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職業は御者  作者: 勢崎カスリ


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15/16

その仕事、国越え

 「エリク、今回はご苦労だったな。」

 「いいえ。それで、後ろは突き止められたのですか?」

 「あぁ、とんでもねぇ大物が釣れたよ。あいつらからしたら、まさか、王女殿下に手ェ出すとは思っても見なかったようだがな。」

 「そうですか。まぁ、誰が釣れたかは興味ありませんが。でも、相手のその反応、本当なんですかねぇ。」

 「とぼけていると?」

 「だって、“本当にそうだ“、という証拠もないんでしょ?」

 「まぁな。」

 「それなら、どうとでも言い逃れできますよ。」

 「それもそうだな、しばらくは要監視、ってとこか。」

 「いや、ずぅ〜と、ですね。ほとぼりが冷めるまでは、大人しくしているでしょうから。」

 「確かにな。やれやれ。」

 「では、僕はこれで。」

 そう言って、ギルド長室を後にするエリク。そのまま階下の受付に寄って、次の運行予定を受け取る。


 「はい、エリクさん、こちらが、次の運行予定です。」

 「どうも。えっと、ソルティラ王国、“国越え“か。久しぶりだな。アプレを届けて、乾燥薬草を持ち帰る、か。アドラーさんとこの荷物だね。」

 「はい、三日後に荷積み、その次の日出発です。一応、“通常“ですが、遠出なので、くれぐれもお気をつけて。」

 「わかりました、ありがとう。これなら温泉、浸かれるね。」

 「ですね、疲れを癒してきてください。」

 「そうします。では。」

 そう言って、ギルドを後にして、さっそく、国越えの準備に入った。



 「10人。あのさ、人のものを奪おうってことは、その逆もあるってこと、承知の上だよね?」

 「はぁ?何を言ってる、“馬引き“如きが。まさか、俺たちと張り合おうってか?お前一人で、この人数を?これでも俺たち、Dランクだぜ?」

 「・・・」

 確かに、Dランクの冒険者崩れが何人かいる。他のものはEランク、せいぜいFランク。いずれも冒険者崩れ。だが、エリクにとって、“ランク“は関係ない。

 「かまわねぇ、やっちまえ。で、いただくもんいただいて、さっさと、ずらかるぞ。」

 「「へい!」」

 野盗の頭領と思しき男の後ろにいた2、3人がエリクに飛び掛かる。

 (ニヤッ)

 スゥ〜。

 「消えた?」

 「ど、どこ行った?」

 ドサッ

 「どうした?」

 「し、死んでる!」

  ドサッ

 「まただ。」

  ドサッ

  ドサッ

 「何が起こってるんだ?」


 「残るは、あなた一人、ですね。」

 「お、お前が?んぐ・・・」

 「お静かに。では。」

  グサッ! ドサッ



 ここは、ソルティラ王国に入った渓谷沿いにある野営地。綺麗な満月が夜空に浮かんでいる。月明かりに照らされて浮かぶ二つの影。


 「ごめんね、ミラ。こんなところまで。」

 「ううん、別に構わないわよ。“役目“だし。それに悪いのは、アンタを襲った、コイツらなんだから。こっちこそ、遅くなってごめんね。あれ?今回は一人?」

 「うん、“国越え“だからね。」

 「そっか、特A少ないもんね。それにしても、相変わらずエリクの仕事は“綺麗“よね。」

 「そう?」

 「えぇ、私たちって、ただ“コレ(死体)“を食事場に移すだけではなく、預かり場と現場の後片付けもするでしょ?」

 「そうか、そうだったね。一番大変な“役目“だよね。いろんな意味で。」

 「ありがとう。そういってくれるの、エリクだけよ。中には、というか、ほとんどなんだけど、みんな仕事が雑でさ。腕がない〜とか、足がない〜とか、胴が真っ二つ〜とか。胴が真っ二つなんて、ホント悲惨なんだから。属性保護できないんなら、真っ二つにすんなって話よ。挙句に、“預かり場“があっちこっち、バラバラなんてこともザラだし。だからさ、アンタみたいに、一撃で終わらせて、しかも、一ヶ所にまとめておいてくれると、ホント助かる。」

 「一応、褒められてるんだよね?」

 「えぇ、それはもう“心からの称賛“よ?だから、エリクからの依頼は、競争が激しいのよね〜。」

 「競争?」

 「ううん、なんでもない、こっちの話。そういえば、エリク、私たちの間で、アンタなんて呼ばれているか知ってる?」

 「いいや、知らないけど?」

 「そう、じゃぁ、教えてあげる。」


 “パラゴン(究極の始末人)“


 「パラゴン?」

 「そう、短剣で心臓を一突き。そこには、微塵の迷いもない。そして、血が飛び散らないように、闇魔術で刺し口を覆って属性保護して、その上、処理(失血)までしている。ホント、すごいスキルよね。だからよ。」

 「まんま、だね。」

 「そう、まんま。」

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