その仕事、馬引き(4)
野営地での夜は長い。
馬車の運行は、あたりが薄暗くなる頃に野営地に着くように計画される。大体、夕方5〜6時の間。野営の準備や馬のケア、食事等で3時間ほど費やす。遅くても夜9時には、就寝する。そして、翌日はあたりが明るくなり始める4時頃に目覚め、出発の準備に入り、軽めの朝食をとって、5時に出発、というのが野営地での過ごし方。乗客の中には、移動中も馬車の中で眠る者もいるが、荷台は揺れるし、床も板で固い。ましてや横になることもできないので、野営地とはいえ、寝袋に包まって横になるのとでは疲れのとれ方が違う。
エリクは、焚き火に枯れ枝を数本投げ入れ、火を守る。そして、香草も投げ入れる。焚き火は夜通し焚いておく。香草を入れるのは魔獣対策のため。この香草は、燃やすと魔獣の嫌がる匂いを煙と共に周りに撒き散らす。人にとっては、逆に心地よい“香り“なのだが。野営地では、必ずこの香草を焚き火で燃やしているため、どこの野営地でも、周辺はこの香りが染み付いている。そのためか、普段から魔獣には避けられているようだ。ちなみに、馬やいわゆる家畜にも影響はない。
時間になり、エリクは相方と交代して、寝袋に収まる。もう一度意識を野営地の外側に向ける。嫌な気配は感じない。安心して眠りにつく。
翌朝。時間になり乗客たちも各々起き出し、出発に向けて動き出す。エリクたち馬引きも出発の準備を始める。馬に食事を与え、荷台を整える。積荷の確認をしてから自分たちも朝食を摂る。馬引きの朝食は、薄切りの干し肉を2枚かじるだけ。あとは沸かした湯を飲み、最後に焚き火を消して、出発の準備が完了する。乗客たちが荷台に乗ったことを確認して、出発する。
「出発しま〜す。」




