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婚約破棄されましたが、最強のお兄様がただでは済ませません  作者: 百鬼清風
第一部 王太子の婚約者

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第8章 兄妹の当たり前と王太子の報復2

 同じ日の夜、エドワードは王宮の自室で、トリスタンの退学を記した報告書を机へ投げた。

 トリスタン・クロウリーは、自分の名を出して放免を求めたにもかかわらず退学となった。王太子派の者が自分の名で守られなかったことが、エドワードには我慢ならなかった。


「学園長も、あの兄妹も、私を侮っている。国防にとって重要な立場の人間とは聞いているが、たかが男爵ではないか! 実際に決闘を見ても、優秀な武術家のようだが魔力は男爵として普通だ」


 向かいのソファーにはマーガレットが座り、その隣には一人の男子生徒が控えている。その後ろには、王太子派の生徒達の中でも側近クラスの者達が何人か立っていた。。


 ナイジェル・フェアファクス。フェアファクス伯爵家の次男で、エルデン王立魔法学園の二年生として王太子派の裏の連絡と情報集めを担う人物だ。短く整えた濃い茶髪に灰色の目を持ち、小型の革表紙の手帳を手にしている。


「トリスタン様は、きっとマチルダたちに命が危ういところまで追い詰められていたのです。それで、正当防衛で攻撃魔法を……。なんと、お可哀想な」


 マーガレットが不安そうにエドワードを見た。


「次は殿下まで、あの方々に傷つけられるのではないかと心配です」

「そのようなことは許さん。自分たちの立場を思い知らせる」

「その件について、ご報告がございます」


 ナイジェルは机へ地図と一枚の報告書を広げた。


「国内の者を使えば、殿下とのつながりを疑われます。そこで、どこの国にも所属しない灰狼傭兵団へ接触しました」


 報告書には、左頬に古い傷を持つ男の姿絵があった。


「団長はギデオン・ヴァルガ、三十八歳。貴族の暗殺を何度も成功させています」

「兄妹を任せられるのか?」

「暗殺を得意とするだけあって、魔法も今回の計画に適しています」


 ナイジェルは王都と学園を結ぶ道の途中、林に挟まれた区間を指した。


「ここは人通りが少ない盆地で、木々に遮られ街道の前後からも見えません。ギデオンは馬車がこの地点へ入ったところで、《グランド・デトネーション》を使います」

「どのような魔法ですの?」

「地面の下で土の魔力を爆発させる軍用の攻撃魔法です。本来は敵兵を陣地ごと吹き飛ばすためのものですから、ここで使えば、馬車ごと乗っている者は全滅です」


 エドワードは地図を見下ろした。剣を抜かせずに倒せる。少々武術が得意なだけでは、どうしようもないだろう。


「攻撃の直後に《サイレント・ヴェール》を使います。団員の姿と物音を覆い隠す闇魔法です。誰かが駆けつける前に、全員が林を抜けて撤退します。我々の計画だと知られる心配はありません」

「万が一にも、殿下のお名前は出ませんわよね?」

「依頼は仲介人を通します。殿下へつながる証拠は残りません」


 ナイジェルは手帳を閉じた。

 エドワードはトリスタンの退学を記した報告書を燭台の火へ近づけた。処分を告げる文字が黒く崩れ、炎にのみ込まれていく。


「ギデオン・ヴァルガへ伝えろ。兄妹を殺せ」

「御意」


 ナイジェルが一礼した。

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― 新着の感想 ―
おはようございます。 国の行く末を第一に考えるなら、このクソバカ王太子は廃嫡するべきでしょうね。
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