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昼下がりのkamome café  作者: はる
紗羽の恋
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29/44

待ち合わせ

 バイトが休みの日曜日、凪くんと待ち合わせた。

 初めてのデート!!!!!!

 今まで学校かバイト先の制服姿しかお互い知らないのに、私服姿でデート!

 どんな格好をしたらいいのかまるで分からなくて、私は死ぬほど調べまくった。SNSやら雑誌やら友達やらにリサーチして、考えに考えまくった。

 ミニスカート……を履きたかったけれど、恥ずかしくて無理で膝上丈のスカートを履いた。それからリボンのついたシャツ。これは、前で結ぶのでちゃんと縦結びじゃなくてきれいなちょうちょ結びにできた!

 ああー、この格好でいいかどうか分からない……!

 分からないけど、それ以上どうしたらいいのか分からなかったのでそのまま家を出た。

 バイトの時にいつも待ち合わせているコンビニ前に向かう。

 バイト……

 バイト先の人には、凪くんと付き合っていることはあっさりばらしてしまった。

 なんかもうバレバレだったみたいだし、隠しても隠さなくても私の態度がおかしいことに変わりはないんだから、もういいかあ、と思って。

 バイトの人たちは、私たちが付き合っていることを打ち明けると、一応初めて知った! って顔をしてくれた。

 美咲さんは両手で口を押さえながら、あらあらあらあら! ってめちゃくちゃ楽しそうに笑っていた。

 一ノ瀬さんも笑顔で、へえー、佐久間くんやるやん、となぜか凪くんのことを褒めていた。

 みんなに打ち明けたし、これからは付き合ってるからってバイト中に気を緩めたりしないで、しっかり働くぞ! と決意した。

 ……まあそうは言っても、ちょっと狭い場所で凪くんと体が触れたりすると、やっぱりどきーん! としてちょびっと挙動不審になったりはしてしまうけど……

 でも、大丈夫! 凪くんのこと大好きだけど、私はバイトだって大好きなんだから、どっちもちゃんと大切にするんだ!





 コンビニ前に着くと、凪くんはやっぱり先に来ていて私を待っていた。

 凪くんって、絶対約束の時間より早く来て待ってくれてる。どれくらい早くに来てるんだろう? 待たせちゃって申し訳ないな……

 うわあー、そして、私服の凪くん……!

 五分袖のパーカーにジーンズだ。シンプルなのに、めちゃくちゃかっこいい……!

 やっぱりスポーツをやってて、体が引き締まってるから? 姿勢がいいのかなあ? とにかく、パーカーの襟元からすっと伸びる首筋がめちゃくちゃ素敵で、一瞬私は見とれてしまった。

 少し離れたところで立ち止まっていた私に、凪くんはすぐに気付いた。


「おはようございます、紗羽さん」


 声をかけられてはっとする。慌てて凪くんのそばに駆け寄った。


「おはよう!」


 今日は朝から一日中一緒にいられる! 仕事とか関係なく、ずーっと一緒! めちゃくちゃうれしくて心が浮き立つ。

 凪くんは私を見て笑顔になった。


「私服の紗羽さんですね」


「えっ、うん。凪くんも、私服やね」


「なんかいつもと違う感じがします」


「……ほんまやね」


 ……今日の格好、変じゃないよね? 凪くんは自分からかわいいとか似合ってるとか言ってくれるタイプの人じゃないって分かってるけれど、私からかわいい? なんて聞くことはもちろんできないので、ちょっと不安になる。

 私はシャツのリボンのわっかを両手でつまんで見せた。


「今日は、ちゃんときれいにちょうちょ結びできてん」


「はい、きれいです」


 ……それは、ちょうちょ結びのこと……だよね?

 ああーもう、私、無駄に変なことばっかり考えすぎ!


「ところで紗羽さん、今日なんですけど、いきなりだけど昼飯なにが食いたいとかありますか?」


「えっ? ううん、特に考えてへんけど……」


「俺もあんまりよく分かんなくて、学校のやつらに聞いてみたんですよ。そしたら、ハワイの料理出すカフェがあるらしくて、そういうのもし紗羽さんが好きだったらそこ行ってみませんか?」


「ハワイ?」


「はい。フードも甘いのもいろいろあるらしいです。女性にも人気があるらしいんで、紗羽さんもそういうの好きならって思って」


 私たちが待ち合わせたのは十一時だ。お昼にはまだ少し早いけれど、今日は日曜だし、そういうカフェに行くのなら早めに行っておく方が確かに良さそうだった。


「ええね、ハワイって、パンケーキとかあるんかな? そういうん好き」


「ならその店行ってみましょう」


「え、それ、学校の友達が教えてくれたん?」


「すみません、自分で調べてみても、どういうところがいいのかよく分からなかったんで……学校のやつらなら、彼女がいるやつもいるし、女性が好きそうな店を聞けたんで」


 わざわざ今日のデートのために、凪くんもいろいろ調べてくれてたんだ!

 それだけで私はうれしくなった。





 ハワイ料理のカフェは、オープンしたばかりっぽかったのに、すでにけっこうお客さんが入っていた。どうやらかなり人気があるお店みたい。

 お店の入り口に南国の花が飾られていて、それっぽい音楽も流れている。


「すごいねえ、なんかいかにもハワイっぽい感じのお店やね!」


「そうですね」


 お店に入って窓際の席に通される。

 すれ違う店員さんが、「アロハ!」と声をかけてくれるのがまたハワイな感じ!

 お水を持ってきた店員さんが、凪くんを見て笑顔になった。


「凪!」


 ……え?

 驚いてその店員を見る。凪くんも驚いたように目を見開いた。


「ナズナ」


「おおー、凪やん。ほんまにデートで来たんやー」


 ……あ、凪くんのクラスメート……

 男子も女子も、みんな名前で呼び合ってるっていう。

 え、このお店を教えてくれたのって……この女の子、なの?


「なに注文する? 凪、ハンバーグ好きやろ? そしたらロコモコとかええんちゃう?」


 ナズナと呼ばれた女子は、私のことはほぼ無視して凪くんに話しかけている。

 凪くんは眉をひそめた。


「注文はメニュー見てこれから決めるから。ナズナはちゃんと仕事せえや」


「はいはい。注文決まったら教えて。凪には特別にサービスしたるから!」


 その女子は笑いながら去っていった。

 私は彼女が目の前にいた間、ほとんど息をしていなかったことに気付いて、ふう、と小さく息継ぎした。

 凪くんは眉をひそめたまま私を見た。


「……紗羽さん、すみません。あいつ、ナズナ……クラスメートなんですけど。この店でバイトしとるって知らんくて。ここの店教えてくれたんは他のやつやったんですけど」


「あ……ううん」


 他にどう答えたらいいのか分からなかった。

 別に……前から聞いてたし。クラスメートとは名前で呼び合ってて、けっこうみんな仲が良さそうで……だから今のやり取りだって普通のことなんだよね?


「気まずい思いさせてすみません。この店、やめましょう。他にいくらでも店なんかあるんやし、わざわざここでメシ食う必要ないし」


「え? え、いや、待って」


 すぐに席を立とうとする凪くんを慌てて止める。

 そんな。あの女子がいたのはびっくりしたけど……でも、このお店だって、凪くんが私と来ようと思ってわざわざ友達に教えてもらったんでしょう?


「えっと、ほら、私お腹空いたし! ええやん、おいしそうなんいっぱいあるみたいやし。ここで食べよう? 私このポキってやつにしようかな」


 私はマグロとアボカド丼みたいなものが載っている写真を指さした。


「そんな無理せんくてええですよ」


「無理なんてしてへんよ。ほら、ドリンクも、この青いレモネード飲みたいし。私これにしよっと。凪くんは? ……ハンバーグ、好きなんやったら……」


「いえ」


 凪くんは身を乗り出して、私が見ていたメニューに手を置いた。


「俺、ハンバーグは和風おろしで食うんが好きなんで。じゃあ、この豚肉? カルアピッグ? てやつにします」


「な、なんかそれ、ものすごいお肉! って感じやね」


「うまそうです」


 その言い方がおかしくて私はあは、と笑ってしまった。

 私が笑ったのを見て、凪くんも表情を緩めた。


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