依頼完了!
「佐藤さんはこの後どうするの?」
「うーん、先輩と約束したし、見ていくよ。」
「そうか、じゃあ、俺達は帰るかな。」
「また今度ね〜。」
「今日は本当に有難う!」
かしこまって礼を言う山本に少し笑ってしまう。俺は耳元で佐藤さんに聞こえないよう囁いた。
「これからが本番だろ。ガツンと決めてやれよ。…俺達の方こそ、あまり役に立てなくて御免な…。」
「そんなことないよ!お陰で勇気が出た。俺一人だったら此処まで来れなかった。」
「そうか…、なら良かった。あっ後で話し聞かせろよ!」
俺達は軽くを振って別れの挨拶を済ませた。
〜後日〜
「告白してないのか!?」
休みが明け、あの後の続きを聞こうと、部室に山本を呼び付けた俺は素っ頓狂な声を上げた。
「うん…。実はそうなんだよ。」
覇気の籠もっていない返事。あのシチュエーションで何故告白しないことがあろうか…。
「殆ど確定演出みたいなものだったじゃない!」
栞も驚いている様子だ。無理もない。
「いや、誓って言うけど、告白はしようと思ったんだよ。でも、どうせならやっぱり場所を選びたいじゃないか…。」
よく分からない弁明をする山本。そんなに場所が大事なのか?
「わかる!!凄いわかるよ!」
……うちのミス恋愛脳の感性にヒットしたみたいだ…。は〜溜息が出そう…。ていうか出たわ…。
「告白されるならやっぱりロマンチックな所がいいよね!」
「学校だったら何処でもいいんじゃない?」
「はぁ〜、まったく。」
反論する俺にやれやれそこからか…と言わんばかりな栞。ウザ過ぎる。
「あのね…。女の子にとって告白されるのは憧れなの!それも気になる相手だったら尚の事。それに加えてシチュエーションまで完璧だったならもう…。」
妄想に浸る栞の目の前で手を振る。駄目だ、トリップしてやがる。もうこいつは放って置こう。
「まぁ、櫻木さん程ではないけど、俺も大事だと思うよ。」
関心を示さない俺にフォローを入れる山本。お前いいやつだな…。
「それは俺だってそういうのが大切なことも分かるよ…。この恋愛脳に賛同するみたいなのはちょいと尺だが、ただそれ以上にその時の気持ちが大事だと思うだけで…。」
何か自信が無くなってきたんだけど、これ俺が間違っているの?どう思います皆さん?
「気持ちは勿論大事だけど、その上でシチュエーションも大事なのよ!分かってないんだから!」
復活した栞は熱く語る。何がこいつを動かしてるんだ…。
「まあまあ、それでもう話はしてあるんだ。佐藤さんに。」
「自分から約束を取り付けたのか!成長したなぁ…。」
「うん、君達のおかげだよ。」
そう言ってもらえるとこちらも冥利に尽きる。目頭が熱くなるのを感じた。
「それで今日、放課後に教室で告白するんだ!」
目を輝かせる山本。その姿には先週尋ねて来た時のひ弱な面影は無かった。
「教室!いいね!やっぱり王道パターンだと思うな!日が落ちて暗くなる教室とそれに反比例するかのような二人の燃え上がるような気持ちが…もごもご…。」
とりあえず五月蝿い口を封じる。手で口元を抑えているのにまだ何か喋っている…。続きは告白が成功した後、思う存分したらいい。その時は4人で出来たらいいな。
「頑張れよ!」
軽くエールを送る。覚悟を決めた男の前には無粋な言葉など必要ではない。
「ああ!期待して待っててくれ!」
ドアを閉めて、部室から去るその背中には、これから起こることをすべて受け入れる…そんな覚悟がそこには宿っていた。
〜放課後〜
「あんな事言って結局観に来てるし。」
「うるせーな!お前だって割とノリノリだっただろ。」
「そんな事ありませーん。雨宮くんが行くって言うからしょうがなく付いて来ただけでーす。一緒にしないで下さーい。」
「お前な……。」
煽ること煽ること。こいつ…、いつかギャフンと言わしてやる。
「しっ、今良いところなんだから。」
日が落ち掛け、金色に照らされた二人が互いを見つめる。まるで吸い込まれそうな程に絵になっていた。
「なんだよ。お似合いじゃんか。」
「ふふ、そうだね。私達はここらへんで退散しようか。」
「そうだな。まったく見せつけやがる。」
「あれ?もしかして羨ましいの?」
栞がにやにやしながら煽る。心底馬鹿にしたような顔だ。
「そんなんじゃないよ。」
「まぁー相手が居ないならしょうがない!完璧美少女たるこの私が彼女になっても…。あーっ!話しは最後まで聞いてよー!」
冗談を言いながら、俺達は部室へと帰って行った。




