その仕事、国越え
「エリク、今回はご苦労だったな。」
「いいえ。それで、後ろは突き止められたのですか?」
「あぁ、とんでもねぇ大物が釣れたよ。あいつらからしたら、まさか、王女殿下に手ェ出すとは思っても見なかったようだがな。」
「そうですか。まぁ、誰が釣れたかは興味ありませんが。でも、相手のその反応、本当なんですかねぇ。」
「とぼけていると?」
「だって、“本当にそうだ“、という証拠もないんでしょ?」
「まぁな。」
「それなら、どうとでも言い逃れできますよ。」
「それもそうだな、しばらくは要監視、ってとこか。」
「いや、ずぅ〜と、ですね。ほとぼりが冷めるまでは、大人しくしているでしょうから。」
「確かにな。やれやれ。」
「では、僕はこれで。」
そう言って、ギルド長室を後にするエリク。そのまま階下の受付に寄って、次の運行予定を受け取る。
「はい、エリクさん、こちらが、次の運行予定です。」
「どうも。えっと、ソルティラ王国、“国越え“か。久しぶりだな。アプレを届けて、乾燥薬草を持ち帰る、か。アドラーさんとこの荷物だね。」
「はい、三日後に荷積み、その次の日出発です。一応、“通常“ですが、遠出なので、くれぐれもお気をつけて。」
「わかりました、ありがとう。これなら温泉、浸かれるね。」
「ですね、疲れを癒してきてください。」
「そうします。では。」
そう言って、ギルドを後にして、さっそく、国越えの準備に入った。
「10人。あのさ、人のものを奪おうってことは、その逆もあるってこと、承知の上だよね?」
「はぁ?何を言ってる、“馬引き“如きが。まさか、俺たちと張り合おうってか?お前一人で、この人数を?これでも俺たち、Dランクだぜ?」
「・・・」
確かに、Dランクの冒険者崩れが何人かいる。他のものはEランク、せいぜいFランク。いずれも冒険者崩れ。だが、エリクにとって、“ランク“は関係ない。
「かまわねぇ、やっちまえ。で、いただくもんいただいて、さっさと、ずらかるぞ。」
「「へい!」」
野盗の頭領と思しき男の後ろにいた2、3人がエリクに飛び掛かる。
(ニヤッ)
スゥ〜。
「消えた?」
「ど、どこ行った?」
ドサッ
「どうした?」
「し、死んでる!」
ドサッ
「まただ。」
ドサッ
ドサッ
「何が起こってるんだ?」
「残るは、あなた一人、ですね。」
「お、お前が?んぐ・・・」
「お静かに。では。」
グサッ! ドサッ
ここは、ソルティラ王国に入った渓谷沿いにある野営地。綺麗な満月が夜空に浮かんでいる。月明かりに照らされて浮かぶ二つの影。
「ごめんね、ミラ。こんなところまで。」
「ううん、別に構わないわよ。“役目“だし。それに悪いのは、アンタを襲った、コイツらなんだから。こっちこそ、遅くなってごめんね。あれ?今回は一人?」
「うん、“国越え“だからね。」
「そっか、特A少ないもんね。それにしても、相変わらずエリクの仕事は“綺麗“よね。」
「そう?」
「えぇ、私たちって、ただ“コレ(死体)“を食事場に移すだけではなく、預かり場と現場の後片付けもするでしょ?」
「そうか、そうだったね。一番大変な“役目“だよね。いろんな意味で。」
「ありがとう。そういってくれるの、エリクだけよ。中には、というか、ほとんどなんだけど、みんな仕事が雑でさ。腕がない〜とか、足がない〜とか、胴が真っ二つ〜とか。胴が真っ二つなんて、ホント悲惨なんだから。属性保護できないんなら、真っ二つにすんなって話よ。挙句に、“預かり場“があっちこっち、バラバラなんてこともザラだし。だからさ、アンタみたいに、一撃で終わらせて、しかも、一ヶ所にまとめておいてくれると、ホント助かる。」
「一応、褒められてるんだよね?」
「えぇ、それはもう“心からの称賛“よ?だから、エリクからの依頼は、競争が激しいのよね〜。」
「競争?」
「ううん、なんでもない、こっちの話。そういえば、エリク、私たちの間で、アンタなんて呼ばれているか知ってる?」
「いいや、知らないけど?」
「そう、じゃぁ、教えてあげる。」
“パラゴン(究極の始末人)“
「パラゴン?」
「そう、短剣で心臓を一突き。そこには、微塵の迷いもない。そして、血が飛び散らないように、闇魔術で刺し口を覆って属性保護して、その上、処理(失血)までしている。ホント、すごいスキルよね。だからよ。」
「まんま、だね。」
「そう、まんま。」




