第532話 本気なら負けない
グレンとポーキーがぶつかり合う直前。グレンと離れたクレアはクルベックの数メートル前へと移動していた。背後でポーキーの声が響きクレアは小さくうなずいた。
「さて…… こっちも仕事を終わらせますか……」
両手で大剣を持ってゆっくりと構えクルベックへ向けるクレアだった。
「クックソ! 舐めやがって」
悔しそうにクレアを睨んだクルベックが自分の胸元に手を当てた。彼の付けている蝶ネクタイと帽子が銀色へと変わった。
「銀色…… 来ますね」
クルベックの姿がクレアの視界から消えた。直後にクルベックはクレアの前へと現れた。にやりと笑って長い腕を伸ばし横からサーベルを振り下す。
大剣を垂直に持ってクレアは横から来たサーベルを受け止めた。大きな音がしてサーベルとぶつかったクレアの大剣が震える。
「あらあ!? 強いですねぇ」
「当たり前だろう! 僕は強いんだ!!!!」
大剣に打ち付けられたサーベルに視線を向け口を開くクレアだった。必死な形相でサーベルを押し込むクルベックだった。
「ふん!」
「グワアアアアアアアアアアア!!」
両手に力を込めてサーベルをを押し返すクレアだった。耐え切れずにクルベックは押されて後ろに下がる。クレアはすぐに大剣を構えクルベックを追いかける。
「えっ!? なんだと…… クッ!!!」
距離を詰めて来たサーベルを引いて剣先を彼女に向けて突き出した。クレアは突き出されたサーベルと上から大剣で叩いた。地面へと向かってクルベックのサーベルがそれていく。
クレアは大剣を体の左側へ持って行き横からクルベックに向かって振り抜いた。
「グバアアアアアアアアアアア!!」
振りぬかれた大剣は横からクルベックに命中に衝撃で彼は吹き飛ばされた。声を飛ばされたクルベックは何とか体勢を直して着地する。クレアの一撃は重く着地した彼の両足とついた左手が地面をすっていき砂埃が舞い上がっていく。
「はあはあ…… 僕も本当に本気にならないといけなねぇ」
顔をあげクレアを睨みつけるクルベックだった。体を起こしたクルベックはサーベルを構えた。
「血が……」
クルベックのサーベルから血がにじみ出て刀身を赤く染めていく。驚くクレアにクルベックはニヤリと笑って地面を蹴った。
「!!!」
クルベックの姿が来て一瞬でクレアの前でへとやってきた。クルベックはクレアに向けてサーベルを振り下した。素早い動きに大剣で受け止められずにクレアは足を引いて体を横にしてサーベルをかわした。
「速いですね……」
「どうだ! そんな余裕をいつまで保てるかな!!!」
素早くサーベルを戻したクルベックはすぐに斜めにサーベルを振り上げクレアを狙う。クレアは体を斜めに反らしてサーベルをかわし、彼女の目の前を血のついた真っ赤な刀身のサーベルが通り過ぎていく。クレアは後ろに下がっていく。
「遅いよ!」
「キャッ!!!」
ニヤリと笑いクルベックは両腕を引き、サーベルから左手を離し剣先をクレアに向け突き出した。クレアは必死に足を引いて体を横にしサーベルをかわす。しかし、突き出された大剣がクレアの胸をかすめて服が切り裂かれた。上着が切れてかすった刃で中の薄いシャツが血で染まっていく。
サーベルがわずかに揺れるとクレアは地面を蹴って飛んで、さらに下がってクルベックとの距離をとり彼女は顔を下に向けた。
「きゃははは!! ひん剥いて僕の餌にしてやる!」
視線を下に向けたクレアはうつむいているとおもっているのか、破れたクレアの服を見て甲高い声で笑うクルベックだった。
「さて…… これでグレン君が心配してくれます。ありがとうございます」
「いっ!?」
右手に大剣を持って左手で破れた服をさすって余裕で笑うクレアだった。直後に彼女の姿がクルベックの視界から消えた。
「まず…… その帽子と蝶ネクタイが邪魔ですからね……」
「あっああああ……」
クルベックが次にクレアの姿が見えたのは、彼女が右手に持った大剣を突き出した姿勢だった。恐怖に顔を引きつらされるグルベックへ大剣が突き出される。大剣はクルベックの蝶ネクタイをかすめ切り落とした。蝶ネクタイはゆらゆらと揺れながら地面へと落ちていく。さらにクレアは素早く大剣を引いて笑う。
「フフフ!」
クルベックはほぼ反応できずに大剣は帽子のつばを貫き突き刺さる。驚愕の表情を浮かべるクルベックにクレアは笑ってすぐに大剣を持った右手を引く、帽子のつばから帽子が抜けふわりと浮かんだ。
大剣の先をクレアはクルベックの心臓に向け突き出す。
「ウガアアアアアアアアアアアアアア!!!」
クルベックは必死に向かって来る大剣にサーベルを斜めに振り下した。サーベルにより大剣の軌道が逸れてクルベックの体の横へと逸れていく。
大剣を突き出した姿勢のクレアにクルベックはまたサーベルを戻し彼女の首を狙う。
「ほっと!」
クレアは冷静に地面を蹴って後ろに飛んでクルベックから距離をとった。
「ふぅ……」
小さく息を吐いたスカートの裾を叩いて埃を落としてた。クルベックはクレアを見て笑顔で叫ぶ。
「どうだ!! 本気になった僕にお前が勝てるわけないんだ!」
「へえ…… それはすごいですねぇ」
「クッ! 舐めるなあああああ!!!」
余裕の表情で浮かべるクレアにクルベックは怒りだした。サーベルを大きく横に振った彼は駆け出しクレアとの距離を詰めていく。クレアは両手で大剣を構えると地面と蹴り十センチほど体らを浮かせ、向かって来るクルベックへと飛んで行った。
「はあああああああああああああああああああああああああああ!!!」
「うりゃああああああああああああああああああああああ!!!!!」
クレアが大剣を振り上げて気合が入った声をあげるクレアだった。同様にクルベックも叫びながらサーベルを振り上げた。接近したクレアとクルベックは同時に大剣とサーベルを振り下した。
激しい音がして激しく火花が舞った。二人の叫び声と金属がぶつかり合う大きな音が砦に響き渡った。クレアとクルベックは交差して互いにすれ違う。二人は十メートルほど距離を開け止まった。
「おぉ! 飛んで行っちゃいました!」
両手を見てクレアは声をあげた。彼女が両手で持っていたはずの大剣エフォールがなくなっていた。少ししてから彼女の背後にエフォールが落ちて地面に突き刺さる。
サーベルと振り抜いた姿勢で止まったクルベックが体を起こして振り返る。地面に突き刺さったエフォールを見てクルベックは口元を緩ませ笑う。
「きゃははははは!!!! どうだ! これが僕の力だ!!!」
サーベルを肩にかつぎ左手でクレアを指さすクルベックだった。クレアはニヤリと笑って地面を蹴った。浮かび上がった彼女は高速で移動しながら右手を伸ばして大剣エフォールへと迫る。
「ニカっ!!」
「!!!!」
クレアの手が大剣エフォールを掴む直前に彼女の視線にニヤリといやらしく笑うクルベックが見えた。クルベックはサーベルを突き出し慌ててクレアは手をひっこめた。サーベルがクレアの右腕にかすり服の袖がわずかに切れ布の破片が宙を舞って揺れて落ちていく。
地面を蹴ったクレアは背後へと飛び、クルベックとの距離をとった。切られた右腕の服を左手で押さえてクレアは悔しそうに顔をしかめていた。クルベックは大剣エファールの前に立ってサーベルを肩に担ぎ体を前に倒して笑う。
「きゃはははは! 無駄だよー!!! 僕にかなわないんだよ」
大声でいやらしく笑うクルベックだった。クレアは手を押さえたまま静かにクルベックを見つめていた。




