臨時会議続き&村内裁判
臨時会議続き
ローレンツ家当主はメモに目を落とし発表を続けた。
「要望ですが
1、ローレンツ家関係者50名の内半数以上がフォード領のここ地下通路で商売を始めたいとの申し出がありました。残りの半数は家族をフォード領に呼び寄せて家族と話し合いの末、行商をやめて店舗を持つ結論になるそうです。ローレンツ家関係者のほぼ全員がフォード領で商売を始める希望を出しております。閣下には開業許可証の発行をお願いしたいです」
辺境伯閣下は何でもない事のように
「いいよ。許可証出しておく」
ローレンツ家当主は「返事が軽いな」と思ったが口に出さないでおく。
そして続けてメモを読む。
「要望2点目です。ローレンツ家主要メンバーで「仮称ローレンツダンジョン」の探索を行う予定ですが報告のタイムラグを防ぐため閣下にも同行をお願いしたい」
辺境伯閣下は再び軽い返事をする。
「いいよ。私も中を見たいと思ってたんだ。今日は遅いから明日出よう。長男にフォード領の運営を頼んでから出たいし」
「わかりました。では明日朝一の鐘で集合。朝2の鐘で出発」
☆☆☆☆☆
ヴシュターク領の地下3階から上がってきたフロランシアとモブ君。
フロランシアとモブ君は古びたお堂に投げ込まれ閉じこめられた。
中はガランとしてて何もない。
すきま風が冷たいので身を寄せ合って暖を取った。
外はすっかり暗くなりお堂の中も真っ暗だ。
フロランシアは背嚢からランタンを取り出し灯した。
布団を出して睡眠を取る事も考えたが、インベントリの存在を隠すようフラナガン先生に言われてたのを思い出し布団を出さずモブ君を抱えて睡眠を取る事にした。
モブ君は子供らしく体温が高い。
抱きしめて顎の下を撫でたり頭を撫でたり背中をポンポンしてるとモブ君から安らかな寝息が聞こえてきた。
隙間から漏れる朝日で目を覚ますとお堂の入り口から「ガリガリ……ガリガリ…ガリガリ」という音が聞こえる。
フロランシアはお堂の入り口の外に向かって鑑定を飛ばす。
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名前:ヴシュ君
種族:ダンジョンマスター
年齢:370歳
レベル:1
状態:やや空腹
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「やや空腹って…お腹の空き加減しか表示しないのか?鑑定って……」
フロランシアはヴシュ君に【パーティー申請】を飛ばす。
相変わらずラグ無しに【承諾】が返ってくる。
【マナチャネリング!】
グググッと体が重くなる。
MPが吸われている。
お堂の入り口の階段の所からミシッ、ミシミシ、メキョ、バキッ、という怪しい音がするがフロランシアは気にしない事にした。
ヴシュ君はお腹が空いたから私の気配を探してMPを貰いに来たんだろう。
どうせまた体が大きくなったとかしてるんだろうけど、私はお堂に閉じこめられていたから関係ない。
そもそもヴシュ君に触れてない。
どうせ村の掟とかでヴシュ君に触れたら処刑とかされるんだろう。
フロランシアは寝ているモブ君を抱え直してお堂の入り口から一番遠い場所に移動した。
そして狸寝入りをした。
MPを吸われた関係で、狸寝入りのつもりが熟睡した。
耳元で大声がするので目を開ける。
モブ君が私の腕の中でもがいている。
「フロランシア起きてよ!!お祖母ちゃんが僕たちを呼んでる」
☆☆☆☆☆
うっすら目を覚ますとお堂の中に15人程度の村人がフロランシアたちを囲むように正座している。
フロランシアは即座にインベントリの中の【王国製封印テープ】を【インベントリ内売却】処理をする。
超常の力で検出されたらたまったもんじゃない。
これから尋問されるんだろう。
書記係とおぼしき人が硯で墨をすっている。
モブ君のお祖母ちゃんは領主一家だから村長とかやってるのかな?里長と呼ばれてたらかっこいいな。
「モーブリィよ」
モブ君は姿勢を正してキチンと正座する。
「はいぃぃぃぃ」
「おまえはダンジョン神様のこの姿に心当たりはあるか?」
「ございません」モブ君はきっぱり答える。
フロランシアも正座する。
「ローレンツ家のご令嬢よ」
「はい」
「そなたはダンジョン神様の姿に心当たりはあるか?」
フロランシアはしれっと嘘を吐く。
「ありません」
心の中で呟く。
ダンジョンマスターに関しては心当たりはあるが「ダンジョン神様」は存じ上げない。
お祖母様は書記係に目をやる。
その人物は手を左右に軽く振る。
フロランシアは書記係をこっそり鑑定する。
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名前:ロン・ヴシュターク
年齢:13歳
身分:子爵家2男
レベル:220
魔法:土魔法
スキル:認識阻害 嘘判定
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フロランシアはその人物がモブ君のお兄さんな事にビビる。
多分1度くらいは紹介されていたはず。
覚えてないけど。
そしてスキル「嘘判定」の存在を確認する。
心のフンドシを締め直す。
お祖母様はひとつ頷くと再びフロランシアに問う。
「そなたはこの生物の首に巻かれていたテープに何かしたか?」
フロランシアは「来た!」と思った。
「行方は存じ上げません」
しれっと答える。
行方は知らん。インベントリ内売却された物質の行方などしらない。そもそもインベントリ空間自体、存在が謎なのだ。
質問と答えに微妙なズレがあるがそんなもんはしらばっくれればいいのだ。
フロランシアは保身の為の嘘なら流れるように吐ける自信がある。
これは毒親持ちの影響だろうなぁと思い出す。
こうやって少しずつ前世を思い出すんだろう…………
裁判めんどくせぇーと脳内でグチっていたらお堂の入り口近くにいた住民が騒ぎ出す。
何だろうと思っていると、ヴシュ君より小さいアリジゴクがお堂をのぞき込んでいる。
すかさず鑑定を飛ばす。
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名前:ローレンツ4号
種族:ダンジョンマスター
年齢:8歳
レベル:0
状態:空腹
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フロランシアは心の中で盛大に咽せる。
自分が飼っていたダンジョンマスターだというのは思い出せた。
問題なのはローレンツ4号が私に懐いている素振りを見せると今までの嘘が台無しになる事だ。
ローレンツ4号は空腹を満たす為に私に接触してくる。
これは確定だ。
フロランシアは心の中でヴシュ君とローレンツ4号に語りかける。
「2体とも噛み付く感じで私に大顎を接触してみて」
伝えるとすぐに2体は私に大顎を触れさせてきた。
フロランシアは両手を後ろに回し(触ってませんよのポーズ)
そして表情をこわばらせて、数cm後ろに下がる。(虫怖いのポーズ)
フロランシアはヴシュ君とローレンツ4号同時に【パーティー申請】を飛ばす。【承諾】を得たので【マナチャネリング】を発動する。
凄い勢いでMPを吸われた。
結果フロランシアは昏倒した。
フロランシアが昏倒した事により裁判は無事閉廷した。
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ヴシュタークの里とローレンツ主要メンバー隊との合流はローレンツ4号に遅れること半月後になる。




