その仕事、馬引き(3)
馬引きの仕事は、馬を操り、荷物、乗客を無事に送り先に届けること。そのほかに、街道、休憩場所、野営地の状態確認。魔獣、野盗の出没状況の確認。こういったことも、馬引きの仕事であり、それらの確認結果を報告書にまとめて、ギルドに提出することが義務付けられている。そして、この報告書をもとに、街道や休憩場所等の整備・整地が進められる。魔獣の出没状況によっては、街道封鎖や師団・冒険者らによる魔獣討伐等が行われる。馬引きの仕事は、一見地味だが、国家、大陸にとって、とても重要な役目を担っている。
そして、実は、馬引きにもランクが存在する。それは、
領内のみ行き来できるCランク
国内まで行き来できるBランク
他国との間を行き来できるAランク
である。
このランク制度は、大陸に存在する各国共通の決まり事であり、国家間協定として規定されている。そして、その管理は、各国の商業ギルドが担っている。
Cランクは、新入りの馬引き。1年間馬引きを経験すれば、自動でBランクに格上げされる。ただし、Aランクに上がるためには、試験に合格する必要がある。その試験は、行き先国または、大陸共通の試験に分かれる。行き先国の試験合格者は、その国のみ行き来でき、普通にAランクと呼ばれる。対して、大陸共通試験の合格者は、大陸内全ての国に行き来ができ、特Aランク、特Aと呼ばれる。当然、大陸共通試験の方が格段に難しい。試験内容は、共に、筆記試験と実技試験。エリクは、大陸内においても数少ない貴重な“特Aランクの馬引き“である。
エリクは、焚き火の火を守りながら、あたりを見回す。今晩は満月。綺麗な月が上空に浮かんでいる。月明かりに照らされているので、野営地の周辺は見通せる。エリクは目を瞑り、意識をその外側に向ける。野営地を中心にして、半径約500mほど。特に怪しい気配はない。“気配察知“。馬引きでは誰も持ち合わせていないスキル。しかし、“無適正“のエリクは、隠密系のスキルを保有している。王都に来てからは、学園に通っている間も、隠密系のスキルに磨きをかけてきた。
「今のところ問題なさそうでよかった。」




