第546話 冷たい騎士
振り抜いた大剣をあげ肩に担ぎ、グレンは極夜騎士の体が闇の中へと落ちていく光景を静かに見つめいた。しかし、頭上から密かに近づく影に彼は気づかなった……
「しまっ!?」
グレンの真上に漂っていた白い冷気の靄の中から、極夜騎士の頭部が飛び出して来て彼の左肩付近へと向かって来た。そのまま兜はグレンの肩に至近距離に張り付くように浮かぶ。極夜騎士の頭部に開いた空気穴から白い冷気が漏れ出しきた。
「クソ!」
漏れ出した冷気を肩に当てられたグレンの頭に嫌な予感がよぎる。彼は慌てて自分の肩の前に浮かぶ極夜騎士の頭部を振り払おうする。
しかし、グレンが動くよりも前に鼻先にある彼の左肩へ向かって、極夜騎士の兜の空気穴から冷気が吹き出した。
「ブシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
「うわああああああああああああああああああああああああ!!!!」
激しい音がして噴出した冷気がグレンの左肩に吹き付ける。左肩から肘までが一気に凍り付ていきグレンは悲鳴のような声をあげた。
「クソ!!!」
急いで逃げようとグレンは必死に背後に飛んで極夜騎士と距離を取った。視線を横に向け氷りついた自分の肩を見て悔しそうに顔を歪ませた。
「チッ……」
視線を前に向けたグレンに十メートルほど先に浮かぶ極夜騎士の頭部が見えた。空気穴から白い冷気を漂わせどこか勝ち誇ったように見える、極夜騎士にグレンは舌打ちをして不快感をあらわにする。徐々にグレンの肘から先も凍り付いていき透明な氷で覆われていってしまった。
「ふん……」
不満げに鼻で大きく息を吐くグレンだった。彼の視線に極夜騎士の頭部が見える。白い靄の中から極夜騎士の右腕、左腕、体が出て来て頭部の周囲に集まってきた。
極夜騎士の頭部の青い目の光が強くなると、両腕と体がくっつき最後に頭部が体へ下りて元に戻った。
「ぴぎぎぎ……」
元に戻った体を試すように両腕を回したり、首を上下左右に動かす極夜騎士だった。体を動かすのをやめて極夜騎士はグレンに体を向け、盾を前に出し右腕を引き剣をかまえた。
青い目を光らせグレンを見つめる極夜騎士、兜なので表情があるわけではないが凍り付いた左腕のグレンを見下し余裕で笑っているように見えた。グレンは顔を青ざめさせ悔しそうな表情をしてジッと極夜騎士を見つめていた。
「ピギイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!!!」
声をあげた極夜騎士が盾を前に出し肘を曲げ剣を前に向け構えると、前に出てグレンとの距離を一気に詰めていく。グレンは凍った左腕をかばうようにして右腕を前にだして構え極夜騎士を迎えうつ。
距離を詰めて来た極夜騎士はグレンの直前で盾を外し、隠すようにしていた剣を引きグレンの斜めしたから振り上げてくる。グレンは視線を斜めしたに向ける、彼に向かって鋭く伸びて来る極夜騎士の剣が伸びて来る。
「よっと!」
グレンは右手に持った大剣を振り下ろした。衝撃音がしてグレンの右手に重く硬い感触が伝わる。グレンの大剣と極夜騎士の剣がぶつかり激しく火花が舞う。青い目がグレンの頬を照らしている。グレンと極夜騎士は剣越しに向き合いつばぜり合いをしていた。
「ピギイイイイイイイイイイ!!!!」
「おわ!?」
極夜騎士が大きな声を上げ力いっぱい剣を押した。左腕を凍らされバランスがうまく取れないグレンは押し返されてしまった。押されて体が浮かび上がっていった、グレンは押された反動を利用し背中へ飛ぶようにして下がって極夜騎士から距離を取った。
剣を戻した極夜騎士は前に出てグレンと距離を再び詰めて来る。猛スピードで極夜騎士は盾を横に向け剣を振りかまぶった姿勢でグレンへと迫って来る。
「チッ!!」
舌打ちをしたグレンはすぐに姿勢を整え大剣を右腕一本で構えた。グレンの目前に極夜騎士が迫って来ると剣がグレンの頭を狙って振り下ろされる。グレンは視線を上に向け迫って来る剣を見つめていた。
「ピぎイイイイイイイイイイイ!!!」
「ほっ!」
振り下ろされてききた夜騎士の剣を寸前で右肩を引き体を横に向けてグレンがかわした。鼻先をかすめるようにしてグレンの目の前を幅広いブロードソードが通り過ぎていった。グレンは横から殴りつけるようにして大剣を極夜騎士へと斬りかかった。
「ピギッ!!!!!」
極夜騎士は向かってくるグレンの大剣に反応に左手に持っていた盾を出した。大きな音がしてグレンの大剣は盾で受け止められてしまった。悔しそうに顔を歪めたグレンは大剣を持つ手を強く握り押し込んでいく。
「くっ! クソオオオオオ!!!」
グレンは必死に大剣を押し込むが、極夜騎士はびくともせずに盾を構えたままでいる。グレンは平然としている極夜騎士を見てさらに悔しそうに眉間のシワを深く顔をしかめた。
極夜騎士は右腕を引き持っていた剣を構えるのがグレンに見えた。彼はすぐに大剣を引いて後ろに飛んで距離を開けようとした。
「さすがに片手じゃ崩せねえか……」
「ピギイイイイイイイイイイイイイイ!!!」
「チッ!」
距離を取ろうとした背後に飛んだグレンを極夜騎士はすぐに前に出て追いかけて来た。グレンとの距離を縮めグレンに向かって剣を突き出した。グレンは体を反らして剣をかわした。
「クソ!!!」
肘を曲げ極夜騎士がさらにグレンへと剣を振り下した。グレンは素早く上に飛んで極夜騎士から逃げていく。グレンは極夜騎士の上十メートルほど上空に浮かんでいた。極夜騎士は剣を引くと顔をあげグレンへと目を向けた。
「ピギイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!」
「しつけえな!」
顔をあげた極夜騎士はグレンと向かって飛んでくる。グレンは背中を向けとさらに上へと逃げる。
「おわ!!!」
グレンの横を白い光線の冷気が通り過ぎて行った。驚き振り向くグレンに盾を構えた極夜騎士が見える。極夜騎士の丸い盾の中央に埋め込まれている宝石が白く光った。
「クソ!!」
体を横にしてグレンは上へ飛びながら背中側へ移動する。彼の目の前を先ほどと同じように白い冷気の線が通り過ぎていった。
一瞬で氷の柱のように固まった冷気はグレンの横で細かい砕かれ溶けて消えて行った。
「あぁ! もう!」
極夜騎士は盾を突き出すようにして何度も白い冷気を放つ。グレンは速度をあげ体をそり宙返りをしながら穴の下へ頭を向けるように体勢を変えていく。彼の横を白い冷気の線がいくつもの通り過ぎて消えていった。
頭を下に向けグレンは猛スピードで極夜騎士へと迫っていく。
「ピイイイイイイイイイイイ!!!!!」
声をあげた極夜騎士は盾をグレンに向けて何度も冷気を放ってくる。グレンは回転しすんでのところで冷気をかわして近づいてくる。白い冷気の線は通り過ぎると溶けて水滴となり、グレンの頬にかかりすぐに後ろへ飛んで消えていく。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」
グレンに見える極夜騎士が大きくなってきた。右手を腰の後ろ辺りまで持って行き大剣を構えるグレン、彼はすれ違いながら大剣で極夜騎士の頭を狙い大剣を振った。
しかし、迫りくるグレンの大剣に極夜騎士は構えていた盾を向けた。あっさりとグレンの大剣は極夜騎士の盾で防がれようとしていた。
「おっと!」
「ピギ!?」
盾と大剣が触れようとした瞬間にグレンは一気に大剣に力を込め引くようにして止めた。彼はそのまま体勢を変えて頭を上にし膝を曲げ足の裏を盾に向ける。
「おらよ!」
足を突き出してグレンは極夜騎士の盾を蹴りつけるのだった。




