いかがわしすぎるぞ
そして運命の日がやって来た。
「おはよう。雨宮くん。はぁ〜。」
「ああ、おはよう。はぁ〜。」
栞は眠そうな眼を擦すり、大欠伸をしている。この姿は学校の連中は知らないんだろうな。外面はいいからなこいつは…。
「余りだらしないところを依頼人に見せるなよ。」
「誰に言ってるのよ。大丈夫よ。こんな姿を見せるのは雨宮くんだけだから♥️」
寝ぼけているのかこいつは…まったく。
…実の所俺も眠い…。昨日、考え事をしていたら夜更かしをしてしまった。そのせいで部室の鍵を間違えたくらいだ。おそらく栞もそうなのだろう。
「いやーちょっと探し物と手直しをね。そのせいで夜更かしをしてしまったのだよ。」
「…手直し…? なんの話だ。」
俺の頭には?が浮かぶ。何か作る予定は無かった筈だが……。個人的に差し入れでもするのだろうか?嬉しいぞ栞!お前がこんなにも依頼人のことを考えているなんて!
「昨日の夜にね、急に思いついたんだ〜。一応運動部の応援みたいなところあるでしょ?だ・か・ら…。」
いそいそとバックから何かを取り出す栞。そこから出たものは俺の予想を斜め上にいくものだった。
「じゃじゃーん!見てこれ可愛いでしょ!頑張ったんだから!」
テンション高く登場したのはチアガールの衣装だった。それも割と露出度が高いやつ。いかがわしさすら感じさせる。…前言撤回…。碌でも無かったわ。
「俺と同じ悩みを抱えてると思ったのがバカだったわ…。」
「なにを〜!乙女が睡眠時間を削り、頑張ったのに! お肌にだってよくないんだからね。」
わざとらしく顔を膨れさせる。ちくしょー可愛いなこいつ。
「これをね、私と佐藤さんが着て山本くんを応援するの。あっ、勘違いしないでね。今日だけだから。今度、雨宮くんにも着て応援してあげるから♥️ふれふれーって。」
脚を上げてポーズを採る栞。…恐らくチアガールの真似をしているのだろう。この衣装とまでははいかなくても短いスカートが少し捲れて目に悪い。
「ああー! 雨宮くんちょっと何処見てるのよ!エッチだわ!」
…だめだこいつ、寝不足でキャラが崩壊している…!流石にこのまま人様の前に出す訳にはいかない!
「とりあえずお前は少しでも寝ろ。佐藤さんが来るまでまだ時間があるから。細かい準備は俺に任せておけ。」
「ええー優しいよー。雨宮くん大好き♥️それじゃお言葉に甘えて…おやすみなさい…。」
栞は部室の隅にある椅子に座るとものの数秒で夢の世界へと消えていった。…一先ずこれで問題児の無力化は完了だ。
すうすうと寝息を立てる姿は部室に差し込んだ光に照らされ、神々しさすら感じさせた。先程までの発言をしていた人物とはとても思えない…。
まるで何かの絵画のようだ…。部室で休む美少女…。題名はこんな感じかな…。……駄目だ。頭が回らない。栞にはああいったもの俺も少し休ませてもらおうか。
栞の反対側の椅子に腰を下ろした瞬間、急激な睡魔が襲い、俺は意識を手放した。
「う〜ん、むにゃむにゃ。あれ?」
部室だ。何故?……あーそういえば寝不足で部室で寝てろって言われたんだっけ?…意識がはっきりとしない。雨宮くんにそう言われたような気がするが、その前の記憶があやふやだ。
「んー。」
私は両腕を上げて伸びをする。そこまで長い時間眠っていた訳ではないが、頭がスッキリしているのを感じた。…睡眠の力は偉大だ。
「むにゃむにゃ。」
反対側には絶賛睡眠中の男子が一人。雨宮くんも眠かったんだね。この人の事だ、きっと山本くんの事でも考えて夜更かしをしたんだろう。…本当に優しい人…。…そんなところが…私は…。
「雨宮くん、そろそろ起きないと佐藤さんが来ちゃうよ。」
「うーん。」
身体に手を掛け、揺するが起きない。余程眠かったのか…。
「おーい。そんなに油断していると悪戯しちゃうぞ?えいえい!」
私は指の腹で雨宮くんの顔をぷにぷにとして遊ぶ。意外と柔らかくて気持ちがいい。…こんなことをしていると何か変な気分になってくる…。
「…えいえい……。」
意識的に顔を近づける。こんなに至近距離で雨宮くんの顔を見たのは初めてかもしれない。よく地味と言われるがそんなことないよね?少なくとも私には……。
瞬間、視線を感じる。我に返った私は急いで振り返る。
「お邪魔でしたかな?良くないよ。鍵はちゃんと閉めないと。」
わざとらしくドアをコンコンと叩く佐藤さんが其処には立っていた。その顔は分かりやすくにやにやとしている。
「にゃーーーー!!!」
「うわぁ!何事だ!」
私は謎の奇声を放ち、後ろに飛び跳ねる。その衝撃で雨宮くんが目を覚ました。
「いやー、意外と早くに学校に着いたからさー。なんか御免ね。気を使えば良かったね。」
佐藤さんの満足そうな顔が私をチラチラと見る。…お願い恥ずかしいから見ないで……。
「…何の話だ?それでなんで栞は顔が紅くしてるんだ?」
まったく状況に着いていけてない雨宮くん。もじもじしている私。ホクホク顔の佐藤さん。何この混沌な空間。
「まぁまぁいいじゃない。…それでさぁ、さっきから気になってたんだけどあれは何?」
今度は佐藤さんが紅くなりながら、指を差した。その先にはチアガール?の服が二着ほど無造作に置かれていた。
「何だろうこれ?」
私はその衣装を手に取って拡げてみせた。
「何よ…これ…。」




