打ち明け話
バイト帰り、凪くんと一緒に駅まで歩いていた。
はー、この幸せ……
手をつないで、腕が触れていて、ゆっくりと時間を惜しむように二人で歩くこのひと時が幸せすぎる!
ただ一緒にいるだけでこれだけ幸せなのって何なんだろうね!?
くだらない話しかしなかったとしても、ただ一緒にいる時間を積み上げていくだけで、同じだけ凪くんに対する好きな気持ちも積みあがっていってる気がする。
「……そういえば紗羽さん、俺、考えてることがあるんですけど」
前を向いて歩きながら、凪くんがぼそっと言った。
「うん? なに?」
「俺、部活に入ろうかと思って」
「部活?」
「はい。陸上部に入って、もう一回高跳びやってみようかと考えてます」
「え」
私は大きく瞬きした。高跳び? だってそれ、凪くんは怪我をして、それであきらめたんじゃ……
「どこまでやれるかは分からないんですけど。でもやれるところまでやってみようかと思って」
「えっと、それ、でも……その、大丈夫なん? 怪我したところとか」
突然のことに頭が混乱する。
えーと、そしたら凪くんはバイトはやめて、部活一色になる、ってこと? こんな風に……今みたいに一緒に過ごす時間はなくなっちゃうってこと……?
「リハビリは、バイト代で賄える部分だけ行こうと思ってます。あとは自分で工夫しながら練習こなして、どれくらい跳べるか確かめたくて」
そうだ、リハビリ専門のトレーナーの人のところに通うには、ものすごくお金がかかるから、それを親に負担させたくないから陸上はあきらめるって凪くんは言っていた。でも、そうじゃなくて、親に負担をかけずに、自分でできる範囲でやっていこうって、そんな風に思ったの?
「それ……なんでなん? 前はあきらめたって言っとったよね? それがなんで」
私が尋ねると、凪くんは私を見て少し笑った。
「心境の変化というか。まだ高1やし、自分で自分の限界を決めてしまわんくてええかなって思ったんです。まだ俺は自分でほんまにダメやって思うところまで頑張ってへんなって。必死で頑張って、試せるもん全部試して、努力して、それでもどうしてもダメやったらあきらめたらええかな、と思って。今の俺はまだそこまでなにもしてへんから」
静かに話しているだけなのに、凪くんの姿がめちゃくちゃ輝いて見えた。
うわー、何それ! めちゃくちゃかっこいいんですけど……!
私はつないでいた手をぎゅっと握りしめた。
「凪くん、頑張って! 私めっちゃ応援してる! 凪くんがバイト辞めてしまうんは寂しいけど……でも、連絡は取りあおうね? 会える日も少なくなってしまうんやろうけど……それは寂しいけど……でも凪くんがそんだけやりたいって思ってることは応援したい。あの、私のこと忘れへん程度に部活に打ち込んでくれたら……」
う、最後にめちゃ自分勝手な一言を挟んでしまった!
これだけ純粋に高跳びに邁進しようとしている凪くんに、ウザいことを言ってしまった……
凪くんは私の言葉を聞いて吹き出した。
「あの、大丈夫です。別にバイトはやめないので」
「えっ? そうなん?」
「はい。もちろん今までみたいにはシフトに入れませんけど。でも土日のどちらかは部活ないんで、その日に大会が入っていなければバイトできますし、平日も一日は部活休みにすることになってるんで、その時もバイトに来れます」
「そ、そんなん、大丈夫なん? めっちゃ部活やってて、たまの休みの日にバイトなんて……めちゃくちゃ大変やん」
「体力的にはどうってことないんで、大丈夫です」
本当に!?
半信半疑ではある……けど、凪くんがバイトを辞めない、と聞いて、私はほっとしていた。
めちゃくちゃ自分勝手って分かってるけど……でも、学校が違う私たちが会えるのって、基本的にバイトがある時だけだから……
凪くんが辛くないのであれば、これからもちゃんと毎週会える日があるというのは、私には安心材料になった。




