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婚約破棄されましたが、最強のお兄様がただでは済ませません  作者: 百鬼清風
第一部 王太子の婚約者

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第8章 兄妹の当たり前と王太子の報復1

 放課後の生徒会室で、ジュリアン会長が最後の書類に目を通し、ペンを置いた。


「これで今日の仕事は終わりだね。せっかく五人揃っているんだ。学院の近くにできたカフェへ行かないかい?」


 私とお兄様、ジュリアン会長、アリス様、レオポルド様で出かけるのは初めてだ。まだ帰宅には早い。


「私は賛成です。お兄様はいかがですか?」

「マチルダが行くなら、俺も行く」

「私も行きたいわ。今日は甘いものが食べたかったの」


 アリス様の肩は治療を終えており、歩く様子にも痛みは残っていない。それを確かめ、私は安心して鞄を持った。


 五人で訪れたカフェは、白い壁と大きな窓のある明るい店だった。私とお兄様が隣に座り、向かいへレオポルド様、その左右へジュリアン会長とアリス様が腰を下ろす。

 メニューには、彩り豊かな菓子と飲み物が並んでいた。


「お兄様、この苺のショートケーキはいかがですか?」

「美味そうだな。一つを二人で食べるか」

「はい。飲み物はこちらにしましょう」


 私が選んだのは、カップル用の苺と木苺のベリーソーダだった。背の高い大きな1つのグラスに赤いソーダが入り、二本のストローがさしてある。


 アリス様は焼き林檎のタルトとシナモンティー、ジュリアン会長は蜂蜜レモンのタルトと紅茶を選んだ。レオポルド様は濃厚チョコレートのガトーとブラックコーヒーだ。中央には、皆で分ける胡桃の焼き菓子も頼んだ。


 先に運ばれてきたベリーソーダを、お兄様が私との間へ置く。


「飲もうか、マチルダ」

「はい、お兄様」


 二人で同時にストローへ口をつけた。細かな炭酸のあとに苺の甘みが広がり、木苺の酸味が後味を軽くしてくれる。


「美味しいですね」

「ああ。マチルダが好きそうな味だ」


 顔を上げると、向かいの三人がこちらを見ていた。


「どうかなさいましたか?」

「二人とも、本当にためらいがないんだね」


 ジュリアン会長に言われ、私は二本のストローを見た。


「二人用ですから、一緒に飲むものではありませんか?」

「間違ってはいないのだけれどね」

「会長、諦めろ。こいつらには通じん」


 レオポルド様はブラックコーヒーを飲み、短く息を吐いた。


 やがて、苺のショートケーキも運ばれてきた。白い生クリームの上に、大きな苺が三つ載っている。

 お兄様は一つ目の苺をフォークに刺し、私の前へ差し出した。


「ほら、マチルダ」

「あーん」


 苺をいただくと、甘い果汁が口いっぱいに広がった。


「次はお兄様です。あーんしてください」

「あーん」


 私はスポンジと生クリームを一口分取り、お兄様へ食べさせた。

 レオポルド様がカップを受け皿へ置いた。


「待て。お前たちは、いつもそうなのか」

「子供の頃から、そうですが」

「マチルダは眠くなると食事の手が止まったからな。俺が食べさせていた」

「お兄様の帰りを待っていたからです」

「昔の話ではない。今のお前たちの話だ」


 アリス様が吹き出した。


「レオポルド先輩が言いたいのは、二人が恋人同士にしか見えないということよ」

「「恋人?」」


 私とお兄様の声が重なった。


「一つのグラスを二本のストローで同時に飲んで、互いにケーキを『あーん』でしょう?」

「ですが、私たちは兄妹ですよ。当然のことでしょう」

「兄妹なら、食べ物を分けるのは当たり前だろう」


 お兄様も不思議そうだ。


「普通の兄妹は、そこまでしない」


 レオポルド様が断言した。


「レオポルド様は、ご兄弟とお菓子を分けないのですか?」

「分ける時は皿へ取り分ける。食わせ合ったりはしない」

「自分で口へ運ぶか、お兄様に運んでいただくかの違いだけでしょう?」

「その違いが大きいと言っている」


 私には、やはり大きな違いとは思えなかった。


「二人にとっては、昔から続いている普通のことなんだね」


 ジュリアン会長が苦笑する。


「ただ、ほかの人には恋人のように見える。それは覚えておいた方がいいよ」

「分かりました。でも、お兄様がお嫌でないなら、やめる必要はありませんよね?」

「当然だ。マチルダと一緒に食べる方が美味い」

「私もです」

「もう、誰が何を言っても無理そうね」


 アリス様が呆れ、ジュリアン会長も頷いた。レオポルド様は説得を諦めたらしく、チョコレートのガトーへ戻った。


 私たちは残ったケーキを最後まで半分ずつ食べた。帰り際、アリス様がまた五人で来ようと言い、皆が賛成した。


「お兄様、次に来る時は何をいただきましょうか」

「マチルダが食べたいものでいい。どうせ一緒に食べるのだろう?」

「もちろんです」


 三人は揃って私たちを見たが、もう誰も注意しなかった。私たちは揃って店を出た。

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― 新着の感想 ―
【男女七歳にして席を同じゅうせず】を思い出した。義理だとしても、教育として分別がつくようにしないと。王太子妃教育というか婚約者以外との距離感についての教育失敗してないか?悪評のもとになっちゃう。
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