第554話 好敵手あらわる
聖都の大通りをグレン達が町を歩いていく。先頭はキティルとクロースでララとラピがその後ろに続き、トーキーとポーキーが三列目で最後尾にグレンとクレアが居る。
「どこ行くの?」
前を行くキティルにララが問いかけた。振り向いたキティルは笑顔で彼女に答える。
「グレゴリウスちゃんの屋台だよ。新メニューが出来たみたい」
「おぉ! 楽しみ!」
目的地がグレゴリウスの屋台と聞くと嬉しそうに声をあげるララだった。彼女の反応にキティルも嬉しそうにしていた。
「ふぅ。お腹が空きました…… 新メニュー楽しみです」
ララとキティルの話は最後尾のクレアまで届いていた。彼女は新メニューという言葉に目を輝かせ腹をさすっていた。
視線を横に向けたグレンはあきれた表情をする。
「さっきクッキー食ったばっかじゃねえか…… はあ」
「しょうがないじゃないですか! それにクッキーはおやつですからね」
「飯の前におやつ爆食いするなっていつも俺に注意してるじゃねえか!」
「ふん! 私は爆食いしてもちゃーんと夕ご飯も食べますから!」
胸を張って鼻息を荒くするクレアだった。彼女の回答にグレンはさらにあきれた表情をする。
「いや…… それ自慢なのか? もういいや」
「ふふふ!」
首を横に振るグレンにクレアは勝ち誇った表情を浮かべるのだった。少ししてグレン達はグレゴリウスの屋台へとやって来た。夕食時を過ぎて屋台の席はまばらにしかうまっていなかった。
グレン達は空いている席に座った。
「いらっしゃい…… おやそちらは?」
「昼間に話したポーキーさんとトーキーさんだよ」
「あぁ…… よろしくな。私はオリビアだ。グレの料理はうまいぞ!」
うなずいたオリビアが名乗るとトーキーとポーキーは手を上げて挨拶をした。続いてクロースが手をあげてオリビアに注文をする。
「新メニューを人数分…… いえ追加で三人分お願いします」
「そんなんで足りるのか?」
「多分、大丈夫ですわ…… 多分……」
自信なく答えるクロースだった。クロースが人数プラス三人分を注文したのはクレア、ポーキー、ララの分だ。しばらくして待っていると料理をオリビアが運んでくる。
「ほい。塩漬けフォレストポークと平原トマトのピリ辛パスタだ」
オリビアがグレン達の前に料理を置いていく。皿に赤いトマトソースがかかった筒状のパスタが乗っている。ソースは細かく切った野菜とブロック状に切ったたくさんの塩漬けの肉を入っていた。
待ちきれないと言ったようすで、ポーキー、クレア、ララがパスタを口に運ぶ。
「うまいっす!」
「本当! 美味しい!」
「えぇ!」
一斉に声を上がる三人だった。続いてグレン達もパスタを口に運ぶ。
「あぁ。本当にうまいな…… このピリ辛ソースがからんで……」
「んだ!」
「うーん。美味しいですわ。また腕をあげましたね。グレゴリウスさんは」
「本当! 美味しい! 手が止まらないよぉ」
料理は美味しくグレン達の食べる手が止まらなかった。皆はあっという間に平らげ、ポーキー、クレア、ララの三人はあらかじめ注文されていたおかわりに手を伸ばしたのだった。
グレン達の食事が進むとまばらだった客はさらに減り店は静かになっていた。客足が落ち着き余裕が出来たグレゴリウスがグレン達の元へとやってきた右手をあげ挨拶をした。
「どうですか? 新メニューは美味しかったですか?」
首をかしげ少し不安そうに尋ねるグレゴリウスにララとクレアが返事をする。
「うん! とっても美味しかった」
「はい。もうお腹いっぱいです」
満足そうにするララとクレアにグレゴリウスは嬉しそうに笑っていた。続いてキティルが口を開く。
「この塩漬けのお肉美味しいね」
「えぇ。ジャスミンさんに良い仕入れ先を教えてもらったんです」
うれしそうに肉の塩漬けについて話すグレゴリウスだった。フォレストポークは深層の大森林で飼育される豚だ。大樹案内人であるジャスミンは深層の大森林の名産に詳しくグレゴリウスに上等な塩漬け肉の仕入れ先を案内したようd。
話を聞いていたポーキーが笑顔で目を輝かせる。
「本当に美味しいです。でも…… 僕はもっと……」
「こら! ポーキー! すまん気にしないで……」
話の途中でぽきーは残念そうに腹をさすっている。ポーキーの仕草を見てトーキーは恥ずかしそうに
今度はポーキーの話を聞いていたグレゴリウスが目を輝かせる。
「おかわりですか? 良いですよ。まだありますから! 今から作って持ってきます」
「いいのか!?」
「はい。いっぱい食べてくださいね」
驚くトーキーにグレゴリウスは優しくほほ笑み手を振って屋台へ戻っていく。軽い足取りでルンルンと嬉しそうに歩くグレゴリウスの姿をポーキーとトーキーが見つめている。
「いい……」
「あぁ…… うん!?」
頬をやんわりと赤くしてポーキーがつぶやくと同じように頬を赤くしてトーキーがうなずいた。
「ちょっと! オッちゃん!? どうしたの?」
「ダメだ! そのパスタは私の分だろ!」
「もうオッちゃんの分はあるよ。そうだ! もう今日は終わりにするからグレンさんたちと一緒に食べなよ。持って行くから」
「むぅ……」
屋台の上にエプロンを叩きつけるようにして置いて、オリビアは不服そうに口を尖らせグレン達の席へとやってきた。彼女はグレン達の前に立って左右に視線を動かした。グレン達のテーブルはポーキーの前以外は全て片付けられていた。
「ちょっといいかな……」
「えっ!? おっおう」
オリビアは隣の席から椅子を持って来て、ポーキーの横へとどっかりと座った。トーキーは彼女のために横にずれた。
そこへ……
「お待たせー!」
大量のパスタが乗った両手で抱えるような大皿をグレゴリウスが持って来た。彼が二人の前に大皿を置いた。オリビアが大皿を見て目を輝かせていた。だが……
「なっ!?」
「ふふん! 早い者勝ちだよ…… もぐもぐ」
ポーキーが真っ先にパスタに手を伸ばした食べた。自分よりも早く食べ物に手を出したポーキーを見てオリビアが口からパスタをのぞかせながらにやりと笑うポーキーだった。彼が二口めを狙おうと手を伸ばすと……
「はっ!?」
「早い者勝ちなんだろ? もう油断はしない」
太い丸いポーキーの腕の横からオリビアの手が伸びて来て、彼が取ろうとしていたパスタをかっさらっていった。
先ほどのポーキーと同じように口からパスタをのぞかせニヤリと笑うオリビアだった。ピーンと張り詰めた空気が二人の間を漂う。二人の周りに座るグレン達は呆れて苦笑いをしている。唯一グレゴリウスだけは二人をみてほほ笑んでいる。
「このおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!」
「なにおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!」
ポーキーとオリビアが奪い合うようにしてパスタを食べ始めた。口へと運ばれる二人の両手が残像で八本や十本あるように周囲には見えていた。
「ふえええ…… 吸い込まれていくべな」
「うっうん……」
ラピが口へと吸い込まれるパスタを見てつぶやくとララがうなずいた。呆然と見守るグレン達の目前で、二人の手は止まらず大量にあったパスタはあっという間になくなった。
「「おかわり!」」
「はーい」
オリビアとぽーきが同時に声をおかわりを要求する。笑顔で返事をしたグレゴリウスが空に大皿を持って屋台へ戻っていくのだった。




