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新大陸の冒険者支援課 ~新大陸での冒険は全て支援課にお任せ!? 受け入れから排除まであなたの冒険を助けます!~  作者: ネコ軍団
第1章 魅惑の新大陸

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第6話 ブラコン課長とシスコン部下

「なんだよ…… 見てたのかよ」


 グレン達が上っている階段の一番上に女性が立っていて彼らを見つめていた。女性は濃い青の膝丈のブーツに黒のストッキングに太ももの出た白いスカートを履き、白銀の胸当てに水色の上着を羽織っている。ベルトのついた小さな鞄を肩から斜めにかけた、茶色の長い髪の可愛らしい女性だ。グレンの目の前に立つ女性はクレアという名前のグレンの上司にあたる人物だ。

 クレアは女性としては身長が高く、グレンと同じくらいある。彼女は階段の一番上から見下ろしていた、一段下のグレンに腰をかがめて目線を合わせた。


「喧嘩したらメッですよ。いくら乱暴な人でも、冒険者さんを支援するのが私達のお仕事なんですからね」


 顔を近づけ目をうるませて、小さい子供へ注意するような、おっとりした口調でクレアはグレンに注意する。

 

「はいはい。わかったよ。でも……」


 少しめんどくさそうに答えるグレン、彼は普段から似たような注意を受けているようだ。


「それで義姉(ねえ)ちゃんはエフォールを持ってなにしてんだよ?」


 グレンがクレアの胸元を指さした、彼女は両手で抱えるようにして白い刀身のエフォールと言う名の大剣を持っていた。慌てた様子でクレアは大剣を背中に隠すが、彼女の背中の横から刀身とグリップの一部がみ出ているのが見える。

 五年前にグレンをシャイニングドラゴンから助けた女剣士はクレアだ。クレアはグレンを助けた後に、一旦は彼を故郷に帰そうとしたが、新大陸へ行ったことをよく思っていなかった家族から拒否されてしまった。

 クレアは身寄りが無くなったグレンを義弟として引き取った。なお、クレア本人はグレンを養子として引き取りたかったが、さすがに年齢が近すぎてアーリア教会から却下された。


「こっこれはグレンくんになんかあったら私が助けないとですから……」

「何が喧嘩はダメだだよ。義姉ちゃんも人のこといえねえじゃん」

「ぶぅ…… だって…… グレンくんを守る強いお姉ちゃんになるって……」


 恥ずかしそうに赤くなった頬を、クレアはぷくとふくらませぶつぶつと不満そうにつぶやいてる。彼女の様子にグレンは笑った。


「そっそれと仕事中は課長って呼ばないとダメですよ」

「はいはい。ハモンド君。クレア課長に報告してくれるかな」

 

 すっとグレンが横にずれる、一段下にいたハモンドがクレアの前に立つ。クレアの視線がやや下に向くとハモンドは姿勢を正して口を開く。


「クレア課長。フェブーオ月、第一ルナの日の定期船案内業務は無事に終わりました」

「ありがとうございます。二人ともお疲れさまでした。はい。ご褒美ですよ」

 

 二人に労いの言葉をかけたクレアは、鞄を開け中から飴玉を取り出してハモンドとグレンに渡す。いつものことなのか特に平然と、ハモンドとグレンはクレアから飴玉を受け取った。クレアは飴玉を持った二人を満足そうに見つめて小さくうなずくのだった。


「じゃあ戻りますよ」


 グレンとハモンドはクレアに連れられ、階段を上りすぐ脇にある木製の小さな扉の中へと入っていった。室内はあまり広くなく、奥に仮眠用の二段ベッドにベッドの脇に宝箱が置かれていた。

 部屋の中央には二十センチほどの高さの小さな台座があり、その上に水晶が置かれていた。魔法で水晶から伸びた光が長方形のモニタのようになって、テオドール周辺の地図を映し出していた。地図上には所々に赤い点が光り、その横には村や町や遺跡の名前の他に森や山の地名などが書かれていた。また、扉のすぐ左手に机が一つ、水晶を挟むように向かい合わせに二つの机が並んで設置されている。

 この部屋は冒険者支援課の事務所だ。支援課はグレン、クレア、ハモンドの三人がメンバーで、本来は大陸全土をカバーするが人手不足のため、新人やノウレッジになれない者が多いテオドールを主として活動している。さきほどの港からギルドへの道案内も冒険者支援課の業務の一つである。グレンはクレアに拾われた後、冒険者ギルドの冒険者支援課の職員となり日々生活していた。

 入り口の近くの席にハモンドが向かい、グレンとクレアは水晶の向かいにある並んだ机に向かう。持っていた大剣を机の横に立てかけクレアが席につく。グレンは彼女の隣に席に座る。


「クレア課長。次の業務はなんだっけ?」


 隣に座るクレアにグレンがふと声をかけた、クレアは首を横に振り周りを見る動作をして振り返って微笑む。


「今は他の人が居ないですから…… お姉ちゃんで良いですよ。グレンくん」

「はいはい。義姉ちゃん。次の業務はなんですか」


 嬉しそうに義姉と呼べというクレア、グレンは面倒になりダルそうに適当に返事を返す。グレンの回答を聞いたクレアはムッとして彼を見つめる。


「いま私のこと面倒くさいって思いましたね」

「はっ!? 当たり前…… いや! おっ思ってないよ」

「本当ですか? 怪しい…… ジー」


 身を乗り出して顔を近づけて、クレアは疑った様子でジッとグレンを見つめる。彼女の青い瞳にグレンが映っている。


「違うって! 早く次の業務を教えろよ」


 圧力に耐えきれなくなったグレンは、視線をそらしてクレアとの会話を終わらせた。

 ハモンドは二人のやり取りを見てあきれた様子で笑っていた。


「まったく生意気なんだから…… ちょっと前までお姉ちゃんの言うことをよく聞いてたのに……」


 グレンへの不満をぶつぶつ言いながら、クレアは並んだ机の一つの引き出しを開けて中から一枚の紙を取り出した。


「この後は大樹の森の支給品補充です。はい。これが補充する支給品と場所のリストです」


 クレアは引き出したから、補給する支給品が書かれたリストをグレンに差し出した。支給品補充とは森や遺跡に置いてある、支給品ボックスに支給品を補充する業務だ。冒険者ギルドでは探索で必要なアイテムを、支給品として無償で冒険者に提供してる。

 リストを受け取ったグレンは不満そうにつぶやく。


「大樹の森って…… この間もあそこに補充したばかりだろ」

「しょうがないです。北にあるダコマー村への通り道ですし、経験を積むに手頃な魔物が多くて、薬草になる植物も生えて採取依頼も頻繁な場所ですから利用される頻度が高いんです」

「はぁ……」


 ため息をついてグレンは立ち上がり、リストを見ながら部屋の奥にある二段ベッドへ向かう。


「あっ! 私は打ち合わせがあるんでした。すぐに戻りますから準備しといてくださいね」

「わかった。いってらっしゃい」


 振り返り右手をあげグレンはクレアに答える。クレアはほほ笑みうなずくとパタパタと部屋を出て行った。

 グレンは二段ベッドの脇に置いてる、高さ一メートルくらいある大きな宝箱の前に来ると膝をつき両手で開けた。

 この宝箱は冒険者支援課の備品が入ってる。宝箱の中は仕切りの板が格子状に並べられ、小さな液体が入った小瓶や結ばれた縄や紙が貼り合わされた玉のような様々なアイテムが種類ごと置かれていた。


「(えっと…… 傷薬が五個に解毒剤が三個、脱出ロープ一つに煙幕玉が二つか…… あっ傷薬の在庫が少ないな…… 後で調達課に頼まないとな)」


 グレンはリストを見ながら、宝箱からアイテムを出して地面に置いていく。


「ハモンド君。リュックを持ってきてこれを詰めてくれるかな」

「わかりました」


 自分の机にかけられた革製のリュックを持ってきて、ハモンドはグレンの横で膝を付きグレンが取り出したアイテムを詰めていく。


「詰め終わりました」


 リュックを閉じてハモンドが返事をした。グレンは小さくうなずいた。


「じゃあ後は義姉ちゃんの帰りを待つか」

「はい」


 ハモンドは立ち上がりリュックを抱えて席へ戻る。グレンも彼に続いて自席へ戻る。二人は席でクレアの帰りを待つのだった。

 一時間ほど後……


「お待たせしましたー」


 戻って来たクレアは席に戻り書類を机の上に置くと、自分の机の横に立て掛けた大剣を背負った。大剣を背負った彼女は手招きしてグレンとハモンドを呼ぶ。革のリュックを背負ったハモンドとグレンがクレアの机の前へとやってきた。

 慣れた様子で三人は、水晶の方を向き、クレアを真ん中にして右にグレン、左にハモンドと一列に並んだ。


「じゃあ行きますよー」


 左右を見て二人に声をかけて右手を胸元に持っていき目をつむるクレア、彼女はグレンと同じ蹄鉄のような形に、丸い青い石がついた首飾りを下げていた。

 グレン達が首から下げてるのは、冒険者ギルド職員用の首飾りだ。この首飾りの青い宝石と蹄の型の飾りは、魔石を削って作られており様々な魔法が込められており、首飾りを握りしめて場所を言うと魔法で瞬間移動させてくれるのだ。

 ただし、自由に移動に移動できるわけではなく、水晶が映し出す地図に表示された赤い点の場所に限定される。地図の赤い点は村や町や遺跡や森などの入り口だ。

 また移動先でテレポストーンを使用すると強制的にこの部屋に戻って来てしまうため、違う場所に移動する場合は一度戻って来る必要がある。

 グレンとハモンドも彼女と同じように手を胸に持っていく。


「「「大樹の森」」」


 ほぼ同時に三人が大樹の森と叫ぶ、三人は光に包まれて消えていった。次に三人が目を開けると、緑の青々とした木が生えたのどかなへ続く街道の上に立っていた。

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