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推定悪役令嬢【出来ちゃった婚】でルート回避を目指す‼︎  作者: 猫モフ師団
1章 悪役令嬢side

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臨時会議

2026/10/11 全体修正

 訓練用砦と辺境伯領都を繋ぐ地下道は、全長8kmに及ぶ。

 その側面には宿屋用スペースや商店用の空きスペースがずらりと連なっていた。聞けば、我が娘フロランシアが設計と施工を手掛けたらしい。相変わらずあの子の規格外っぷりには頭が下がる。


 その地下道にある広めの一室を借り切り、避難民代表、各領の代表、安定してフォード辺境伯の代表が集まって臨時会議が開かれることとなった。

 椅子代わりの石材の上に魔物の毛皮を敷き、それぞれの面々が腰を下ろす。議長を務めるのは、我がローレンツ家の長男だ。


 長男がテキパキと現状の避難状況を読み上げていく。


「現在、ローレンツ家は5名中4名が訓練用砦1号棟、1名がヴシュターク領へ疎開中。使用人50名は全員が1号棟に避難を完了しています。

 ローレンツ領民と関係者533名のうち、520名は客棟へ。残り13名が領地に残留。寄子であるアビエス家40名も客棟に収容済みです。

 また、ローレンツ領兵200名は現在、ローレンツ4号ダンジョンに駐留。ヴシュターク子爵家4名と使用人30名も、訓練用砦1号棟に滞在しております」


 さらに長男は、半月後の移動計画へと話を移した。


「半月後、客棟の領民420名、我が家の使用人50名、ヴシュターク家の使用人30名、アビエス家の38名は、順次『ローレンツ4号ダンジョン』へと移動します。領関係者50名は各自の判断で移動、残りの50名は未定です」


 そこまで報告が進んだところで、フォード辺境伯閣下が小さく手を挙げた。

「報告にあった『ローレンツ4号ダンジョン』とやらの、入り口の所在地はどこだ?」


 私は閣下に「読んだら即座に焼いてください」と告げ、秘密契約の刻印が施されたメモをそっと手渡した。

 メモの内容はこうだ。


『3日前、突如としてローレンツ領都の中央に最初の入り口が発生。現在は厳重に封鎖済み。現在の出入り口は、訓練用砦1号棟と2号棟の中間地点にある地下道側面の宿屋用スペースに発生。このダンジョンはローレンツ領とここフォード領を繋ぐ大規模なものと推測される。1層目は穏やかな気候と無害な魔物しかおらず、安全が確認されたため、保全して避難場所として活用したい』


 読み終えた辺境伯閣下は、片眉をピクリと上げて唸った。

「……都合が良すぎないか? この最悪のタイミングで、こんな渡りに船な存在が生まれるとは」

「妻に口止めされている部分があまりにも多すぎまして……報告が遅れましたことを心よりお詫び申し上げます」

「あー……。いや、責めてはおらん。君の奥方や君の娘さんは、揃いも揃って超一級の秘密主義だからなぁ」


 得心のいった様子で閣下はメモを指先でつまみ、小さな火魔法を放った。メモはチリチリと音を立てて灰になっていく。


「それはそうと、話は戻るが……急に知らない家名が出てきたな。アビエス家ってのはど公の誰よ?」

「長男の嫁の実家です」

「嫁の実家って……。おいローレンツ、親族でもない者たちまでまとめて連れてきてたのか?」

「ええ、まあ。寄子ですし、何より長男の嫁の父親は私の職場での同僚(同格の騎士爵)ですから」

「一応、紹介してくれ。私のスキルで悪意の有無を確認させてもらうぞ」


 私はアビエス家の当主を呼び、閣下の元へと案内した。

 閣下はその当主の姿を見るなり、再び片眉を上げた。

「ずいぶんとお若いようだが……失礼ながら、まだ未成年ですかな?」


 少年のような外見の男は、生真面目な一礼を返した。

「はじめまして、辺境伯閣下。私はアビエス騎士爵家当主、アンブロース・アビエス。950歳です」

「きゅ、950歳……!? エルフ、かね?」

「いいえ、ハーフエルフです。妻は75%エルフですが」

「ふむ。ローレンツ君の奥方もハーフエルフだったよね。そっちの方の親戚なのかね?」

「いいえ、違います。ローレンツ卿の奥方様は『アーセルの森』のテレジア様ですよね。私は『アビエスの森』のアンブロース。ちなみに私の妻は『シダーの森』のエルヴィラでして、ローレンツ家に滞在している家庭教師のフラナガン・シダーは私の妻の兄にあたります」


 ……おいちょっと待て。

 私はエルフ界隈のあまりの狭さに、心の中で猛烈に動揺していた。

 妻がハーフエルフなのを忘れていたわけじゃない。だが、『アーセルの森』って何だ?

(いや、ぶっちゃけ完全に忘れてたな。見た目がどう見ても人間にしか見えないし……!)


 そういえば、結婚時に妻が連れてきた庭師も、料理人も、侍女もメイドも、全員ハーフエルフだった気がする。


 ……あれ?

 もしかして、このローレンツ家において、純粋な人間って私だけなのか……?


 そういえば領兵長も、時々耳が長くなったり短くなったりしていて不思議に思っていたのだが、あれはポーションを飲むと耳が伸びちゃう系の人(ハーフエルフ)だったのか。普通のおっさんだと思って完全に油断していた。


 ということは、つまり。

 このローレンツ領で早々と年を取り、老け込んでいくのは……私だけ。

 家族全員がいつまでも若々しいままなのに、私だけがヨボヨボの爺さんになるのか……!!


 不意に、目から熱い汗が溢れて止らなくなった。


「……ローレンツ君、なぜ泣いているのかね?」

「ええ、まあ……。私だけ普通に年を取るという残酷な現実に、今更気づいてしまいまして……」

「泣くのは後にしてくれ! 頼むから要望の方も早く報告してくれたまえ!」


「はい……」


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