏み入れた。


部屋は質素だった。ベッドが一つ。机が一つ。箪笥が一つ。そして、窓の近くに小さなソファが一つ。決して豪華ではないが、十分だった。


ドアが閉まり、静けさが戻る。


ミカはソファへと歩いた。腰かける。そして、ゆっくりと体を預け、頭を背もたれに沈めた。


天井を、ただ見つめる。


窓の外では、夜の空が暗く、静かに広がっている。


ミカには、明日何が起きるのかわからなかった。進化が何を意味するのかもわからなかった。聖域で誰が自分を待っているのかもわからなかった。


しかし、一つだけ確かなことがあった。


昨夜、自分の中で何かが変わった。そして、その変化は——まだ終わっていない。


瞼が重くなる。


ミカは、ゆっくりと目を閉じた。


冷たい夜は明け、暖かな朝日が訪れる。

ついに明かされる「進化」という言葉。

ミカの中で何が変わったのか——。

そして、彼を待つものとは——。


次回、新しい朝が始まります。

どうぞお楽しみに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ