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そして俺から見たあいつ

「上紺屋ー」


持木が間延びした声で俺を席から呼ぶ。それに反応して振り向くが、俺は行かない。

「上紺屋?」とまた呼ばれて首を傾けられるがまだ行かない。

そうすると持木…いや、誠人が少し怪訝そうな顔をした後盛大にため息をついた後口を開く。


「一将」


「ん」


そこでやっと俺は席を立って、俺を呼ぶ相手の元へ。

友達と確約もらってから大分経ったつい先日。ようやく名前を呼んでもらえるようになったのだが、語呂がいい、という訳の分からない理由でたまに苗字に戻される。

それが嫌で対抗してこっちも呼ぶのを苗字に戻しても誠人はまったく気にしないので、最近は名前を呼ぶまで動かない、というのをやっている。


そんな俺に気づいた誠人がよくため息つくが気にしない。呼んだ用はなんだ?と問えば、誠人が耳打ちするように背中を丸めるからとりあえず耳を傾けた。


「…最近、真堂とはどうなんだ?」


「……?どう、とは…?」


「…その…なんだ、…あー…仲良い、のか?」


「いや全然」


真堂といえば、まぁたまに用事があると話す程度だ。誠人の友人定義を出すんであれば友人でないし、ただクラスメイトといった所だろう。

そんな俺の言葉に誠人は眉間にシワを寄せる。なぜそんな顔を…?と思っていたら「俺が取り持ってやる、最近真堂がよくこっち見てるから捕まえる」と何故か腕まくりをしていて。いや何故…?というか見てるのか、あいつ。


誠人の突拍子もない行動を黙って見ていたら「お、ほら、目が合った。真堂ー」などと俺の肩越しに声を掛けて手招きをしている。

後ろから気配がひとつ増えて隣に並ぶ。本当に見てたのか…。


「どうしたんだ?持木」


「少しな。一将、手出せ。真堂も」


「…?」


ふたりして首を傾げながら利き手である右手を出すと、それぞれの手首を誠人が掴む。

そして俺と真堂の手を向かい合わせにして握手をさせた。


「握手。今日からお前らは友達な」


「はぁ」


「え、俺と上紺屋って友達じゃなかったのか?」


「誠人が言う友達定義はこれがないと友達じゃないらしい」


「まじか!じゃあ持木とも友達じゃないのか?」


「だろうな」


「えー…じゃあ持木、俺とも友達な?」


俺の手を握りながら左手を誠人に差し出す真堂。誠人はそれに目を丸くすると視線を右へ左へと流して何かを考えてる様子だったが…しばらくして少し照れくさそうにしながらその手をぎゅっと握った。

真堂は満足に笑ってるがどういう状況だ、これ…男3人で…握手…?


「とりあえず俺は真堂と一将が一番仲良くなるようサポートするから」


「いや、何故…?それってサポートされてなるもんじゃないと思うぞ」


「そうなのか!?」


「そうだろうな」


「あと一番は別に…」


「俺もいいかな」


「なんでだよ!?」


「お前がいる」


「俺も持木と仲良くなりたいなぁ」


俺たちの言葉に照れるとか恥ずかしがるとか、そういうのを見せずにめちゃくちゃ絶望的な顔をして手を離す誠人。その反応の意味のわからなさが面白いけど、なかなかショックだぞ…あの底抜けに明るい真堂もその反応に「えー…」としょんぼりしている。しかしそれにめげないのが真堂だ。握手を解放して肩をすくめた。


「うう…ひとまずさ、な、俺たちも名前で呼ばないか?友達第一歩というか」


「すまん、それは遠慮する」


うわ、ばっさりいった。それにはさすがの真堂もめちゃくちゃショックを受けている様子。すげえな、誠人…。なんで拒否したかはわからないが、つまりは唯一名前で呼びあってるのが俺だということが確定したのでこれはもう一番の仲良しということじゃないか、と思うけどそれを言ったらばっさり切られそうだから言わない。

羨ましそうな真堂の目も知らん。


「上紺屋とは呼びあってるのになんで俺はだめなんだ?」


「あー…、…んー…真堂が呼びやすいし、苗字で呼ばれるのも気に入ってる」


「なるほど、それは仕方ないな」


それで納得できるのか、さすが真堂だな…。二言三言交わして満足したのか真堂はその場から去っていく。

尚もどことなく納得してなさそうな誠人を見て、前の席の椅子を借りて座り目線を合わせた。


「…誠人、なんで真堂の名前呼ぶの嫌なんだ?」


「………」


誠人が困ったように眉を下げると、またひとつため息をついて声をひそめて一言告げた。


「……知り合いを思い出すから嫌なんだよ」


「知り合い?同じ名前なのか?」


「……」


誠人はそれ以上何も言わずに無言を貫いた。

こうなると誠人は絶対に口を割らない。頑固なんだよなぁ。

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