その仕事、馬引き(2)
エリクが王都に連れられてきてから10年。王立学園を卒業してからは3年目。馬ひきの仕事もすっかり板についてきた。
「エリク、ほれ。」
「ありがとう。」
夕食後の茶を受け取る。馬引きにとって、少し気を休められるひととき。しばらく、相方と他愛のない話をして過ごす。乗客も各々でそんな時間を過ごしている。
「それじゃ、俺は、先に寝る。時間になったら起こしてくれ。あとはよろしく。」
「うん、わかった。おやすみ。」
“おやすみ〜“と言って相方は寝袋に包まる。
領都アルセス方面行きの馬車。アルサリオス伯爵領の領都アルセスを経由して最終目的地、その隣のセントリアンス辺境伯領の領都セントリアに向かう。アレドリア王国の東端に位置し、エルフ国との国境に位置する土地。王都ナシアからは、馬車で4日の距離。今は、領都アルセスまでの中間地点。本日は、ここで野営する。野営をする場合、食事は基本的に、各自で済ませる。馬引きも自分たちで食事を用意する。ただし、トイレに関しては、商業ギルドから馬車に2つ提供される。簡易トイレだが、特殊魔法が施されているため、排泄物は自然に還されるようになっている。これは、アレドリア王国だからではなく、この大陸に属する人族の国同士で取り決めた国際ルール。不要な伝染病を流行らせないための措置。野営地に限らず、休憩場所でも必ず設置する。
そして、休憩は必ず、約1時間おきにとる。そうしないと、馬車を引く馬がへばってしまうからだ。もちろん、回復魔法や回復ポーションは、馬にも有効だが馬引きで回復魔法が使えるものはいないし、即効性の高い回復ポーションは高価で貴重なものなので、馬車を引く馬には支給されない。とはいえ、低級のポーションが大きめの瓶1本支給されるため、休憩ごとに少しずつ水と一緒に馬に与える。休憩と低級ポーションで、馬の疲労を和らげる措置をとっている。
また、休憩場所と野営地は固定で、商業ギルドが指定した場所を使用することで、場所探しによる余計な負荷はない。さらに、馬引きは、1日のうちに目的地に到着できる場合は1名、野営が必要な場合は必ず2名になる。そうすることで、野営をする際、荷物や乗客の安全を確保するために、交代で睡眠をとることができる。




