運命の日 1
それは、なんと言えばいいのか…。その凄かった。兎に角凄い。これが二着ということはもしかして…!?
「この衣装を私達に着せて応援させる気だったの!」
私は大声を張り上げた。仕方がない。だってこんなエッチな衣装で応援なんかしたらもう学校へは通えないだろう。あの二人は痴女だと学校中、いや世間から後ろ指を指されること間違いない!
「凄い…。スカートの丈もこんなに短いし。これ手作り?解れとか一切無い。」
本当だ。意外とクオリティーが高い。ってそんなことはどうでもよくて!
「どういうこと?雨宮くん説明して!」
私は衣装を持ちながら雨宮くんに詰め寄った。
「いや、これお前が作ってきたやつだから!冤罪だ!無実だ!俺は何も関与していない!」
慌てふためく雨宮くん。身振り手振りをして必死に弁明する。ちょっと可愛い…。
「それじゃ私がむっつりみたいじゃない!往生際が悪いぞ!観念しなさい!私達にこんなエッチな格好させてグヘヘとかそんなこと考えてたんでしょ?」
雨宮くんの必死な弁明に私も悪ノリをする。なんか楽しくなってきてたな…。
「本当だって!第一俺そんなに裁縫上手く無いし…。」
確かに…!雨宮くんは不器っちょさんだからね…。とういうことは本当に私が!よく見てみると後ろになにやらイニシャルのようなものがある。…S.Sと書いてある。うん、私だ。これ作ったの…。思い出してきたぞ。そういえば深夜テンションでハイになってやった気がする。ていうか見たところアンスコも用意してないし!それでこのチアコスはヤバ過ぎる。とりあえず謝ろう…。
「ごめんなさい!これ私が作ったものでした。」
頭を深々と下げて謝罪した。人のせいにするなんて…。
「誤解が解けたならいいよ。それよりそれどうするんだ?」
私は両手に持った衣装をじっと見る。デザインは兎も角として、出来はかなりいい。捨てるのは勿体ないな…。
「ねぇ、それ捨てちゃうの?」
佐藤さんが近づき、耳打ちをしてきた。少しこそばゆい。
「雨宮くんに今度着て上げたら…。彼、凄く喜ぶんじゃない?」
ぼっと、顔に火が付くのを感じた。みるみる紅くなっていくのが自分でも分かる。
「照れちゃってかわいい。その話はまた後でね。」
私は雨宮くんをチラチラと見ながら、衣装をぎゅっと抱えこんだ。
「それじゃ、そろそろ行きますか。先ずは山本の方からだな。」
色々あったが、試合の時間だ。この学校は部活動は大体強いが、サッカー部も例外ではなく、IHや選手権にも度々顔を出している県内でも有数の強豪校だ。
その為県外からも入学する人もいる。部員数もとても多く、その大半は控えやサブチームという訳だ。山本もBチームと言っていたし、それ程高い競争率なのだろう。
(まぁ全国大会を視野に入れているのだから当然かもな…)
今日の予定は午前中にBチームの試合を行い、昼を挟んで午後にAチームの試合という流れになっている。
当然、観客もAチームを観に学校にやって来る。つまりは午後が本番だ。辺りを見渡すと、もうすぐ試合が始まるというのに殆ど人がいない。
(選手達からしたら残酷な現実かもしれないな。)
俺達は激励を言いに、アップ終わりの選手達の方へと駆け寄った。
「いい、緊張してるだろうから余り気負うような事は言わないでね?」
「分かってるよ…。」
栞に念を押される。そこまで信用ないかな…俺。
「なぁ櫻木さんがいるぞ!」
「あっちは佐藤さんだ!なんであの二人がこんなBチームの俺達の所に?まさか激励に!」
「そんな馬鹿な、行くならAチームの所だろ…。そう言えば佐藤さんと剛田林先輩って付き合っているって噂があったな。」
ざわざわとする選手達。もしもーし。俺も居ますよー。見えてますかー?
「一緒にいる男は誰だ?美人二人を侍らしてやがる。許せん!」
「血祭りにしてやるか!」
恐ろしい事が聴こえたが、聴かなかった事にしよう。トントン…。何だよ肩を叩いて。…ドヤ顔をしている栞。うざっ。
「頑張ってねみんな!」
「うおー!!」
わざとらしく腕を構える栞。さては…褒められて気分がよくなってるな。そしてチョロいなお前ら…。
「よぉー調子はどうだ?」
五月蝿い選手達を掻き分けて山本の元に行く。
この雰囲気でも集中を切らしていないようだ。
「まずまずさぁ。それと櫻木さん。昨日のメッセージ有難う。」
「どういたしまして。助けになったかな?」
「バッチリだよ。お陰で雑念が消えたよ。」
いつもと違い自信に満ちている山本。その姿を見れば、心配は要らないようだった。
「山本くん頑張ってね…。応援してるから。」
もじもじしながら、激励を送る佐藤さん。こんな顔もするんだなぁ…。
「あっ有難うございます。が、頑張る所存でありまする。」
ガチガチに緊張している。言葉も噛みまくりじゃないか…。…あれ?何だか急に不安になってきたけど大丈夫かこれ…。
「まぁ、余り気負わずにな。頑張れよ。」
軽く挨拶をしてその場から去る。俺の胸には一抹の不安が靄のようにかかっていた。




