sideケネス 雌伏の時は終わった。
皆様こんにちは
パン粉屋をさせられているケネス(22)です。
爵位はとっくに返上してるのに、いまだにフォルトア伯爵子息と呼ばれてます。
返上したので伯爵ではないし、父は処刑されてもういないから子息ですらない。
これは復讐心を忘れるなという周囲からの圧だと思う。
周囲の人たちもそれぞれ大切な家族を失ったのだろう。
重そうで嫌なので聞いてない。
うちの店で働いている中年男女はどうやら父の処刑と同時期に息子を亡くしているっぽい。
息子は近衛騎士だったんじゃないかな?
隣の測量パンの店員は全員が処刑された近衛騎士の遺族だと思われる。
怖いから聞けない。
年齢的に20代の息子の親っぽい。
立ち振る舞いが、近衛を輩出する高位貴族のそれだ。
知りたくないから忘れよう。
現在の俺の家はパン粉屋の奥にある。
店舗付き住宅という建物だ。
妹や姉が時々遊びに来る。
母はパン粉屋の従業員として近くの借家に住んでいる。
父の墓はここフォード領に移してある。
すっかり平和ボケしてる今日この頃です。
昼休憩時にぼんやりテーブル席でアイスコーヒーを飲んでいた。
ここ数日凄く忙しかった俺は、無遠慮に通りがかった貴族の女の子をガン見してしまった。
貴族をジロジロ見るのは大変な失礼に当たる。
銀色の髪をキリッとポニーテールにしていて意志の強そうな紫色の瞳をキラキラさせて隣の男の子に話しかけている。
「いいなー俺もあんな風にキラキラした瞳で見つめられたい」
などとぼんやり考えてたら、女の子の隣の男の子が視線を寄越してきた。
ただの糸目で瞳は見えないが殺意のこもった冷え冷えした視線だった。
なんだありゃ?
自分の女だから見るな!減る!
とかいう感じだろうか?
「うわー。減るもんじゃないのに。器ちっさ。美人は世界の財産だ、共有しろ」
と考えた瞬間、猛烈な殺気が飛んできた。
近くのテーブルの人たちもキョロキョロしている。
とはいえ、強烈な殺気だった。
さすが辺境。殺気のレベルが違う。
俺は小さくため息を吐いてから
「いいなー俺も恋人欲しい……」
と呟いたら目の前のハンカチに乗せたエレメントが
「いいよー。恋人になってあげる」
と言う。
最近この四角い物体は言葉を発するようになった。
毎日毎日「健やかであらせられますように」とか祈っていたら体積が増え、魂が宿ってしまったらしい。
最近は祈られる側がマンネリと思わないように祈りの内容に近況報告を足した。
「きょうはお客が多くて忙しかった」とか「ハンバーグの味付けを変えたら評判が良かった」とか。
ピクシーに任せられた物体?生き物?なので大切にしていた。
ケネスの知る由もない事だがエレメントを大切に連れ歩くケネスは、ピクシーから見るとカセットコンロを後生大事に持ち歩く変な人に見える。
☆☆☆☆☆
そして、あの恐怖の戴冠式を終えて現在。
人間と同じボディを手に入れたエレメントはケネスを抱き抱えて歩く。
ウエストより少し上、あばら骨の下に両腕を回し縦抱きにして連れ歩く。
ハンカチに乗せて連れ歩かれたのが嬉しかったので同じようにしてくれているらしい。
そして俺は王配になるらしい。
次回、1章の登場人物一覧を入れてみようと思ってます。
自分に対する備忘録。
次の次が2章。
ヒロイン発生。




