第553話 友達は大事にね
身を前に乗り出すポーキー、ララ、クレアは鼻息を荒くクッキーを見つめる。
「「「フーフーフーーーーーーーーー!!」」」
三人の視線がクロースを補足した。三人の気迫に押されたクロースの額から汗が一滴たれる。三人の様子に諦め気味にクロースが口を開いてクッキーを手で指した。
「ごめんなさい。キティルは忙しいみたいなので…… どうぞ先に食べて待っててください」
「わっわるい…… わっ!? ポッポーキー!?」
クロースの態度にトーキーが申し訳なさそうに頭をかえいた。直後にポーキーがトーキーを押しのけるようにして前に出て、クッキーをわしづかみにした。さらにテーブルの横からララとクレアが手を伸ばした。
「うまいっす!」
「本当ね。美味しい!」
「えぇ」
両手にクッキーを持って満足げに笑うポーキー、クレアとララも笑顔で次々にクッキーを口に放り込む。三人は奪い合うようにクッキーを食べるのだった。
「ふぅ…… はっ!?」
たまった書類を片付け終わった、キティルが机を立って皆がいるテーブルへとやって来た。テーブルを見た彼女は目を見開き慌てた様子で口を開く。
「ちょっちょっと!!! なんでもうないのよ……」
「山盛り用意したんですけどね」
クロースがあきれた様子で返事をする。テーブルの上に置かれた山盛りのクッキーは全て無くなりカスしか残ってなかった。テーブルの惨状を見て唖然とする
「ごっちゃんです!」
「うん! 美味しかった。ねぇ?」
「えぇ…… さすがクロースちゃんです!」
右手を上げてニコッと笑うポーキー、クレアとララは顔を見合わせて嬉しそうにうなずきクロースを讃える。三人は口元にクッキーのカスをつけ幸せそうではある。
「すまん……」
「申し訳ねえ」
「本当に…… 申し訳ない」
トーキー、ラピ、グレンがキティルに謝っていた。クッキーを食い尽くした三人は首をかしげていた。
「はああ。もういいですよ。さぁ…… 結果を報告してください……」
首をかしげる三人を見て小さく息を吐いたキティルはクロースの横に腰かけ報告をするように促そうとしたがすぐに話を止めた。彼女は視線をポーキーに向け小さく首を横に振った。
「いえ。大丈夫ですよね」
クッキーにがっつくポーキーは誰の目から見ても暴走はしていない。ヴァンパイア用の食事作成が成功したのは誰の目にも明らかだった。
「うん。皆さんのおかげです」
「よかったです」
大きくうなずいたポーキーは笑った。キティルも嬉しそうに笑うのだった。うなずくキティルを見たトーキーが口を開く。
「ヴァンパイアハンター協会の会長がらよかったとか言われるとは思わなかったぜ」
「まぁね…… 本当なら問答無用で処分しなきゃいけないけどね…… でもいいの。あなたにとって大事な友達なんでしょ?」
「えっ!? あぁ…… まぁな」
「だからよかったでいいのよ」
恥ずかしそうに笑うトーキーだった。ポーキーがトーキーの肩に手を置いて喜んでいた。キティルはトーキーとポーキーを交互に見て、二人にエリィと自分を重ね少し寂しそうに笑っていた。
「それじゃあキティル…… お願いします」
「わかった」
クロースが優しくポーキーとトーキーを手で指した。キティルはうなずくと帽子を外し中に手を突っ込んだ。彼女は帽子の中から一枚の書類を出してポーキーとトーキーの前に置いた。
「ちゃんと全部読んでくださいね」
「なんだこれ?」
トーキーが書類を取り尋ねた。クロースが口を開いて彼に答える。
「契約書ですわ。ヴァンパイアハンター協会はヴァンパイアの一族”安寧の血”との同盟を求めます」
「どっ同盟だと……」
目を見開いて驚きの表情を浮かべていた。クロースは小さくうなずきさらに言葉を続ける。
「はい。ウォルフ討伐に協力していただけるなら、安寧の血のノウレッジにおける活動の安全をヴァンパイアハンター協会が保証いたしますわ」
同盟締結によりヴァンパイアハンター協会が安寧の血の活動を保証するという、クロースの言葉にポーキーは表情をパアっと明るくるした。
「トーキー…… これならみんなはもう隠れる必要はないよ!」
「待て!」
喜ぶポーキーをトーキーが止める。クロースとキティルの視線がトーキーに向けられる。
「どうしたの? 同盟を結べば僕たちはノウレッジで安心して暮らせるんだよ」
首をかしげるポーキーにトーキーが書類を見ながら彼に答える。
「これは…… 俺達だけじゃ決められない……」
「あぁ。そうか! マージャ様の許可がいるね。行こう!」
「おう……」
うなずいたトーキーはクロースとキティルに顔を向けた。
「ありがたい申し出だが族長に報告して判断してもらわないといけない」
「わかりましたわ」
キティルとクロースは顔を見合わせてうなずいて笑った。
「その族長様はどちらに?」
「今はロックガン湖のブルーベイ島で療養している……」
ロックガン湖は深層の大森林を北に進んだ場所にある巨大な湖だ。大きな湖は発見当初は北端の海に到達したと勘違いされるほどだった。巨大な湖には百を超える島があり、”安寧の血”はロックガン湖に浮かぶ島の一つに身を隠しているという。
「グレン、クレア、二人と一緒に……」
クロースはグレンとクレアに二人と一緒に向かうように指示を出そうとした。
「私も行きたい!」
「おらも!」
指示の途中でララとラピが手を上げ、グレンとクレアに同行を申し出た。
「えっ!? 遊びに行くんじゃありませんよ」
「わかっているよ…… でもヴァンパイアが暮らしているんでしょ? ハンターとして勉強になると思うの! お願ーい」
「んだ! 頼む!」
ララとラピはクロースに頭を下げる。クロースはキティルに顔を向けた。キティルは困った様子で視線をトーキーに向けた。
「トーキーさん、ポーキーさん、ララ達も一緒でも構いませんか?」
「僕は良いけど……」
二人も一緒に連れていってくれというキティルにポーキーが顔を横に向けトーキーの顔を見た。トーキーは
「あぁ。かまわない」
「「やったー!」」
両手を上げて喜ぶララとラピだった。ララが座っているトーキーの手をつかんで握手する。
「ありがとう! トーキー!」
「ははっ…… 断ったら無理矢理にでもついて来そうだしな」
「なっ!?」
苦笑いをするトーキーにララは目を開いて眉間にシワを寄せ声をあげる。二人を見ていたグレンがにやにやと笑って口を開く。
「よくわかってるな。特にララがな」
「うるさいわよ! グレンのくせにべーーー!」
グレンの言葉にララは勢いよくトーキーから手を離した。彼女はグレンに向かって両手をあげ怒って下を突き出したのだった。
「ほーら! もう静かになさいな!」
「うぅ…… なっ! グレン!!!」
「ララ!!! おやめなさい」
クロースが手を叩いてララとグレンに注意をする。悔しそうにグレンを睨みつけたララだった。グレンは舌を出して馬鹿にしたように笑った。ララがさらに怒るとクロースが眉間にシワを寄せ彼女を注意した。
「むぅ……」
ララは不服そうに口を尖らせて引き下がりながらまたグレンを睨むのだった。クロースはララの様子を見てあきれて笑っていた。
「もう遅いですし出発は明日にしましょう……」
「うん。じゃあみんなでご飯に行こう!」
キティルが夕食にしようと提案した。その直後……
「「「行く!!!!」」」
クレア、ララ、ポーキーの返事がそろった。グレンとトーキーとラピは唖然としクロースとキティルは苦笑いをしていた。




