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推定悪役令嬢【出来ちゃった婚】でルート回避を目指す‼︎  作者: 猫モフ師団
間章 踊る王国

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sideフロランシア フードコートリニューアルセレモニーではなかったですねー。

目が覚めて(どこだ?ここは?)と思ってしまった。

じわじわ思い出す。

フォード領訓練砦1号砦2〜3階の宿泊施設だ。

眺めの良い部屋を用意して貰ったんだった。

窓から魔の森が一望できる。

一面深緑の森で遙か遠くに稜線が見える。

ノックの音が聞こえたのでインベントリからの装着で着替える。

昨日と色違いの「軍服ロリ」だ。昨日は紺。今日は赤。

扉を開けるとルンタタ、ルンルン、シルリンがいた。

何かを見て欲しいらしい。

隣室のモブ君を起こして連れていく。

寝起きのモブ君は寝癖頭が個性的だ。

髪の毛を指で梳いたりしたが寝起きだからかあまり抵抗しない。


3匹と2人でタラタラ歩く。

フードコートはもう営業していた。

自分は遅くまで寝ていたらしい。


行き交う人が昨日より多い。

衣装は様々だが全員体格が軍人だ。

雰囲気が物々しい。

ピクシーにエキストラとして無理矢理連れ出された大人たちなのだろう。

日当くらい払ってるよね?

ルンタタたちに連れてこられた場所には「紋章旗」が並べて掛けてあった。

幅6m長さ10mなのだそうだ。

色は赤と黒に統一されている。


紋章旗の中にローレンツ家の紋章があった。

ローレンツ家の紋章は麦と葡萄が複雑に絡まった意匠だ。

中央に(すき)(くわ)が描かれている。

背景にミツバチが飛んでいて非常に牧歌的で平和だ。


他にも知っている紋章があった。

フォード辺境伯家の紋章だ。

盾が中心に描かれており、その盾をヒュドラが支えておりアカンサスがめいっぱい配置されている。伝統的な貴族らしい意匠だ。


モブ君の家ヴシュターク家は手裏剣とクナイの紋章だ。紋章というよりは家紋だ。


あとは何故かローレンツ家の「商標マーク」があった。

なんでだ?

商標マークが拡大された分、意匠が精密になっている。

ピクシーに聞いたら、ピクシー解放軍の軍旗なのだそうだ。

もともと商標マークはピクシーに依頼したものだ。

依頼料払ってないし。

転用禁止とかの契約も交わしてない。

だが、旗が同じだとピクシー解放軍のやらかしが全てローレンツ家の責任になる。

うん。

些事だ。

絶対に些事だ。

正面目線の麦君(ローレンツ1号)の表情が悪魔っぽくてかっこいい。


要素盛りだくさんの意匠が多い中で、ヴシュターク家の紋章と解放軍の軍旗はすっきりスタイリッシュで目立つ。


知らない家の紋章で「ユニコーンに剣が刺さっていて血が流れ出ている」という紋章が目立った。

殺伐とした雰囲気が他と一線を画していた。

フォルトア家だそうだ。

聞いた事あるけど知らない家だ。

ただ、ユニコーンはラーン王家のシンボルなのでこれは不敬で危険だ。


私はたくさんの紋章旗を眺めながら「フードコートのオープニングセレモニー」にしては金を掛けてるなぁと思った。

ピクシーの連中は割と倹約家だ。

なのに金の掛かってそうな紋章旗。

染色はヴシュターク家の得意とする分野だ。

鉱物を使って染めている。

親族割引を使っているかもしれない。

義父さん義母さんごめんなさい。

申し訳ない。


ただ、布を作っている家はうちの派閥にはいない。

布の手触りは絹に似ている。

だが絹より丈夫そうだ。

帳簿を見れば布の仕入先がわかるだろう。

どこだろう?

あとで必ず確認しよう。

ピクシーたちはきちんと帳簿をつけている。

収入は全て私からの支度金なんだけどね。


私の収入源は罪深くて言えない。

元金は母からのお小遣いだ。

増やした手法は言えない。

ブロック状の石を数段積んで数回飛び降りて練習した。

空中でインベントリからの出し入れは最初は難しかったが、慣れたら簡単だった。

これ以上は言えない。


閑話休題。

そもそものフードコート自体あんまり変わってない。

植木鉢の位置もいつも通りだ。

テーブルの位置も変わってない。

リニューアルしてないじゃん?

ピクシーの連中何考えてるんだ?



紋章旗を全部見終わったら、ルンタタたちから

「舞台の正面に飾る旗を5枚選んで欲しい」と言われた。

「立ち位置とか役割とか重要度とかわからないから、単純にカッコよさだけで選ぶよ?」と告げ

真っ正面のど真ん中にフォルトア家の「ユニコーンに剣」を選んだ。



☆☆☆☆☆

私は1度、ピクシーとのつきあいで失敗をしている。

彼らの求めに際限なく応じて「ピクシー解放軍」なるものを作ってしまった。

「かっこよく軍事訓練したい」だの「かっこよく作戦行動したい」などに請われるままにアイデアと資金を出してしまった。

結果としてやつらは、この国に捕らわれていたピクシーの他に大陸中のピクシーを集めて数万規模のピクシー解放軍を作り上げてしまったのだ。

それに加担した私。

私は1級戦犯だ。



今回は失敗しない。



ピクシーがフードコートのオープニングセレモニーを成功させたいという気持ちはわかる。

そこに水を差すつもりはない。

とはいえ、やらかしてもいい範囲というのはある。

人殺しはさせたくない。

ラーン国王はいずれ周辺国が殺したくなっちゃうだろうから、そこは静観する。

王子2人は……まぁ死んだら自分的に都合がいいから静観。


フォルトア家の紋章を真ん中に選んだらピクシーたちがちょっとざわついた。

「パン粉屋が……」

「え?……パン粉屋!?」

とかピクシーのざわついた声がする。

その左右に商標マークの「踊る麦君」とヴシュターク家の「手裏剣にクナイ」を選んだ。

さらに外側の左右はフォード家の「盾にヒュドラ」とあと1枚。



残り1枚は悩んだ。

ベイクド家の「立ち上がる雄牛」はかっこいい。

肉牛なんだけど。

前世のランボルギーニ社とフェラーリ社のエンブレムを足して2で割った感じでかっこいい。

ブライト家の火を吹いた剣はまぁまぁかっこいいけど「小学生が描いた図画工作感」が拭えない。


ローレンツ家の紋章はダメだ。

牧歌的過ぎる。

カールおじさんの歌声が脳内で再生される。


他に「山羊頭の悪魔と星空と魔法陣」という厨二テイストな紋章旗もかっこよかった。ヴォストーク魔法国という国の旗だ。

領じゃなくて国……???

聞いた事のあるようなないような。

たぶん些事だ。



結局私は最後の1枚を「山羊頭」にした。


選び終わった紋章旗を見たピクシーたちはやや困惑していた。


☆☆☆☆☆

私とモブ君は舞台の舞台袖に連れていかれた。

いい香りの紅茶を出された。

それからシルリンにコソッと「セレモニーの挨拶原稿」を渡された。

さっと目を通した私はピクシーの悪質な性質を思い出した。

原稿内容は「建国式典とレジスタントの決起大会」だ。

これは決して「フードコートのリニューアルオープニングセレモニー」の挨拶文じゃない。

ラーン王家を倒すとか、王族を血祭りにするという不穏な内容だ。

フードコートのリニューアルセレモニーで語っていい内容ではない。

シルリンがこれを渡してきた理由は、シルリンがピクシーではないからだろう。

シルキーは人間と長らく共存してきた生き物だ。

ちゃんと「常識」や「罪悪感」を持ち得ているのだ。

私に軌道修正して欲しいのだろう。


私はルンタタとルンルンを呼びつけた。

きっちり宣言しないといけない。

「ルンタタ、ルンルン。私はこの原稿に手を加えるけど問題ないわよね?

反対するならもう二度と遊んであげないからね」

「遊んであげない」という箇所を聞いたルンタタとルンルンは顔を真っ青にして赤ベコのようにうなずいた。

私が赤鉛筆を入れているとシルリンがお昼ご飯を運んできた。

フードコートのピザとアイスコーヒーだ。

私はシルリンの頭をそっと撫でる。

シルリンが満足そうに目を細めた。

常識人が1人でもいると助かる。

いっぱい誉めなきゃいけない場面だろう。

それを見たルンタタとルンルンが悔しそうな顔をした。


セレモニーの開始時間になったようだ。

今から原稿をフードコートで語っていい内容に変えるのは時間がない。

レジスタンスっぽいテイストには手はつけず、行動の範囲を決める文章を付け足した。

私は舞台袖からこっそり広場を覗いた。

真っ平らな広場は推定2万人の人間が整列していた。

「は???」

私は混乱した。

「フードコートのリニューアルセレモニーに2万人も呼んだの???」

エキストラか!!

今回はピクシーの連中、本気で金を掛けている。

荘厳な音楽が流れ始めたので、諦めて舞台に上がった。

楽団まで呼んでるが今更か。

私が演説台に立つと2万人のエキストラが一斉に片膝をついた。

訓練されている……!?


顔を上げさせた私はピクシーの悪ふざけに制限を掛けるため

解放軍に伝えた「なるべく人を殺さないように」という基本方針を改めて発表した。

2箇条目の「現国王を生かしておく」の部分に観衆からどよめきが聞こえたんだが何故なんだろう?


それから、新しい国王に任命されそうな嫌な予感がしたので、誰か他の人になすりつける事にした。

解放軍に責任は持つが、国王は普通に嫌だ。

時間経過でレジスタンスごっこ遊びが自然消滅してくれないかな?

さて生贄は誰にしよっかなー。

辺境伯閣下や我が父や同盟の貴族家当主は常識的にダメだろう。

測量パンのおっさんは大事な人材なので遊びにつきあわせちゃいけない。

パン粉屋のおっさんは時々「国王殺したい」だの「首刈り係したい」とか不穏発言が多いのでピクシーと相性良さそうだ。

という判断で新国王はパン粉屋のおっさんで決定。

なので演説中に戴冠式を混ぜる。

パン粉屋のフォルトア伯爵子息に新しい国王役をなすりつける。

このときばかりは「解放軍大元帥」という肩書きを使って任命する。

戴冠式に移るのでいったん舞台袖に引っ込んだ。


私はインベントリから出した金属で王冠を作った。

ハーフアーチがついてない四角のギザギザのタイプにした。

ハーフアーチがついてるとナヨっちい気がしたのだ。

実際は知らん。

フォルトア伯爵子息を舞台袖に呼びつけた。

新国王に任命すると伝えたら当然のように拒否られた。


ピクシーたちが私の意向を汲んでフォルトア子息を脅したり宥めたりしている。

かわいそうなので、止めようとした。

そうしたら子息の手のひらのハンカチに乗っている四角で透明の何かが「自分が代わりに国王の役をやる」と言い出した。

小動物役の声優さんみたいな声で主張するのでほっこりした。

だが、問題がある。

ハンカチ上の四角生物には王冠を乗せる頭がない。

「頭出せるか?」と聞いたら「魔力もらえれば出せる」と言う。

ので、パーティー申請からのマナチャネリングで魔力を流した。

パーティー申請には名前が必要なので適当に

「精霊王」

と命名した。


結果

ほっこり声の四角生物は、中性的な声のイケメン美女になった。

性別は不明である。

多分女性かな?


戴冠式は滞りなく終わった。

歓声が凄かった。

皆が武器を地面に打ち付けるので広場の床の心配をしたが、私の硬化魔法は数万人からのダメージを余裕で受け止めた。

エキストラの人たちの演技は真に迫っていた。

涙を流したり雄叫びを上げたり。


ピクシーがどこからとなくさらってきた中年男女の歓声は凄かった。

あの中年男女は普段はパン粉屋で働いている。

今回のイベントのエキストラではない。

エキストラではなくレギュラーだ。

中年男女の中年おじさんは四角生物に剣を捧げていた。

おじさんに続いてエキストラさんたちが次々と剣を捧げていた。

それが4時間も続いた。

四角生物は一切の手抜きなく儀式を行っていた。

くたくたになったが、ピクシーたちが全霊を込めたイベントだ。

私は最後まで頑張った。


しめくくりの言葉を求められたので「今後の基本方針」を話した。

ピクシーに暴走されるとローレンツ家が被害を被る。

だから最終目的が「ラーン王家殲滅」だとしてもやり方は穏便に済ませたい。

だからこその作戦基本方針は

「王国派離間工作」にするのだ。

離間工作はピクシーの創意工夫に任せる事にする。

まぁたとえば王国派の貴族に嫌がらせをされたと思わせたり

妻が王国派の貴族たちと不倫したとか思わせたり。

精神的なダメージを中心とする。

※自殺したくなる程のダメージは与えない事。

ラーン王家に恨みを持つ周辺国が軍事行動を起こしそうな場合、誠実な話し合いで平民に被害が及ばないよう鋭意努力をする。

「離間工作」が作戦の中心になるので時間を掛けじっくり王国派を弱体化させる。

現国王の首狩り係は多数で参加できるよう考える。


そして新しい国の名前は私が適当につけた

「フォルトア精霊王国」になった。

国旗はシルリンが作るそうだ。

剣のぶっささったユニコーンの意匠に手を加えるそうだ。


エレメントに精霊王などと仰々しい名前をつけてしまったが大丈夫なんだろうか?

エレメントって水滴とか火の粉とか砂つぶのような存在だよね?

あと1話で1章終わりです。

風呂敷広げないでサクっと終わらせる予定です。

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