第548話 姉へと飛び込む
リアンテ洞窟の前。
脱出したトーキーとクレアとローキンスの元へダグオンとクローディアが駆けつけてきた。
「まっ魔導橋梁は無事ですか!!」
ダグオンは駆けて来て真っ先にローキンスに声をかける。いや…… 正確にはローキンスに預けた魔導橋梁発生装置を心配して声をかけていた。
「はっはい。まっ守りましたよ…… 教授……」
両脇に抱えている魔導橋梁発生装置を見せ胸を張り、ローキンスは誇らしげに返事をする。ダグオンに右脇にもった魔導橋梁発生装置を差し出した。ダグオンは両手で魔導橋梁発生装置を受け取り確かめるように念入りに触っている。ローキンスも同じように左脇に抱えていた魔導橋梁発生装置を触っている。
魔導橋梁発生装置を触り状態を確認しホッと安堵の表情を浮かべるダグオンだった。
「こっちも大丈夫ですよ」
ローキンスがうなずいて触っていた、魔導橋梁発生装置をダグオンに見せた。うれしそうに笑いダグオンは口を開く。
「よかった…… ローキンスさんも無事でなによりです」
「へへへ! ありがとうございます。」
嬉しそうに互いに持った魔導橋梁発生装置を見せ合い笑うダグオンとローキンスだった。
笑い合う二人をあきれた顔で見つめいるクローディアだった。
「なにやってんの! まったく! ほら怪我しているでしょ!」
「わっ!? わっ!? やめてください。クローディアさん! 痛いですよ」
ローキンスの背後から忍び寄ったクローディアは彼の耳を引っ張った。氷がぶつかったのか袖の一部が破れ血が出ていたローキンスを座らせてクローディアは治療を始めたのだった。
トーキーとクレアの元へと足を引きずりながらコナーが近づいて来た。コナーはクレアに抱きかかえられたシェーラの顔を覗き込み声をかける。
「シェーラ! バル…… ふっ二人は?」
二人の名前を呼んだコナーはクレアに顔を向ける。クレアはコナーを見てほほ笑んだ。
「大丈夫ですよ。応急処置は済んでます」
「よっよかった……」
二人を見て喜んで笑うコナーだった。コナーの様子を見てトーキーは安堵の表情を浮かべていた。振り向いたクレアは真剣な表情をして洞窟の入り口に見た。
「さぁ。怪我人をテントの前に運びますよ」
「あぁ」
トーキーに声をかけるクレアだった。クレアたちはテントの前まで移動し、シェーラとバルを寝かせたのだった。
少しして…… 並んだテントの前でクレア、トーキー、ローキンス、クローディアの四人は焚火を囲んで座り。コナーたち四人はテントの前に寝かされている。
「極夜騎士!? そんな魔物がこの洞窟に!」
「はい……」
洞窟で起きたことをクレアから聞いたダグオンは立ち上がり洞窟に視線を向ける。今にも飛び出して極夜騎士を見に行きそうな彼だが背中の服の裾をがっしりと隣に座るクローディアに掴まれていた。クレアは背中を掴まれているダグオンを見てほほ笑んだ。彼女は顔を横に向けダグオンと同じように視線を洞窟へと向けた。
「グレン君……」
心配そうにつぶやくクレアだった。直後に冷たい風がクレア達の横を通り過ぎて行く。
「えっ!?」
爆発音のような激しい音が大量の白い冷気が洞窟から吹き出した。何かが爆発したように勢いよく吹き出しだ冷気は周囲に拡散した。
「雪か……」
トーキーが手を前に出してつぶやく。冷気によって周囲の空気が氷ったようで雪がはらはらと落ちて来ていた。
「おっおい!?」
「クレア!? なにを!?」
視線を上に向けたクレアは真剣な表情で飛び上がった。一直線に上空へと向かうクレア、そこへ雪に混じって何か大きな黒い人が落ちて来た。
「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!」
叫び声を上げながらグレンが落下して来ていた。クレアは彼を見ると嬉しそうに笑い両手を広げた。クレアに向かっていきおいよくグレンが飛んで来た。
「へっ!?」
落下して来たグレンをクレアは受け止めた。二人は空中で抱き合うようにして向かい合って回転しながらゆっくりと落ちていく。クレアを見て目を見開き驚くグレンだった。クレアは捕まえた最愛の義弟の顔を笑顔で覗き込んだ。
「捕まえました!」
「くっクレア義姉ちゃん…… ありがとう……」
「ふふふ…… 無事でよかったです」
ほほ笑んだクレアは軽く口づけをした。そのまま二人は抱き合うようにして地上へと下りていった。地上へと来る二人を皆が見つめていた。ゆっくりと二人が着地すると二人を見ていたクローディアが目を大きく見開いた洞窟を指して叫ぶ。
「後ろ!」
「「えっ!?」」
クローディアの声が聞こえグレンとクレアが振り向いた。洞窟から吹き出した真っ白な冷気が迫って来ていた。
「なっなんだよ…… これ……」
「グレン君?」
迫りくる冷気を見ていた、グレンとクレアの頬が白く照らされた。グレンが鞄のベルトに巻き付けて持っていた極夜騎士の指にはめられた指輪の宝石が光り出したのだ。グレンはベルトから指輪を抜きまじまじと指輪を見つめ、彼の向かいに立つクレアは首を傾げている。
「あれは……」
ダグオンがグレンが持つ指輪を見てつぶやいた。グレンに向かってすぐに彼が叫ぶ。
「グレンさん! その指輪を冷気に投げてください!」
「えっ!?」
「いいから早く! 冷気へ!」
躊躇するグレンに洞窟から吹き出し二人へと迫る冷気に指すダグオンだった。
「クソ!!」
グレンは半信半疑だったが、ダグオンに言われた通りに指ごと指輪を冷気に投げ入れた。投げられた指輪が白い冷気に触れわずかにゆれるとそのまま中へと入って消えて行った。
「なんだよ…… 何も…… わっ!?」
「まっまぶしい……」
冷気が強烈に光り出しグレンとクレアはは目がくらむ。グレンは目を手で覆いクレアは顔を背けて光を避けた。光はすぐにおさまり手を下しグレン、クレアも背けていた顔を戻し視線を冷気へと戻す。
「れっ冷気が……」
目を見開いてが驚いた表情をしてグレンがつぶやく。二人の手を伸ばせば届くくらいまで迫って来ていた、冷気は何かに吸い込まれるかのように二人の十メートルほど先で渦巻いて小さくなっていく。
「消えちゃいましたね……」
大量の冷気は強烈な光が発せられてから一分も経たずに消えてしまった。クレアとグレンは冷気が吹き出していた洞窟を呆然と見つめていた。
「あっ! あれって…… グレン君が持ってた」
「えっ!? 指輪だ」
何かを見つめたクレアが声をあげ洞窟の手前の地面を指さした。彼女が指した先にはグレンが投げた極夜騎士の指が転がっていた。二人は顔を見合わせてうなずくとグレンがクレアに鞄を渡し、並んで指輪の元へと駆けて行く。
地面に転がる極夜騎士の指にはめられた指輪の青い石から湯気のように白い冷気が立ち昇っていた。
「ほっ…… 大丈夫だな……」
指輪を見たグレンは足で指輪の石をつついた。つつかれた指は地面をすってわずかに動く。グレンは何も起きないことを確認しゆっくりと手を伸ばし指を拾い上げようとした。
「わっ!?」
グレンが指をつかむとボロボロと崩れだした。いきなり崩れた指にグレンは声をあげとっさに手をはなした。指輪は外れて地面へ落ちてしまった。
「えっ!? グレン君?」
「小さく……」
「魔法道具でしょうかね……」
地面に転がった指輪が小さくなっていく。極夜騎士の太く長い指にはまっていた指輪だが、人間サイズまで小さくなった。グレンは首をかしげながら指輪を拾い上げまじまじと見つめるのだった。




