デートの約束
「えっ、マジで!」
「はい、大マジです。」
大マジかー。正直、こんな可愛い娘とデートとは嬉しい限りだ。…嬉しいんだけどなぁ…。
恐る恐る隣をチラりと見る。そこには意外にもけろりとしている栞の姿があった。
「いいんじゃない?せっかくだし、行ってくればいいじゃない。」
「あれ、いいんですか?てっきり反対するとばかり…。」
呆気に取られていたのは香織も同じ。さっきまでピリピリした雰囲気を出していたのに…。
「もう!何を勘違いしているのよ!私はあくまで花宮ちゃんの事を考えて発言してただけよ。花宮ちゃん自身が問題無いのなら私が反対する理由なんてないわ。これは依頼だもの。」
努めて冷静…。何も間違っていない。正論だ…。
「やった♪じゃあ、今度の週末に決定ですね。あっ、そうだ連絡先も交換しときましょう!」
「…ああ、そうだね…。」
携帯を取り出す俺をにこにこした顔で見る栞。その表情に反比例する醸し出す雰囲気に思わず、二の足を踏んでしまう。その理由は…。
「いえーい♪これで先輩の連絡先ゲットです♪デート楽しみにしてますね!後程メッセージ送りますから♪」
「…大袈裟だなぁ…香織は…。」
「良かったね!花宮さん。」
嬉しさを隠さない香織とそれを微笑みながら見る栞……がめっちゃ貧乏ゆすりしていた。
(めっちゃイライラしてるじゃん!)
心の中で思わず叫んでいた。
「おかえりなさい。栞。」
「うん、ただいま。お母さん。」
「あなた大丈夫?疲れてない?顔色が悪いわよ。」
「大丈夫よ。お母さん。ちょっと部活で疲れただけ。心配要らないわ。」
「そう…。ならいいけど…。あまり無理はしないでね。」
「うん、分かった。有難う、部屋で休んでるね。」
家に帰宅した私は確かに疲れていた。二階にある自室に速やかに入り、バックを床に置き、ブレザーをクローゼットに掛ける。そう私は疲れているのだ…。
制服のまま、ベッドにダイブする。ふわふわの感触がやたらハッキリと感じられる。気持ち良くて、疲れていたことや嫌な気持ちが吹き飛んでいくようだ…。ああ、気持ちいい♪
本当に………………。
「なんなのよあの娘は――――――――!!」
今日日一番の大声。枕に顔を埋めて防音しなければ、ご近所の迷惑になっていただろう。(あの娘、ぜっ――たい雨宮くんの事狙ってる。私には分かる!あれは恋する女の眼よ!何が恋する女の気持ちが分からないよ!バリバリ分かってるじゃない!今の自分がそうなんじゃない!)
恐らく依頼そのものが嘘。最初から雨宮くん狙いの可能性大ね。
いや、正確には全てが嘘ではないかもしれないけど…。それにしたって雨宮くんも雨宮くんよ!あんなにデレデレしちゃってさぁ!ちょっーと可愛い娘に良い顔されただけで鼻の下伸ばしちゃって、みっともない!大体、あの人初対面の女の人(※特に美人)は苦手な設定じゃなかったの!私と初めて会った時はあんなに緊張してたじゃない!ムカつく!ムカつく!
「にゃーん。」
ベッドの上で寝転びながら、脚をバタつかせる私に飼っている猫が近寄ってくる。
「…ミントは幸せそうでいいね。悩みとかはないのか?」
「にゃーん!」
「くすぐったいよ!ほれっ!」
ペロペロと手を舐めるミントを抱き抱える。ちょっと太ったか?
「ダイエットしないとねー。健康にも良くないし。好きな子にも振り向いて貰えないぞ。」
…自分で言って虚しくなる…。雨宮くんはやっぱりああいう娘がタイプなのかな…。私、結構脈アリだと思ってたんだけど勘違いだったかな……。
「にゃーん…。」
「あっ、こら!顔はこそばゆいってば!」
今度は顔を舐めるミント。もしかして…私を慰めようとしてるのかな…?
「そうだよね…。落ち込んでいるなんてらしくない!私は私らしく攻めるのみだもんね!有難うミント。励ましてくれて。」
急いでベッドから飛び起きるた私はおもむろに机に向かう。
(まずは作戦を考えなければ!覚悟しててよね雨宮くん!)
こうしてさらに夜も更けていく。




