主人公のような彼から見た持木とは
持木誠人とは実に不思議な男だった。とくに目立つわけでもない、成績も普通、運動も普通、授業はまともに受けてるかと思えば寝てる。パンを齧ってるかと思えば、自分で作ったらしい弁当を平らげている。
どこにでもいる男子高校生だ、俺真堂太陽と同じように。
人々をどこまでも照らす太陽となれ。
それは曾祖母さんの遺言だった。
女系家族だったうちでようやく産まれた男が俺であり、俺を見ることなく亡くなった曾祖母さんが男が産まれたらこの名前を、と残したのだ。
そんな俺は名前に恥じないよう生きてきたつもりだ、この両手いっぱいに抱える人という人を助けたかった、幸せにしたい、笑ってほしい、優しく包み込むあの太陽にように。
だけど、光がある所には必ず陰が出来てしまう。光に無限はなく、光で見えない場所がある。
そこに、人知れず誰にも気付かれず、そっと手を伸ばす。見えない優しい光を放つ月のような存在、それが持木誠人だった。
例えば、ゴミ箱を持って歩いていた女子生徒が転びそうになった時、俺は女子生徒を支えて怪我を回避する。
ふと前を見ると女子生徒が転びそうになった際に手を離したゴミ箱が、たまたまそこで靴紐を結ぼうと屈んでいた男子生徒にかかりそうになった、ようだった。
持木はたまたまそれに通りかかってゴミ箱を受け止め、とん、とそこに置き直し、なおかつ男子生徒の背中に乗ったゴミクズを拾って捨て、そして去っていった。
男子生徒は気付かないし、女子生徒は支えた俺にお礼を言っていてゴミ箱の行方など気にしていない。
持木はそうやって、誰にも気付かれずに誰かを助けていた。
そんな彼がずっと気になっていた。声をかけようとすると何故かいつもうまくいかない。
「持木、」
「真堂くん!放課後空いてる?」
「……もて、」
「真堂!悪い、今日もバスケの助っ人してくれ!」
「………も、」
「誠人、飯」
「お前なぁ俺はお前の飯製造機じゃねぇぞ!?自分で作れ!」
「嫌だ、お前のが食いたい」
「お前に言われたって嬉しくねー…」
といった具合に何故か話せる機会がない。とは言え、持木はどうやら視界は広く持っているようでたまに話しかけられずにしょん、とした俺に気づいてくれる時がある。
ある、のだが…。
「…は!真堂…!?…上紺屋、真堂だぞ、そら行け、ほら」
「…?……?」
何故かそういう時は必ず上紺屋を押し付けてくる。上紺屋は全く意味がわからないという顔をしてるし、俺も上紺屋に用はない。
ふたりで「?」といった顔をするが持木だけが必死だ。
さらにそこに奥墨委員長が通りかかると、持木は挙動不審になって上紺屋を押したり引いたり。
見てる分には面白いが……持木の考えてることがさっぱりわからない。
だからこそ知りたいと思うのだろう、俺に似ているようで違う、持木誠人という男に。




