第520話 神聖騎士の正体は
貧民街の東部。ちなみにギガンゴスシティはギガンゴスが向きを変えれば方角が変わる為、東を大陸東部に向かう頭部になり尾側は西になる。ギガンゴスの左足側が北で右足側が南となる。
大聖堂に近い地下には教会から追われた元聖職者が多く住んでいた。貧民街に落ちたとはいえ元聖職者は貧民街にしては多くの金品を持っていることが多く強盗や窃盗などが頻繁に起こり治安は悪い。
ぼろぼろの小屋が並ぶ狭い道をトーキーが歩いている。彼は鋭い視線を周囲に向けていた。トーキーの後方かなり離れてラピとクレアが尾行している。白い猫は小屋の屋根を優雅に歩いている。
「おう! 待ちな!」
クレアとラピの前に三人の男が立ち塞がった。トーキーとの距離は開いており彼は気づかずに進んで行ってしまった。クレアは視線を小屋の屋根に向ける。白い猫がクレアと目を合わせるとトーキーを追いかけていく。
「なっなんのようだべ? あんたら」
ラピが立ち塞がった男たちに向かって叫ぶ。クレアは視線を男たちに向けジッと見つめる。男は乱雑に切られた髪にボロボロの鎧を装備し手には手斧や剣を持っている。
「おめえらこそ! 騎士でもねえこんなとこ来て? 俺達の仕事を邪魔する気か?」
「オラたちはヴァンパイアハンターだべ!」
「はあ!? ヴァンパイアハンター?」
自分の胸に手を置いてヴァンパイアハンターだと、名乗るラピを見て男たちは薄ら笑いをうかべ集まって小声で話を始めた。
「ヴァンパイアハンターだと……」
「そげなもんここにいるわけなか!」
「そうだな。こいつはきっと教会のまわしもんだべ…… だったら…… 兄貴の元へ連れて行くべ」
「「あぁ……」」
ニヤニヤと笑いながら視線をラピとクレアに向ける男たちだった。男の一人が振り向いてララに笑顔で声をかける。
「じゃあ手伝ってやるからオラたちと一緒に来い」
路地を指してついて来いという男たちだった。困惑した様子でラピはクレアの顔を見た。
「えぇ。助かります。行きましょう」
「はっ!? えっ!?」
クレアは男たちに笑顔で返事をした。二人の男が先に行き、ラピとクレアを挟むようにして一人が背後に回り歩き出した。
路地に入ってすぐにクレアがラピに顔を向けた。
「大丈夫ですよ。ちょっと面倒なことに巻き込まれたようです」
「んっんだ」
路地を抜けると小屋に囲まれた四角い広場のような場所に出た。積まれた木箱に体の大きい顔の丸い男が一人座っている。座っている男の裸の上半身に鉄の胸当てだけを装備し、下半身は黒のズボンにブーツに革の膝当てに腰巻を巻いいた。木箱の脇にハンマーが転がっている。
クレアとラピは男の前に連れて来られた。木箱に座った男がクレアとラピを見て不機嫌そうに口を開く。
「なんだ…… こいつら」
「ヴァンパイアハンターだそうです」
「ふん…… そうか……」
男が木箱に座った大きい男に耳打ちした。木箱に座った男はラピとクレアを見つめ鼻で笑うとハンマーを握って立ち上がった。ラピの前へとやってきて彼女を見下ろす。
「おっオラたちはヴァンパイアを倒しに来た。手伝ってくれるんだろ?」
「はははー! なんで俺達がお前の仕事を手伝うんだよ!」
「なっ!? 約束がちげえべ!」
叫ぶラピの前に大きい男は左手を差し出して怒鳴りつける。
「金を出せ! それか俺達の専属の娼婦になるんだったら可愛がってやるぞ!!!」
舌なめずりをしてニヤニヤと笑ってラピとクレアを舐めるように見つめる大きい男だった。ラピは動揺し横を向いてクレアに口を開く。
「どっどうするべ」
「排除ですね…… 敵意がありますし」
「はっ排除ってどうやるんだべ!?」
「こうです…… よ!!」
クレアが叫んで振り向くと、背後にいた男の一人に指先を向け左腕を突き出した。
「へっ!? グバアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!」
男が口から血を吐いた。彼の腹を五本の光の剣が貫いている。光の剣はクレアの指から伸びていた。クレアはすぐに腕を下して右手を大剣に回した。
「てめえ!! 何を!!! ぶへええええええええええええええええええええええ!!!!」
体の大きな男が持っていたハンマーを振りかぶりラピに振り下そうとした。しかし、彼のハンマーは振り下ろされることなく横から飛んで来たクレアの大剣が男の脇へとぶつかった。大剣は体にめり込みそのなま振り切られた。男の体は横に飛び小屋の壁をぶつ破って中へと消えて行った。クレアは目を鋭くして視線を横に向けた。彼女の目に剣を持ち飛ばされた大きい男を呆然と見つめる男が見えた。
「兄貴!!! ぐわあああああああああああああああ!!!」
我に返った男が声を上げると彼の前にクレアが現れた。クレアは何も言わずに男の胸に大剣を突き出した。大剣は胸を貫通した男の体から力が抜けた腕がだらんと下がる。クレアは男の左肩に手を伸ばし大剣を引き抜く。男は膝をつき地面に倒れた。
「さて…… 残りはあなたです」
最後に残った男に視線を向けるクレアだった。クレアと目があった男がガタガタと震えだす。
「うわああああああああああああああああああ!!!」
最後に残った男は叫び声をあげたラピに向かって剣を振り上げた。クレアは視線を鋭く大剣を素早く戻す。
「あら!?」
クレアの動きが止まるラピは男を見て膝を曲げると勢いよく飛んだ!
「ぐはああああああああああああああああ!!!!」
飛び上がった男の顎にラピの頭がぶつかった。男は顎を砕かれ上を向き背後に勢いよく倒れた。
「いててて!!」
着地したラピはしゃがんで頭を押さえた。クレアは大剣を背中にしまうとラピに駆け寄った。
「ヒールビッグシスターハンド!!」
しゃがんだクレアは手を緑に光らせてラピの頭にかざして治療を始めた。痛がっていたラピの顔を穏やかになっていく。クレアはラピに注意をする。
「もう危ないですよ……」
「んだでもあれしか方法が……」
「そうですね…… 硬い兜か帽子を装備するのも良いかもですね……」
「検討するだ!」
顔をあげて返事をするラピにクレアは優しくほほ笑むのだった。
「はーい。終わりましたよ」
「あっありがとう」
治療が終わりクレアが手を離すとラピは礼を言って立ち上がる。直後……
「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
「悲鳴だべ」
「急ぎましょう」
広場に悲鳴が聞こえた。クレアとラピは顔を見合わせてうなずいた。
「にゃーー!!」
「なっなんだべ!?」
広場に白い猫が駆け込んで来てラピが驚いていた。クレアは猫を見て嬉しそうに笑った。
「呼びに来てくれたみたいですね。猫さんに付いて行きましょう!」
「んっんだ!」
猫の先導でクレアとラピは広場から路地を通って進む。広場から出てすぐに路地を抜けるとさらに大きな広場が現れた。広場にはゴミが積まれて山のようになっていた。大聖堂の付近のゴミを一時的にここに溜めているようだ。大聖堂付近のゴミには高価な物が混じることがあり、ここの近所の住人がゴミをここに溜めて置いて物色した後ゴミ捨て場に持って行くようだ。
「あれは…… トーキーだべ! もう一人は……」
ゴミ山の前でトーキーと神聖騎士が一人掴み合っていた。二人の側には女性が倒れている。
「どうすれば……」
「ラピちゃん! クリアブルーアイを使って」
「んっんだ!」
クレアはラピにクリアブルーアイを使用するように指示する。ラピは素早く木箱を取り出してクリアブルーアイを装着しトーキーと神聖騎士を見た。
「えっ!? どっどういうことだべ……」
「どうしたんですか?」
ラピがクリアブルーアイでトーキーたちを見つめ驚愕の表情を浮かべつぶやく。
「両方…… ヴァンパイアだべ」
クリアブルーアイを通した見たトーキーと神聖騎士はどちらもピンク色に縁どられていた。つまりトーキーと掴み合っている神聖騎士はどちらもヴァンパイアだったのだ。




