↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約破棄されましたが、最強のお兄様がただでは済ませません  作者: 百鬼清風
第二部 竜姫の報復

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
48/51

第20章 竜帝国最強戦士3

 ジュリアンは探知魔法ウィンド・ソナーを解いた。森に確かめに行くことはせず、生徒会室に留まる。今感じた異常を、誰にも話さないと決めた。


 ジュリアンは息をのんだ。アーサーの普段の水魔法では、あの衝撃と相手の動きは説明できない。何か恐ろしい魔法を使った。土魔法を使った時に発する音に似ている。しかし、何かが違う。

 アーサーが、いきなり王太子になったのは、考えてみれば話が出来過ぎている。あの魔法が、その秘密だとしたら? 何にせよ、軽はずみに口にすべきではないと考えた。聞くならば、機会を探った方がいい。



 授業が終わると、私は教室の窓辺にいるリゼリアへ声をかけた。


「リゼリア、食堂へ行きませんか」


 彼女は閉じた教科書を手に持ったまま、外を見ていた。返事がないので隣へ行くと、ようやくこちらを向く。


「マチルダ。何か言った?」

「お昼をご一緒しませんか、と」

「ああ、もうそんな時間なのね。もちろん、行くわ」


 リゼリアは明るく答え、教科書を鞄へ入れた。私がドアを開けて待っていると、窓の方をもう一度見てからついてくる。


「今日はお兄様にも会えるといいのですけれど」

「アーサー先輩が来るの?」


 リゼリアは廊下へ出かけたところで止まり、今度は、すぐに返事をした。


「お忙しいですから、約束はしていません。食堂で会えると嬉しいと思っただけで」

「そう。今朝は会った?」

「いいえ。今日はまだお話ししていませんが……お兄様に何かご用ですか?」

「用というほどではないわ。ただ、今日も学園にいるのかと思って」


 この前も、お兄様がいつ学園から王宮へ行くのか尋ねていた。

 お兄様は素敵だから仕方ないが、婚約者として彼女の態度は気になる。まさか、お兄様に横恋慕を?


「私も今日のご予定までは聞いていないのです。何かお伝えすることがあれば、私を通していただかないと」

「いいの。何も言わなくて」


 私が言い終わる前に、リゼリアが答えた。

 少し驚いていると、彼女はすぐに笑顔を作った。


「忙しいのでしょう? わざわざ呼んでもらうほどのことではないもの」

「そうですか。では、先に二人で行きましょう」

「ええ」


 食事を始めても、リゼリアからは話しかけてこなかった。


「何か気になることがおありですか?」

「大丈夫よ。ちゃんと食べるから」

「……食事のことではなくて」


 リゼリアは私を見た。それから、困ったように苦笑する。


「ごめんなさい。少し考え事をしていたの」

「お疲れでしたら、ここで休みますか。急がなくてもいいですし、私も待っていますから」

「いいえ。すぐ食べ終わるわ」


 はっきりと言われて、私も頷いた。話したくないことまで無理に聞き出すつもりはない。ただ、目の前で考え込まれるより、はっきり言ってほしかった。


「では、行きましょう。話したくなったら、いつでも聞きますから」

「ありがとう、マチルダ」


 リゼリアは、食堂から帰り誰かの足音がすると、そのたびに振り返っていた。



 その夜、王宮の執務室で知らせを受け取ったアーサーは、書かれた名前を読み直した。治療魔法を受けた左腕には、もう痛みはない。だが、朝の決闘を終えた時とは違い、すぐには次の指示を出せなかった。


「オズモンド公爵が、殺された……?」


 マーガレットの父であるオズモンド・ブラウン公爵が、何者かによって暗殺された。

 オズモンドは国王直属の勅命騎士である。敵のあらゆる感覚を奪う、闇魔法の上位魔法ダークプリズンの使い手だった。アーサーはその実力を知っている。

 要人が狙われることは分かっていた。警戒するように連絡はした。その上で、あのオズモンド公爵が倒されるとは。


 アーサーは受け取った報告を机に置いた。グレイは倒した。だが、他の刺客も只者ではない。


 再度、勅命騎士達へ、警戒するよう連絡を送ることにした。オズモンドが敗れて死んだこと、学園に現れた刺客の実力から、敵は只者ではないと明記する。

 それぞれの宛先を確かめて封をした手紙をクララに渡し、命じた。


「急いで届けろ。本人へ直接渡すんだ」



 同じ夜、リゼリアは、手のひらに乗るような小さなドラゴンが部屋の窓辺にとまるのを見た。その足には、手紙が括り付けてある。


 それはグレイの敗報であった。

 学園へ赴き、アーサーと戦って敗れた。

 何度読み直しても、名前はグレイだった。別の戦士のことではない。


「グレイほどの戦士が、殺されたのか!?」


 昨夜、門前で命じた時には、五人の誰もためらわなかった。リゼリアも、彼等なら成し遂げられると信じて送り出した。人間ごとき相手に後れをとる戦士たちではない。アーサーが強力な儀式魔法の使い手だったとしても、それは対人戦で役に立つものではないはずだ。


 どうやって……。

 紙に書かれた短い知らせからは、それ以上のことは分からなかった。


 リゼリアは窓をはなれて、椅子へ座り直した。今ここで部屋を飛び出しても、確かめることはできない。だが、こちらには竜帝国選りすぐりの戦士が四人残っている。今は彼等を信じるしかない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。